野生のシカを食卓へ
Since 2010/06/05 


 昨年、タケノコのイノシシ被害対策にと「わな猟」の狩猟免許を取った。今年の2月、竹藪に「くくりわな」を仕掛けたら、イノシシではなくてシカがかかった。猟友会のベテランに解体してもらって食べてみた。臭みがあるとか硬いとか聞いていたが、そんなことはなかった。ソテーにした背ロースは下手な牛肉よりも旨かった。

 それで、米や野菜に加えて、肉も自給出来るようにしてやろうと思い立ち、解体や調理法の勉強を始めた。とりあえず「狩猟読本(大日本猟友会)」や「鹿肉食のすすめ(C・Wニコル)」などの書物を読んだり、インターネットで関連ホームページから情報を集めたりしている。

 そんな折、当県内のシカ肉消費の現状をとりまとめた記事が神戸新聞(2010.5.31)に載った。どこかで役に立ちそうな内容なので、関連情報としてここに保存する(写真等は省略)。

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野生のシカを食卓へ 害獣″Lがる食肉利用
(神戸新聞 2010年5月31日より)

 街のレストランや地域のイベントで、シカ肉の料理をよく見かけるようになった。農作物を食べ尽くす被害の拡大を背景に、全国で野生のシカの食肉利用が広がっている。狩猟者自らの消費が中心だったが、今では肉処理施設が増え始めて供給が伸びつつある。消費の拡大が課題で、各地ではシカ肉の魅力を広げる取り組みが盛り上がりを見せている。野山を駆けめぐる野生動物が、食卓にのぼるまでの舞台裏を追った。(井垣和子)

 兵庫・丹波で捕れたシカを1頭買いする店があると聞いて、神戸・御影のフランス料理店「MOMOKA(モモカ)」に向かった。

 首やすね肉が入ったミートソースはコクがあり、2aほどのヘレステーキは筋もなく柔らかい。「臭みがある」とよくいわれるが、まったく気にならなかった。むしろ独特の風味があってかむほどに味わいが深まり、癖になりそう。シェフの三村保則さん(59)は「肉の繊維がきめ細かく、脂身が少なくて、高齢者でも楽しめる」と胸を張る。

【個体数が増加】

 兵庫のシカの捕獲数は全国トップ級―。兵庫県によると、2008年度の捕獲数は約2万頭と前年度に比べて約20%増。ずばぬけて多い首位の北海道(約7万7千頭)に次ぐ水準だ。捕獲数は右肩上がりで、10年前に比べると倍増している。

 兵庫で捕獲数が拡大している背景には、農林業への被害が深刻化していることがある。県の調べでは、08年度のシカによる農林業被害は全体の半分近くを占め、約4億2千万円。農村の田畑は今や、侵入防止柵でぐるりと囲わなければ食い尽くされかねない状況。農業をあきらめる農家も増えている。

 これは、シカの生息数が増えていることに起因する。県森林動物研究センター(丹波市青垣町)によると、県内の増加ペースは年率15%。「戦後、燃料が木炭から石炭や石油に変わり、放牧もしなくなった。人が山の草木を利用しなくなり、シカのエサが増えたことが原因の一つでは」。同センターの坂田宏志主任研究員は話す。

 県は00年ごろから、猟友会の協力を得て、農作物の“天敵”ともいえるシカの駆除を強化。各市町も予算を投じてシカ対策に取り組んでおり、獲物を有効活用する手段として、食肉処理が注目されるようになった。

【商品化へ工夫】

 野生動物から良質な肉を確保するには、家畜とは違うさまざまな制約が伴う。

 捕獲方法は、銃、わな、檻(おり)に大別されるが、食肉には、銃で撃ち取った分をよく使うという。わな、檻にかかると暴れて打ち身をし、内出血で肉が変色するため、見た目も悪く売り物にならないからだ。

 銃で仕留める場合でも家畜と同様に、頭を撃ち抜いて即死させることが不可欠。もも、ロースなど食べる部位に銃弾が当たると商品にならず、内臓を貫通すると、独特の生臭さが肉に付いてしまう。

 「猟犬に追われ、全力で走り続けたシカは、熱やストレスで肉が変色する。本来は小豆色だが、黄やピンクになり、商品価値は下がる」と話すのは、丹波市氷上町で、シカ肉の処理施設を運営する柳川瀬正夫さん(61)。

 「臭みのない肉を確保する最大のポイントは、素早く血抜きすること」とも強調。解体処理する際は、捕獲から血を抜いた後、2時間以内に持ち込まれたものに限定するこだわりようだ。

【先進地は北海道 エゾシカの需要圧倒的】

 シカ肉の消費拡大を先導するのが、北海道だ。全国に先駆けて肉処理の衛生管理体制を整え、地元に生息するエゾシカの供給に力を入れる。各地の自治体も北海道を参考に衛生マニュアル作りを進めている。

 社団法人・エゾシカ協会(札幌市)によると、08年度の処理数は約1万頭で計304d。処理施設は64カ所を数え、徐々に増えている。同協会の井田宏之事務局長は「エゾシカはニュージーランドの輸入肉と比べて少し高い程度」と指摘。一定の価格競争力が需要を増やしているようだ。大阪府環境農林水産総合研究所が08年、近畿のフランス料理店などにアンケート調査したところ、回答した70店で国産シカを使ったのは37店。うち約80%がエゾシカを利用したという。

 各地の自治体もシカの食肉利用に乗り出し始めた。農林水産省は処理施設の整備を財政面で下支えしており、「毎年各地で施設が増えている」。兵庫県内でも多可町が13年をめどに建設を計画中だ。

【歩留まりで苦戦県内業者】

 県内で唯一の本格的なシカ肉専門の処理施設が、柳川瀬さんが手掛ける「丹波姫もみじ」だ。仲間2人とともに、06年にオープン。もともと、山南町(現・丹波市)の職員で長年、シカの農業被害対策を担当していた。駆除したシカを何とか活用したいと、55歳で早期退職。先進地・北海道で研修を積み、施設を新設した。09年度は約450頭を解体処理した。

 柳川瀬さんが扱うのは地元で捕獲したホンシュウジカ。ただ、エゾシカに比べて小型で、厳しい価格競争にさらされているという。

 エゾシカ協会によると、エゾシカは大きいもので体重150`cまで成長するが肉が硬くなるため、体重80`cまでの比較的若いシカを解体する。うち食肉に使えるのは20`c。一方、丹波で捕れるホンシュウジカは平均体重35`cで、確保できる肉は11`cにすぎない。

 さらにシカを食べる習慣が一般化していない日本では、レストランとホテルでの需要が中心。売れ筋はロース、ヘレ、もも肉など特定の部位に限られるのが現状だ。

 「(肉質が硬い)首、すねなども売れないと産業として成り立たない」。柳川瀬さんは課題を挙げる一方、安全性や味にも気を配る。

 処理施設では、硬い部分を使いやすくするためミンチに加工。冷蔵庫で肉を熟成させ、うま味を引き出してから出荷する。安全面では、厳しい衛生基準を定め、生産履歴を徹底的に管理。金属探知機で銃弾が残っていないかも確認する。家庭向けにもシカ肉を販売する柳川瀬さんは「食肉に使われるのは捕獲数の1%に満たない。付加価値を高めて、業務用以外の需要も掘り起こしたい」と話す。

【自然界で生存「健康な証拠」】

 「シカ肉は、牛肉に比べてカロリーは3分の1、脂質は86分の1でほとんどないとされている。ヘルシーな肉なんです」。シカの研究を続ける兵庫県立大学自然・環境科学研究所の横山真弓准教授が解説してくれた。「そもそも自然界で生き残っているのは、健康な証拠」と強調する。栄養面でも、鶏のササミに匹敵する高タンパクで、レバー並みに鉄分などミネラルが豊富だという。

 一方、県内では2003年にシカの生肉を食べてE型肝炎に感染したケースがある。そこで、県立大と岐阜大は、消費者の不安を払しょくしようと、04〜06年にE型肝炎に感染した可能性を示す抗体保有率を共同で調査した。

 その結果、豚が58%で最も高く、イノシシは27%。兵庫のシカは約3%と極めて低いことが分かった。横山さんは「肉の生食にはどの動物にも危険性はある。加熱処理することが重要」と話す。

 野生動物は、家畜とは違って解体時の衛生管理に関する法規制がない。県は2010年度末までに、独自の指針をまとめることにしている。

◆ 調理のポイント ◆

 日本の家庭料理にはなじみが薄いシカ肉。おいしく調理するにはどうすればいいか。「MOMOKO」の三村シェフに、手軽に食べられるソテーのコツを教えてもらった。

 「焼き肉感覚で普通に焼いてもいいが、脂が少ないので、焼きすぎると硬くなる。中までゆっくりと熱を通すことが大切」。中心部まで熱が通りやすくするため、肉を室温に戻すことがポイントだという。

 まず肉をビニール袋に入れ、40度ほどのぬるま湯に1〜2分ほど浸す。フライパンで焼き色が付いたら裏返し、すぐに火を止めてふたをして、あとは余熱で中まで火を通す。「牛肉を軟らかく焼く時にも活用できる調理法ですよ」


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