TeleVue85-BINO(自作)
シュワルツ150(F8)双眼を購入する際、「真剣に見るときには150双眼、手軽に
見るときにはそれまで使っていた10cm屈折」という住み分けを考えておりました。
ところが実際にシュワルツ双眼を使いはじめると、あっというまに両目で見ることの
快適さに慣れ、手軽に見るにしても単眼では物足りなくなってしまいました。
そこで小型の双眼望遠鏡の制作を考えていたところ、8cm級としては自分が見たなかで最高
の見え味だったTeleVue85が、2本同時に中古で出ていたので、これを入手(全額
ローンです...)して具体的な制作をスタートさせました。小型で手軽に、とはいっても
星野から惑星までが対象になりますし、星像の鋭さ・美しさ、低倍・広視界の得易さ、
実用的な高倍性能、機動性などに妥協はしたくなかったので、この鏡筒が中古で手に
入ったのは幸運でした。
全体構造は実績のあるところで鏡筒平行移動方式+フリーストップ経緯台、そして
正立系にはEMSです。40mmクラスの2inch広角アイピースの使用も念頭においている
ため、EMSはLタイプの双眼仕様としました。細部については写真のキャプションに
あるとおりです。
このTV85双眼を制作するにあたって役に立った道具は、ノギス、巻き尺、電卓、
インターネットといったところです。つまり、自分では採寸といくつかのパーツの
寸法決定、それに要素部品を売っているお店を探しことが主で、あとは幾つかの穴
あけ・タップ立てなどの簡単な加工くらいしかしていません。
どうにもならない部分、例えば筒外光路長が不足する点に関しては、EMS購入時に松本さんに鏡筒の切断を
お願いしましたし、また経緯台(これはTeleVueF2Sを改造しているのですが)の改造
用パーツに一部ホームセンターでは不可能な加工が必要だったので、その部分はいつ
もお世話になっている望遠鏡販売店を通して加工業者に依頼しました。
さて、実際に組み立ててみてですが、ざっと組んだ状態でほとんど光軸が出ていた
ため、像倒れの調整とシフトの微調整だけで光軸を出すことができました。EMS単体
は調整済みとはいえ、ここが一番手間取ると予想していただけに、クリアできた時点
で山は越えたという感じでした。手の抜きどころが掴めず若干重くなってしまった
ものの、それが幸いしたのか、惑星・二重星観望にも十分対応できる視界の安定性が
得られています。
光学性能に関しては改めてここでインプレッションを行う必要のない鏡筒ですが、
当然ながら限界等級ではシュワルツ150双眼には全くかなわないため、暗い天体の
見えはシュワルツ双眼が圧勝ですが、低倍から中間倍率での星々の艶とか輝星の星像
の小ささに関しては完全にTV85双眼が凌いでいます。
その星像の鋭さからか、低倍・広視界でスイープするときの視界は、星々の大海を泳いでいるかのような気分にさせ
てくれます。また、月を見ても色収差を意識させられることはなく、正立・双眼と
相まって、まさに近くから月を見ているかのような圧倒的な臨場感です。
この双眼の調整中はちょうど池谷・張彗星が見ごろだったのですが、LVW42mmとの組み合わせ、
5°近い実視界を横断する尾は見ごたえ十分でした。鏡筒の光学性能に双眼視による
コントラスト検出能力の向上が加わり、淡い対象も口径から想像される以上の見え方
です。
テスト時に同行していた星見仲間からは、「星空」を見るならシュワルツ双眼
よりいいんじゃないの?という声もありましたが、あらゆる点で主役に敵わない脇役
なら最初から要らないわけで、そういう意味では成功しているのかな、と思ってい
ます。
現時点の構想では、今の状態に加えて
・操作ハンドル(ビデオ雲台用のパン棒を予定)
・ヘッドレスト
を付ければ一応の完成になります。無論、まだまだ煮詰めるべき部分は残るにせよ、
光学性能、手軽さ、操作性のどれをとっても、ひとまずは自分の望むレベルの双眼
望遠鏡に仕上げられそうです。あまりにも自分の手を動かしていないので自作と呼ぶ
のは少しばかりはばかられますが、望む形に組み上げられたことには満足しています。
最後になりましたが、制作にあたって、自作経験のない私に数々のアドバイスと
励ましを下さった松本さんに深く感謝いたします。