80LD双眼(ネリスター)のレポート
by ヤマネコ
私は北海道に住むヤマネコと申します。先日、永年の憧れだった双眼望遠鏡が完成しましたので、ご報告いたします。
1.はじめは・・・
数年前から、双眼望遠鏡に憧れ、なんとかを手に入れたいと思っていました。そこで3年前に、10cm短焦点屈折に天頂ミラーを
とりつけ、2本の鏡筒を前後にずらして取り付けるという『オフセット双眼望遠鏡』というものを作りました。これは、お気軽双眼と
してはとても良く、単眼よりも暗い星雲がずいぶん見やすくなったことを感じました。
しかし、アクロマート短焦点で、高倍率に耐え
られないことや、視軸を合わせることに少々手間がかかることなどから、次の機種をと考えていました。
手持ちのゼニスター80LDショートを1本持っていましたので、同じゼニスターかネリウスを購入し、10cmと同じように『オフ
セット双眼』を作るつもりでいました。幸い、ネリウス1本を手にいれることができ、部材もそろえたところで、ふと考えが変わって
どうせ作るなら中途半端なものでなく、一生使えるモノをということで、正立でしかも視軸調整が容易であるEMSで双眼を製作する
ことにいたしました。
2.EMS発注
1月末に、松本さんに小口径用EMSを発注し、1週間ほどで到着しました。お忙しいはずなのに、迅速な対応に驚きました。
到着してから、あらためて精密な作りに感動しました。工業製品の極みというところでしょうか。とりあえず鏡筒1本ずつ、手持ちの
アイピースが合焦するかどうか試してみました。
ゼニスターショートの方は、なんなくどのアイピースも合焦しました。しかし、ネリウ
スは、常用するであろうEWV32では、眼鏡をかけるとどうにか無限遠にピントがでるのですが、裸眼では合焦しません。
また、
手持ちアイピースの中で、最も焦点位置が近いバーダーのズームアイピースのピントが全くでません。これは予想外で、途方にくれま
した。自分では、この鏡筒を切断する技術はないし、とても困ってしまいました。
そのことをメールで、松本さんに連絡したところ、鏡筒を送れば加工してくれるとのこと。この金属のかたまりのような鏡筒を切断
することができるなんて、本当にありがたいです。早速、松本さんにお送りし、すぐに15mmほど短縮していただきました。今度は、
どのアイピースも合焦します。
3.製作開始
前もって注文していた8mm厚のアルミ板と鉄製アングルで、鏡筒が載るフレームを作製しました。今回の双眼望遠鏡については、
下記について考慮しました。
(1)片方の鏡筒については、単眼で使用することも考え、容易に取り外しができるようにする。
(2)常用するHF経緯台(改)に容易に取り外しができ、さらに他の架台やカメラ用三脚にも使用できること。
そこで、アルミの板材でL字型のフレームを製作して、HF経緯台の汎用プレートに脱着できるようにしました。そして、右側の鏡筒
(ネリウス)については、X軸ラックピニオンステージを利用し、眼幅は58〜70mmまで対応できるようにしました。左側の鏡筒
(ゼニスター)については、底上げをした上にアリミゾ+アリガタで、容易に取り外しができるようにしました。
HF経緯台については、アイベルさんでも微動付きの架台が販売されていますが、それをまねた訳ではなく、それより以前に微動付き
に改造していました。当然、フォーク部は松本さんをまねて、60°にしてあります。
4.使用してみて
最初は使用するアイピースが重いので、ややアンバランスでしたが、プレートの下にカウンターウエイトの取り付けたところ、とても
スムーズに操作できるようになりました。使用する際は、上下動のクランプをしっかり締めプレートに取り付けます。動かす時は、ハ
ーフクランプ状態で、スーッピタ!微動ハンドルで、対象を視野の真ん中に移動するという使い方ができます。クランプの効きを調整
することで、HF経緯台でよく言われるリバウンドもほとんど気になりません。さらに、架台部分を改造して、エンコーダを取り付け
てありますので、ステラガイドで導入支援もできます。HF経緯台も、微動+導入支援ということで、非常に使いやすいものとなりま
した。
アルミ製のL字フレームにはアリガタをとりつけ、さらに底部には1/4インチネジを切ってあるので、SP赤道儀を改造した自動導入
経緯台にも、大型カメラ三脚にも取り付けることができます。しかし、使い勝手が一番いいのはHF経緯台で、これだと安心して使用で
きます。
5.見え味は・・・
肝心な見え味は予想通りというか、予想以上でした。以前製作したオフセット双眼の時も感じていたのですが、双眼にすると暗い対象
が非常に見やすくなります。また、明るい月を見ても長時間見ても全く疲れません。
そして、この鏡筒のすばらしいのは、抜けの良さ
です。77mmのプリズムを使用した対空双眼と比べると、抜けの良さを感じ、冬の銀河を下ると両目に星が広がります。FS102
単眼と比較しても、光量では若干落ちるものの、両目で見ると、逆転する感じです。
月や惑星などでも、気をつけないと色にじみは感じません。常用は、EWV32とバーダーのズームアイピース(8〜24mm)です
が、必要に応じて、XW20、XL14、XW5に取り替えます。どのアイピースもバランスはくずれず、動きは非常にスムーズで
す。
6.これからは
しばらくは、この双眼望遠鏡で楽しめそうです。住んでいる場所が地方都市とは言え、3等星が限界です。それでも20分も走ると
、街明かりのほとんどない場所がありますので、春の星雲・星団には活躍してくれそうです。これからは、夜の使用に対応し、さらに
使いやすさを追求したいと思います。
管理者のコメント;
ヤマネコさんは、すでにBINOの自作経験がおありだったこともあり、最初にいただいたメールが「EMS-Lセットを注文します。」
という内容で、2通目が「送金しました。」、3通目が「届きました。」というもので、ご理解も早く、異例のスピードで事が運んだのが、
印象に残っています。
また、今回いただいた、画像を添付されたメールも、開く際にあまりに重く、PCがフリーズしたがサイバー攻撃
かと警戒したのですが、じっと耐えて待ったところ、何と250KBくらいの画像が28枚届き、これまた一生忘れられない受信メール
となること、確実です。^^; (次回からは数枚ずつ分けてご送信ください。^^;)
以前にオフセット双眼望遠鏡を自作されたそうで、その画像もぜひ見せていただきたいのですが、この形式は、何が何でも双眼
で見たいという欲求が具体化したような双眼望遠鏡と言えます。両眼に対物からの光を何としてもぶち込むという力技ですが、その
エキセントリックな外観も、双眼で見たいという飽くなき執念と見て取れます。ただ、この形式は、目標を完全に無限遠に設定
した時だけ成り立つものであり、近距離では正常な立体視は望めません。私たちが頭をかしげて物を見るのとは、全く意味が
異なるのです。今回ヤマネコさんはこの形式を卒業され、EMS-BINOの世界に入られたわけです。
事前にメールでお知らせいただいていたはずの、異種鏡筒ペアの双眼ですが、実は私はピンと来ておらず、写真を見せていただいてから
驚きました。私の頭の中には、異種鏡筒(しかも鏡筒長が著しく異なる)を使用したBINOの概念が無かったものですから、ネリウスの方が
合焦しないとご相談を受けた時も、当然ZSショート鏡筒をBINO用に2本所有しておられて、単眼視用の3本目の鏡筒としてネリウスを
お持ちなのだと勝手に解釈しておりました。
しかし、こうして完成したBINOをリポートと共に拝見しますと、ちゃんと要所を押さえておられることに感心させられます。
片方の鏡筒を固定させ、もう片方を平行移動させるのは基本的には私がやっている事と同じですし、むしろ、
自動導入や追尾機構等、私よりも進んでいます。^^; しかもこの極端なペアのBINOをさらりと3連休を利用して
作ってしまわれたcraftsmanshipにも脱帽です。それと、あのラックピニオンのX軸ステージは何を
ご利用になったものでしょうか。(ご説明いただきましたら、このコーナーに追記させていただきます。)
ヤマネコさん、楽しいリポートをありがとうございました。 今度はぜひ観測リポートをお願いします。
天体もですが、地上の至近距離を見た際の、オフセットBINOとの見え方の違い等をリポートしていただけましたら幸いです。
(最後にこの場を借りておことわりしておきますが、EMS単体につきましては創業当初よりほぼ即納を堅持してまいりました。
(BINOに納期がかかるのはEMS単体の納品を優先するからです。)また、先日来BINO製作情報速報に掲載していましたZS80ED-BINOは、
事情により12pBINOを変更された予約の方で、決して割り込みではございませんので、よろしくお願いいたします。15cm-BINOの
準備も並行して進めております。)



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