Total Solar Eclipse with Sky90-BINO in Egypt
≪パッキング≫
昨年のオーストラリア遠征の経験を踏まえ、鏡筒2本とP.S.T.は機内持ち込み可能
なサイズの40Lザックを出来るだけ小さく見えるように縛り、その他のマウント部、
三脚部をスーツケースに入れるように致しました。
前回三脚を三脚ケースに入れ、別荷物としていましたが、2つになるため荷物受け取
りにえらく時間がかかったためです。また、1つにまとめることにより、三脚ケース
の重さが不要になるというメリットもあります。
脚が入るスーツケースとなると大型になるにもかかわらず、マウント部など重い
部品が入るため、すぐに20kgとなり空間が空いてしまいます。そこには100円ショッ
プで売られているプラスチックケースと衣類で隙間が無いように並べました。旅行さ
れた方はご存じかと思われますが、スーツケースは放り投げられたりされますので、
中で荷崩れが起こらないようにするのが破損防止になります。また、クランプネジの
ような出っ張り部も全て外すようにします。これらも衝撃で曲がってしまい、機能な
くなったと言うお話を聞いたことがあったからです。
≪観望≫
CAIRO空港に着くなり、年に数回しか降らないという珍しい大雨に遭遇し、先行きに
不安を感じました。翌日も晴れてはいますが、いわゆる気象学的に『晴れ』という内
容で、ますます日食当日の快晴を祈るばかりでした。
当日、宿泊ホテルから250km離れているため、リビア国境近くの軍事施設近くのため、
ムバラク大統領が観に来るという様々な理由が重なり朝3:00出発というスケジュール
でした。また緯度的には沖縄と同程度で、エジプト=熱いという印象ですが、早朝は
10℃程度と上着がないと寒い場所が観測地となりました。
10時近くまでガスに覆われ、皆の顔は若干覚悟をするというような表情でしたが、祈
りが通じたのかそれ以降は一気に快晴になりました。また、一昨日の雨のおかげで砂
が舞い上がるということもない、最高の観望条件になりました。
私のSky90双眼は、クイックシューにより鏡筒を容易に着脱することが可能です。その
ため、日食前、部分日食中は、添付写真のように一方の鏡筒を太陽望遠鏡のP.S.T.に
付け替えてプロミネンスの様子を見ていました。さすがに、日本と違って大気は安定
しており、たった40mmの口径でも粒状班の様子や黒点を取り囲むプラージュなどが良
く見えました。たまたま側を通りかかった国立天文台の渡部潤一先生や、周りのオラ
ンダ人達は喜んでいました。
食が90%以上進むと、気温が明らかに下がってくるのがわかり、そして空が徐々に暗
くなってくるのです。低空は夕方のようになっており、満月の夜程度の暗さでしょう
か。ふと西の空を見ると、いつの間にやら金星が力強く輝き、ダイヤモンドリングに
なると周りから大歓声が響くのでした。
見上げると、見たこともない太陽がそこにはあるのです。真ん中がすっぽりと輝きを
無くした太陽は、漆黒をバックに左右に長く、上下に短く光り輝く妖艶な白い髪の毛
をなびかせているのです。それは、普段の太陽を手で隠して見える、フレアのような
光芒とは全く違うものです。
たとえがなかなか見あたらないのですが、秋の繊細な絹雲が光り輝き、放射状に伸び
ているような感じでしょうか。見たことがある方なら、うんうん言わんとすることは
わかる。でも違うんだよな〜と言うような。そう、申し訳ございません、あまりぴっ
たりなたとえが無い、それは非常に繊細で、見た者のみが共有できる優艶なる美しさ
なのです。
P.S.T.を装着してたマウントは、すでにSky90双眼に装着に直され、主砲を仰角62°に
向けるのです。
黒い太陽を撃て!
かつての皆既日食時の雑誌に記載されていたタイトル。皆既日食を観に行けるだろう
かと、昔思っていたが、まさしくEMS双眼でその瞬間がやってきたのです。低倍率、80°
オーバーの見掛け視界で見られる双眼は、今のところEMSでしかあり得ないのです。
コロナは全てが輝く繊細なる線となり、ピンクサファイヤのように光り輝くプロミネ
ンスは、肉眼でのイメージをさらに凌駕するのです。P.S.T.での短波長のプロミネン
スは赤色ですが、ここでのプロミネンスはピンクなのです!80°オーバーでもってし
ても左右にはみ出て広がるコロナは、スーッと闇に消えていきます。
なぜこのような線になるのか、地球型惑星としては大きすぎる月、この大きさが今
と異なっていたら、月、太陽との距離関係が少しでも違っていたら、、、全ての偶然
が生んだ奇跡をこのEMSで見とれていると、さらなる最後の奇跡、ダイヤモンドリング
が始まったのです。
かき消されてゆくコロナと、光り輝くダイヤモンドリングを数秒見届けた後には、拍
手と歓声、恵みなる太陽の輝きを受けながら、3年後のことを考えている自分がいた
のでした。