メガネのマツモトさんに製作を依頼しましたCAPRI-102ED-BINOが昨年12月に完成しました。
おそらくCAPRI鏡筒の双眼望遠鏡として世界初、1号機だと思います。
機材導入の経緯から、製作過程、インプレッションまでReportします。
長文で申し訳ありませんが、しばしお付き合いいただければ嬉しいです。
【導入の経緯】
・大口径&双眼視に魅せられて、現在は口径38cm/F5のドブソニアンに双眼装置をつけて
観望しております。このシステムでの双眼視の最低倍率は140倍/実視界0.6°となります。
・中倍率用にミヤウチ製10cm双眼鏡(セミアポ45度対空)を愛用しておりました。
大変、覗きやすくよい機材でしたが接眼レンズの選択に制約があり、手持ちの広視界ア
イピースが使用できません。また月を見た時、エッジ部での若干の色収差が気になり
ました。ドブではカバーできない140倍以下をカバーできる双眼鏡があればいいなぁと
常々思っておりました。
・天文仲間にSKY90-BINO、12cmF5BINO、FS-102-BINOのユーザーがいらっしゃいます。
彼らの機材を覗かせてもらう度に心はどんどん高まってきてました。「いつかは自分も
双眼望遠鏡を手にしたい」と。
・双眼望遠鏡を検討する際、散開星団、天の川など低倍率から惑星など高倍率まで一台で
こなせ、月をみても色収差を感じない鏡筒となるとやはり、アポクロマートを使いたい。
しかし、鏡筒だけでも高価でなかば諦めかけていた折、笠井トレーディングから新製品
:CAPRI-102EDが発売となりました。
スペックはほぼ希望どおり、これなら価格も手が届くのではと思うと高ぶる心が抑えきれず、
実際の星像を確認することなく、今回の製作依頼となりました。
【BINOの仕様と製作】
・CAPRI鏡筒がマツモトさんへ入荷したとの連絡で早速、手持ちのアイピースで合焦の確認
と打合せを兼ねてマツモトさんを訪問しました。CAPRIはEMSの使用も想定し、市販鏡筒
の中ではバックフォーカスを十分にとってある鏡筒なのですが、手持ちのアイピースで最
もバックフォーカスが必要なWS(ワイドスキャン)20mmにおいてはかろうじて合焦する
ものの余裕がないことがわかり、エンドフランジの加工で1cm短縮していただきました。
これでほとんどのアイピースで合焦可能です。(マイナスポイントアイピ−スアダプター
など使用すると筒は無加工でも合焦できるかもしれませんがEMSの保護フィルターとの干
渉を確認しないといけません)
この短縮改造で、CAPRI純正のマイクロフォーカサーがそのまま使用できました(写真B)。
・眼幅の調整は10cmクラスでは鏡筒スライド式がマツモトさんの推奨とのことで、この方式としました。
・その他、主な加工は、左鏡筒のマイクロファーカスノブの左右対称化加工と、左右鏡筒バ
ンドが干渉する部分の切除加工です。
・CAPRI鏡筒がマツモトさんに入荷してから、製作着手までの約1ヶ月、1本をお借りし実際の
星像を確認しました。高倍率でも色収差はほとんど気にならず、星像も非常にシャープで
優秀な機材であり、完成したBINOに寄せる期待がさらに膨らみました。
【BINO完成・ファーストライト】
・CAPRI鏡筒はブルーのアクセントカラーが印象的な美しい鏡筒ですが写真@のように
BINOにするとさらに美しい姿の双眼望遠鏡になりました。
・星像のファーストライトは、遠征仲間(気ままに星空観望仲間)の観望会となりました。
写真Aは観望会当日のものです。BINO完成以来、遠征にはBINOと38cmドブを
車載し、それぞれの対象に合わせて楽しむという、とても贅沢な観望を楽しんでおります。
・いよいよファーストライトです。星像は極めてシャープ、かつ双眼の効果で臨場感あふ
れる見事な光景が視野いっぱいに広がります。2重星団、M46/M47、プレアデスなどは多
くの天文仲間からも絶賛でした。集光力では38cmドブには及びませんが、星像のシャープ
さはさすがアポクロマートです。微光星までカチッと見えます。また明るさについて
は単眼の2倍ではなく、数倍の明るさに感じます。10cm×2本の計算上の口径面積は14.4
cmに相当しますが感覚的には口径20cmかそれ以上の明るさに感じます。さらに倍率も双眼視
の効果により、単眼よりも大きく見えます。目の専門家のマツモトさんによれば、両目
で見ることで解像力が上がるため、大きく見えるように感じるとのことです。
【双眼用アイピース類】
・もともと双眼装置ユーザーであったので31.7mmサイズの広視界アイピースはペアで所有
しておりました。写真CがCAPRI-BINOに使用する見掛け視界80度以上のアイピース郡です。
高倍率にはJAPANOPTIK製の×2.8バローレンズを使用します。
・これらのラインアップで下のように倍率、実視界を対象に合わせて自在に選択できます。
アイピース 見かけ視界 倍率 実視界 射出瞳径
EWV-32mm 85度 22倍 3.81度 4.6mm
WS-20mm 84度 36倍 2.35度 2.9mm
NA-17mm 82度 42倍 1.95度 2.4mm
WS-16mm 84度 45倍 1.84度 2.3mm
NA-13mm 82度 55倍 1.49度 1.9mm
UWA-8.8mm 82度 81倍 1.01度 1.3mm
WS-20×2.8 84度 100倍 0.84度 1.0mm
WS-16×2.8 84度 125倍 0.67度 0.8mm
NA-13mm×2.8 82度 154倍 0.53度 0.7mm
UWA-8.8mm×2.8 82度 227倍 0.36度 0.4mm
・アイピース交換時の重量バランスについてですが、HF経緯台のフリクションねじの調
整で多少のバランス変化でもフリーストップとはなりますが、高倍率ではバックラッシ
ュが気になります。締め付けがきついと耳軸部の樹脂シートの微小な変形により発生す
るのでは?と考えてます。そこで最も重いNA17mm装着時がデフォルトになるよう、鏡筒
バンド位置を決め、他のアイピースではウエイトをBINOのハンドルに引っ掛けます。
これにより、フリクションねじをかなり緩めた状態でバックラッシュがほとんどなくフリーストップ
を達成しました。
【観望インプレッション】
・月: 球体であることを強く感じます。また雲の流れが月面を通過する時などは、遠近感に溢れ、立体的な光景が楽しめます。また200倍を超える倍率で月のエッジをみても、
色収差はほとんど感じません。ED2枚玉とはいえ、大変パファーマンスの高い鏡筒です。
・M46/M47: EWV-32mm(22倍)でM47の北にある散開星団NGC2423も同じ視界に入ります。
各々の散開星団の特徴が同時に見え、賑やかで面白い光景です。
・ホームズ彗星: 立体感、透明感に溢れ、まさに宇宙を漂う「水クラゲ」のようでした。
・M42: NAー17mm(42倍)で小三ツ星の全景とトラペジウムもキッチリ見えます。この倍率
で射出瞳径2.4mm、バックグランドも暗くなり、オリオン大星雲も浮かび上がります。
・土星: 高倍率の対象ですが、当日のシンチレーションに合わせ倍率、×154、×227を
選択します。227倍においても十分シャープな星像です。
これ以上の倍率はまだ試してませんが300倍程度なら実用域かもしれません。
高倍率時は追尾と合焦操作などで機材に触れると振動がやや気になりますが、この振動
は数秒で収まります。真っ暗なバックグランドにシャープな土星が浮かんでます。
コントラストも高く、本体の縞も良く見え、そして本体が球形であることを感じます。
・ばら星雲: さらにEWV-32両眼にナローバンドフィルターの装着で、ドブでは部分しか見
ることのできなかった「ばら星雲」の全景を見ることができました。
実は同じフィルターを2個持っていませんので、左右で若干異なるフィルターを装着して
みました。 NBN-PV(IDAS)とスーパーネビュラフィルター(笠井)ですが、片目ずつ覗い
てみるとフィルターによるコントラストの差はわかるのですが、両目で見た時は違和感
は全くありません。恐らく左右の明るさ、色などの若干の違いならば人間の脳内で合成
してひとつの映像として感じているのでしょうね。
この現象を応用すると、例えば、UHCとOVとを左右に装着し、微光星の輝きを損ねるこ
となく星雲のコントラストを上げる。あるいはOVとHβの組み合わせで難物とされる対
象をより美しく見ることができる。このような期待ができるかもしれません。
今後のチャレンジ課題です。
・おとめ座銀河団: 実視界3.8度が確保でき、口径10cmとは思えないぐらい、多数の銀河を
はっきりと確認できます。
・M81/M82のペア: BINO;42倍(NA-17)、38cmドブ;59倍(EWV-32)で比較してみました。
10cmBINOは大口径に決して見劣りしません。コントラストはBINOに軍配があがります。
(瞳径の差によるコントラストの向上の影響もあるのでしょう)
【今後の期待】
昨年12月に完成し、まだ2ヶ月弱の稼動ですが、夏の天の川やその中の暗黒星雲、網状星
雲の全景など今から楽しみです。
【最後に】
以上、大変長々と書き綴ってしまいました。BINO自慢ばかりでお聞き苦しい点が多々ありま
したがご容赦ください。BINOの購入、製作を計画されている方やBINOユーザーの方に少しでも
参考になれば幸甚です。