やまとさんがFMSを2台ご使用になった感想を投稿してくださいました。 単体のEMSの使用
リポートは、なぜか今までにほとんど集まらなかったので、大変嬉しいご投稿でした。
市販の天頂ミラー(1回反射)を屈折望遠鏡の接眼部に対空型にセットして地上風景を上から覗いて
見ますと、左右だけが逆になった直立像が見えます。このままアイピースを天頂ミラーごと反時計回りに90度倒して
横から覗きますと、像は同じ量だけ同方向に回転し、今度は天地だけが逆の裏像となります。
FMSの仰角と像の向きの関係をご説明しましょう。 FMSも天頂ミラー同様側視も可能で、覗き方はほとんど
無限にあるので、ここでは、目標に体が正対して観察する場合に限定します。
まず、仰角0度(直視)では、お察しの通り、望遠鏡の像の向きをそのまま見せてくれます。 つまり、
使用する望遠鏡の像が元々正立像なら正立像、倒立像であれば倒立像がそのまま観察されます。
EMSの構成ユニットが(双眼望遠鏡用で考えた時の)右目勝手の接続の場合、仰角を0度→90度に
移行させて行きますと、倒立像は反時計回りに180度回転します。 ただし、これは単純に2倍角で
回転するのではなく、仰角設定と像の向きの関係は線形ではありません。
EMSの仰角は90度を越えて最大120度までセッティング出来ますが、この間の像の回転量をご説明すれば、先述のことが理解していただけるでしょう。 何と、(右目勝手で)仰角90度→仰角120度(写真1)までのわずか30度の
仰角変化の間に、像は先ほどと同じ方向(反時計回り)に180度回転するのです。
(念のためにご説明しますが、FMSは自由に左右勝手を往復できる機構なので、
最初から右目勝手仕様とか、左目勝手仕様という区別はありません。(9/1追記))
もう一度整理しますと、
* 仰角: 0度 → 90度 →120度 の間に;
像: 倒立像 → 正立像 → 倒立像 と、同方向に連続して回転するわけです。 左目勝手の接続では、回転方向がこれと鏡
対称になります。(この特徴がEMS−BINOの像回転の調整に功を奏すのです。)
(*注: 上の『仰角』とは、EMSの最終的な折り曲げ角度のことです。観察姿勢のことではありません。
また、上記例は、望遠鏡自体が倒立像の場合です。)
このことが示唆することの重大性は、今まで折に触れてご指摘して来た通りです。 (使用する望遠鏡の正立、倒立に関係なく利用価値があるのもその効果の一つです。)
EMSは元々、単体の対空視手段として開発しました。 しかし、大方のマニアや専門家の長年の固定観念(
2回反射は像劣化をもたらすはず・・^^;)を払拭するのはそう簡単ではないようで、単体のEMSの存在意義や真価が
十分に理解、認知されないまま、先に双眼望遠鏡用の手段として有名になってしまった、というのが、製作者
当人の正直な歴史認識です。^^;
ただ、こうして、”やまと”さんのような方が極めてたまにでも現れてくださると、またEMSを作り続ける勇気を
いただいた気がいたします。
9月14日追記:
やまとさんより、追加リポートをいただきました。
FMSの場合は、EMSユニットの回転部の接続の他に、FMSと望遠鏡、FMSとアイピーススリーブ、
さらにスリーブとアイピースと、接続箇所が多いので、それぞれに配慮が必要になります。
通常より重い物を接続する場合には、それなりの対策が必要になるようです。
全ての接続箇所をすり割りクランプ式にすれば理想ですし、接続径を単純に太くするのも、大きな
接続強度のアップが期待できます。
今回いただいたリポートは、マイナーな追加加工の結果報告でしたが、私としましては、
やまとさんが2台のFMSを継続的に、しかも極めて有効に活用してくださっていることの意義を読み取っていただけたら幸いです。 やまとさんは、FMSを臨時的な対空手段ではなく、望遠鏡に常設
してご使用になっていますが、それは製作者の意図とも合致しています。
残念なことに今日に
至るまで、「天体望遠鏡は直視で見るのが基本であり、天頂ミラー等は天頂付近を見る時に
仕方なく使用する臨時手段である。」という固定観念が望遠鏡業界にもマニア界にも非常に
根強く浸透しています。
私が”汎用ミラーシステム”という名称で仰角可変タイプの
EMSを初めて世に送り出してから20年が経過しているにもかかわらず、EMS全体に占める
仰角可変タイプの要望が未だに極めて少ないことには、改めて驚きを禁じ得ません。
一度権威を帯びてしまった固定観念を払拭するのは並大抵なことではありませんが、
少数ながらも、やまとさんのような理解者がおられる限り、諦めるわけには行きません。