松本さんに双眼望遠鏡の構造をいろいろお聞きしたのが去年(2006年)9月。12月末にヘリコイド式EMS-Lを納品してい
ただき、今年(2007年)4月になりようやくBINOとして覗ける形になりました。簡単ですがレポートを送ります。
●催眠誘導?
三重の大台ヶ原で見かけたSky90-BINOが最初に目撃した松本式BINOでした。そのときは「ずいぶん凝っ
てるね〜」「調整大変そう」という程度で、失礼ながらそれ以上の関心は湧かなかったのです。その後
数年が過ぎ、所属している同好会の方が作製したNerius80-BINO(愛称ヘビーノ)で富士山の測候所跡な
どを見上げる機会があり「けっこう行けてるね〜」となり、同氏が作製した双眼ドブソニアン(愛称ド
ビーノ)やその方から影響された方の10cm屈折BINOなどが誘引剤として作用し、いつしか「お気軽観望
用にBINOが欲しいな〜・・・」と感化されていったのでした。
●コンセプト
星見遠征での基本スタイルは写真撮影です。せっかくの星空も撮影の合間に手持ち双眼鏡で見上げるだ
けともったいない状態でした。車に載せた撮影機材のすき間に大型の観望機材を押し込むこともでき
ず、撮影を始めればヒマをもてあます・・・。これでは趣味として長続きしません。といったところが
BINOのコンセプトを考える元になっています。
イ) 見た目カッコよく! 趣味は形から
ロ) 気軽に持ち出せる小型軽量機材
ハ) 月・惑星から星雲・星団まで何でも見えること
ニ) ずっと使える耐久性
●構造
「お気楽でもちゃんと見える」をマジメにやるとなかなか大変です。さいわいなことに双眼望遠鏡の世
界は松本氏やBigBino服部氏のサイトなどで詳細に説明されていますので何度も眺め返すと、ストレス
のないBINOの特徴は単眼でも良好な望遠鏡としっかりした足回りの組合せがキモらしいとわかります。
本機は90mmの小口径BINOですが、よいタイミングでEMSのヘリコイドがペンタックスからボーグに代
わったことにより筒外焦点距離の消費が減り選択しやすくなったのと、全体の軽量化と調整項目を減ら
す目的から鏡筒固定タイプにしました。眼幅調整はEMS中間筒に設けられたヘリコイドによります。鏡
筒間隔をD=156mmとすることで67mmを中心にして60〜74mmに対応しています。また、合焦装置をFeather
Touch Focuser に換装することで難物のNaglarType4-22mmをヘリコイドが最も伸びた状態でも約6mmの
繰り出し量を確保して合焦させられました(写真4)。
左右鏡筒の光軸調整は接眼方向から向かって左側を基準鏡筒にして、右側の鏡筒をファインダーと同じ
要領で前後3ヶ所ずつの押しネジにより調整します。初期調整時には200倍まで調整しましたがアイピー
スの抜き差し具合でもズレますのであまり神経質に調整しなくても問題はありません。固定枠はズレが
生じないよう強固に造りましたので「象が踏んでも・・・」というほどではないですが、私が踏んでし
まっても大丈夫でした。
架台はユーザーレポートにあるWenglar氏作製のTeleVue140-BINOが理想です。しかし、これほど潔くは
なれないため、カッコだけ真似て細かいギミックを付け足して逃げています。まず、TeleVue F2経緯台
から軸受け部分と側板を流用し、メガネ状の鏡筒固定枠を耳軸部で前後にスライドさせて重量バランス
をとれるようにしました。架台を載せる足は1/2インチネジが使える軸受けをつくりタカハシのEM200赤
道儀用三脚を使っています。とても丈夫です。もとのF2経緯台の軸受けに戻せば3/8インチネジになり
大型のカメラ三脚も使えるようになりますので海外遠征などはカメラ三脚仕様で行く予定です。
●観望
イ)初期調整
初期調整のために見た春がすみでモヤッと白んだ昼間の景色はやはり単眼とは大違いでした。白んだ空
気が対流で視野の中を移動していく立体感がわかってしまいます。ためしに同じ状態で片目をつぶると
「アレッ?」というほど立体感が失われます。
ロ)ファーストライト
4月中旬に富士山近郊でファーストライトを迎えました。明るいうちに現着してケースからBINOを取り
出すと右側のEMSがヘリコイドと第一ミラーケースのつなぎ目で回転しているのを発見。応急処置で視
野の回転を合わせましたが、左右の接眼筒の位置が多少斜めになって視野回転が合う状態に。さらに片
方のSky90がわずかに光軸不良なのも発見。カスミがひどいのと合わせてファーストライトは不発に終
わりました。
ハ)再調整
Sky90はメーカー送り。EMSは松本氏のHPを参考に調整治具を作製してミラーの原点復帰を行い、数キロ
先のビルを見ながら捻れ角も調整。はたして、元どおり?になったSky90-BINOは200倍の高倍率でも
スッキリした視界が確保できるようになりました。
ニ)本領発揮?
a)天の川
22mmのアイピースをつけて23倍ほどの倍率で天の川下りをすると、天の川沿いの散開星団、散光星雲、
球状星団が次々と視野に入り、双眼鏡でもドブソニアンでも出しにくい谷間の倍率が今までにない新鮮
な視界を創り出します。さらに、単眼では片目を開いても閉じても左右の視野の明るさがちぐはぐにな
り長時間見続けるのは疲れますが、BINOでは長時間の観望が楽になり目を離さずに次々と対象を移動で
きるためまさにクルーズ状態です。時間をかけて覗けることで暗黒星雲の切れ込みもハッキリと追いか
けられます。また、アポ屈折のスッキリした星像のおかげで散開星団巡りにはおそらく最高の組合せで
はないか?という気がします。やはりユーザーレポートで皆さんが言われるように、NaglarType4-22mm
は双眼望遠鏡に特別にマッチするようです。
b)惑星
200倍で見る土星は輪の影がスパッとエッジの立った状態で土星本体に落ちているのがわかります。輪
の傾きが寝てきているのでカシニのすき間は1/4周ずつ両サイドに確認できるだけですが、両眼視によ
る安定感から経緯台での追尾にもストレスは多くありません。今シーズン、南天低い木星はフェストー
ンがうねうねとしているのが容易にわかります。模様のわかりやすさは20cmニュートン反射のMT200と
ほぼ同じなのにはビックリです。さすがに口径が小さいので模様の色は淡いですが、これだけハッキリ
見えれば気が向いたときにサッと出せる機材としてはじゅうぶんです。
c)月
口径90mmともなればじゅうぶんに眩しい月が見え、それが双眼視によって色彩情報も昼間の景色のよう
にハッキリと感じられるようになります。月の海にこんな色あったっけ?クレーターから伸びる光条ど
こまで続いてるの?といった感想がでるほど色彩豊かな月面が広がります。クレーターの中を見るよう
な高解像度は口径の限界で無理ですが、BINOによって得られる安定感とより確認しやすくなる多彩な色
によって飽きのこない楽しさが長続きします。片目で月を見ていた頃はアイピースから目を離すと効き
目だけ暗順応が無くなって違和感たっぷりだったのですが、BINOでは両目とも等しく暗順応が無くなる
ので違和感無く周りが見えなくなります。
以上、長々と書いてまいりましたが、Sky90-BINO作製にあたり先達の方々のレポートや作例を参考にさ
せていただけたおかげで、かなり満足できるBINOを完成させることができました。松本さんをはじめ参
考にさせていただいた皆様に感謝いたします。また、本レポートが次にBINOを作製される方の参考にな
れば幸いです。
ツジ
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写真の説明
●(写真7)富士山新五合目にてユーザーリポートに出られているスタークラウド宮野さんのMegrez90-BINO、
OkadaさんのSky90-BINOと偶然にも居合わせまして90mm-BINOを3台並べて記念写真を撮り、雑談などさ
せていただきました。
●(写真6)同じ同好会の方のNerius80-BINO(愛称ヘビーノ)とツーショット
●(写真5)収納ケースに使用している東洋リビングのドライバッグF-47