志村英盛 黒字経営実践 
                          Hidemori Shimura

 

11年3月11日午後2時46分、突如、東北地方太平洋岸全域を襲った
マグニチュード9.3の巨大地震と巨大津波、それに付随して起こった
福島第1原発の大事故は、日本経済に、永く続く、深い傷を負わせた。
企業経営にとって、今後、従来の発想、判断基準、ノウハウ、システム等が
通用しなくなる事態が数多く生じる
。正確な情報を収集する重要性がさらに高まる。

関連サイト:巨大津波・原発大事故20110311




08年9月のリーマン・ショックを契機とする金融危機、それに続いた
世界的な景気後退と記録的な失業者の増大は、消費と設備投資の
大幅な減少を招いた。この痛手から回復途上にあった世界経済は、
10年5月、ギリシャの財政危機の表面化、ユーロの大幅な値下がり
によって、新たなる危機に直面している。

12年1月2日の対ユーロ円相場は98円と円は2002年以降の
最高値となった。
11年10月26日の対ドル円相場は75円と円は戦後最高値となった。

同様の財政危機にあるとみられているポルトガルでは、財政再建の
ための支出大幅削減、公務員と労働者の賃金引下げ、年金カットに
対して、ギリシャ同様、労働組合が強く抵抗している。スペインも同じような
危機にあるとみられている。長年にわたるこれらの国々の放漫財政の結果、
返済不能と見込まれた国の借金(=国債)のツケをだれが負担するのかが
EUを揺るがせ、ユーロ安が続いている。

10年1月日27日行われた米国のオバマ大統領の一般教書演説は、
冒頭でブッシュ政権の下で引き起こされた金融工学詐欺による
米国経済の景気後退と失業者増大の惨状
を次のように述べている。


11年1月26日行われた一般教書演説でオバマ大統領は、
「最悪の不景気は終わった」と述べ、
「技術革新と教育に重点を置く」ことを強調した。

しかし2011年秋以降、ユーロ危機で、
さらに深刻な「最悪の不景気」必至の状況になっている。

深刻な失業問題が、いっこうに解決されないことが社会不安を増大させている。

ブッシュ米大統領の8年間に引き起こされた金融工学詐欺の後遺症が、
米欧のみならず世界中の資本主義国家に広がっており、国民を苦しめている。

さらに、ブッシュ米大統領が始めた戦争詐欺(イラク、アフガン)は、
米国の軍事費の異常な異常な膨張となった。
この戦争詐欺被害がどんな形で世界各国を苦しめるか
現段階では明確ではないが、
さまざまな後遺症が尾を引くことは避けられないと思う。

日本においては、一般会計の税収は、90年/91年の60兆円をピークに対し
08年は44兆円とピークから16兆円、27%減少した。
失われた20年といわれる所以である。

原発推進で日本国に深い傷を負わせた、党利党略にまみれている自民党と、
ウソツキリーダーを担いで国民の心に深刻な政治不信感を刻みつけた
民主党に代わる有力な政党はないから、日本は、そして日本経済は、当分、
政治も、経済も、外交も、不安定な状況が続くのではないだろうか。

どの程度になるかは定かではないが、増税路線が強化されていくことだけは
間違いないと思う。




このような経済状況にあって、企業が黒字経営を実践していくことは容易なことではない。
まず何よりも、情報感覚を鋭くしてレーダー的情報収集力を強化することが
第一である。

迅速・正確な月次決算によって、毎月の企業実態を的確に把握することが必要である。
個人でいうならば、自分自身の健康状態の的確な把握が必要ということである。

毎月、固定費生産性労働分配率を的確に把握すると共に、
経費の徹底的見直し、経費の徹底的節減が欠かせない。

信用差額経常収支を毎月点検して資金体質を改善しなければならない。
月次決算を迅速・正確にできない企業が生き残ることは難しい。

これらの数字を正確に把握した上で、1か月先、3ヶ月先、半年先の
資金繰りについてシミュレーションを繰り返し行うことが必要である。
資金繰り予算を絶えずチェックするということである。

数字を把握したうえで、企業の現状を文書に記述して、企業実態把握に誤りはないかを
冷静に考えなければならない。

これは、たとえていうならば、遠洋航海において、絶えず天体観測を行い、自分の船の
現在位置を確認し、航海日誌に記録しながら航行するということである。

【ひとりよがりの思い込み】によって判断を誤ってはならない。

国家運営にも、国家の実態把握が必要と思う。たとえば2011年3月5日、中国の
温家宝首相は、全国人民代表大会で、【中国の主な不安定要因】として下記の
14項目を報告した。毛沢東皇帝陛下独裁の時代にはなかったことである。



次は、マーケティング戦略の実践である。
マーケティング戦略とは、顧客が気づいていないニーズベネフィット
(顧客が満足感を持つ利点)
を顧客に気づかせ、さらに新しいベネフィット
開発し、絶えずプライスベネフィット(価格対満足感比)を向上させることによって、
顧客に新鮮な購入満足感を持ってもらう企業全体の活動である。

戦国時代、織田信長につかえた木下藤吉郎は、武技や格闘能力や学識は
特にすぐれてはいなかったが、高度のマーケティング実践力を身につけていた。
藤吉郎は足軽のときから、主人・信長の刻々変わる二ーズを的確に見ぬき、
タイムリーに問題解決のために自発的に行動し、実績を積み重ねることによって、
異例の大出世をとげた。

信長は、藤吉郎のような足軽に、自分の二ーズを教えることはなかった。
藤吉郎のほうも、信長が教えてくれるとは微塵も期待していなかった。
藤吉郎は常に情報感度をとぎすまして、信長が直面している状況の変化を
レーダー的情報収集力で的確につかみ、信長の二ーズを見ぬき続けた。

顧客を信長と考えなければならない。顧客が二ーズを教えてくれることを
期待してはならない。
顧客二ーズは、藤吉郎のように、企業が自力で見ぬかなけばならない。

潜在顧客を発見して、隠れているニーズを見抜くためには、
レーダーのように自分の方から電波を発射して情報を収集しなければならない。

藤吉郎は、蜂須賀小六や、竹中半兵衞や、黒田官兵衞などの
優れたスタッフの知恵をフルに引き出し、把握した信長のニーズを
満足させる様々な創意工夫で信長の信頼を深めていった。

特筆すべきことは、藤吉郎は、これらの優れたスタッフを、権力、武力、
暴力、カネの力で部下にしたのではなく、理念、情報力、判断力、戦略、
方針等で部下にすることができたということである。

これからの時代の企業間競争において勝ちぬけるかどうかは、
企業全体、特に経営者やマネジャーが、藤吉郎的マーケティング実践力を
身につけているかどうかにかかっている。

三番目になすべき事はマネジメント・イノベーションによって
企業の組織風土を変えていくことである。

風土とは土壌・地形・気候を全体としてとらえた自然環境のことである。
恵まれた日本の風土と大きく異なり、アフリカやシナイ半島の砂漠の風土では
種をまいても植物は育たない。

企業の組織風土とは、企業において人々が働くための、組織、ルール、
行動慣習、思考様式、価値観、意思決定
を全体としてとらえた企業環境の
ことである。

マネジメント・イノベーションとは、経営環境変化への適応が遅れて、
慢性赤字状態に陥った企業の組織風土を経営環境変化に適応するように
革新することである。企業と、そこで働く人たちの視野を広げ、視点や
意識を変え、
仕事の目的、仕事の仕組み、仕事のプロセス、仕事のやり方を、
経営環境変化に適応できるように変えていくことである。

そのために、先ず、企業の組織風土の実態を、さまざまな視点で調べ、
現状認識しなければならない。調べた実態を文書にして共通認識することが
必要である。

日本の経済成長を支えてきたトヨタ、松下、ホンダ等の企業の組織風土
社会に貢献する人財を数多く育ててきた。これらの企業においては、
「感謝貢献-努力達成-成長進化」の経営理念が定着して、日々実践されている。

これとは大きく異なり、一攫千金を至上とした米国の投資銀行・
リーマン・ブラザース等のマネー・ゲーム企業組織風土
米国のビジネス・スクールを出た優秀な経営修士から
実に多数の金融詐欺師を生み出した。社会に大きな惨禍をもたらした。
マネー・ゲーム企業は害虫・害獣集団であった。

第四は、変化する顧客ニーズに適応できる貢献意識の高い
予習挑戦型プロ人財の確保、特に予習挑戦型プロ・マネジャーの確保である。
黒字企業と赤字企業の大きな違いの一つは、予習挑戦型人財が多数派であるか
否かである。

予習挑戦型とは織田信長や藤吉郎時代の秀吉のように、絶えず自発的に
情報収集に努め、情報に基づいて状況変化に果敢に挑戦して、革新・改革・創造に
挑むタイプである。徳川家康は本能寺の変の「九死に一生を得た」体験で、
レーダー的情報収集の重要さを身に沁みて認識し、信長や秀吉を超える
予習挑戦型に脱皮した。

予習挑戦型に対比されるのが、復唱前例型漫然先送り型である。

復唱前例型指示されたことや前例を忠実に守り実行するタイプである。
指示待ち型と言い換えてもよいと思う。真面目で勤勉であるがレーダー的
情報収集力が弱く、変化に対応する迅速な行動力が弱い。

漫然先送り型は、毎日、漫然と、与えられた仕事を行って、問題はすべて先送りして、
状況の変化に対応する革新とか改革とか創造とかを考えないタイプである。

豊臣秀吉と石田三成の死後、徳川家康の豊臣家に対するあからさまな挑発行為に対して、
新情報源の開拓も、レーダー的情報収集力の強化も行わず、洞察力と創意工夫皆無で、
生き残るための、なんらの有効な手を打たず、なすことなく滅び去った淀どの秀頼母子の
ように、環境の変化に対する危機感が弱いアスタマニャーナ型とも言える。

これまで27の企業を赤字企業から黒字企業に転換させ、かつ、黒字転換後も
着実に企業成長させている日本電産の永守重信社長は、復唱前例型人材や
漫然先送り型人材を予習挑戦型人財に変える名人だと思う。

復唱前例型漫然先送り型が多数派である企業は、これからの時代、
生き残ることは難しいと思う。

入省庁時の資格で組織内での待遇が辞める時まで続く官公庁のキャリア制度や
旧態依然の大企業の人事制度は、ノン・キャリアや高卒にとっては、
「努力しても報われない」制度である。極論すれば「人財殺し制度」とすらいえる。
抜本的制度改革が必要である。


経営とは、企業規模・体質を自覚した上で、つまり、己を知った上で、
状況に応じて、つまり、状況・顧客・ライバルの動きを把握した上で、
多くの要素を組み合わせて戦略を練り、タイミングよく実行することだから、
経営者は、絶えず視野を広げ、視点・立場を変えて観察するとことを怠っては
ならない。同時に、マネジャーにも同様の努力を求め続けなければならない。

第五は、社員の作文能力向上を軸とする情報化推進である。
IT化推進だけが情報化ではない。顧客ニーズにより良く適応するため、
社員の知恵と工夫を絞り出していく体制の強化こそが必要な情報化である。
社員の知恵と工夫を絞り出していくためには、社員一人ひとりの作文能力を
高めていくことが必要である。

第六は、資金調達による財務体質強化設備更新等の先行投資である。

企業も、そこに働く人も、絶えず、視野を広げ、視点を変えて観察し、
立場を変えて考えてみて、顧客ニーズの変化と分業構造の変化を
見誤ってはならない。

景気後退や失業増大のみならず、消費の成熟化・多様化、情報化、
グローバル化、高齢化、車社会化、女性の社会進出の一般化、
結婚観・子供観の大変化、未婚率の大幅上昇、離婚率の上昇、
少子化、単身あるい二人世帯の増加、外国人の増加、低所得層の増加
などに伴って、顧客構成個人ニーズが変わりつつある。

絶えず資金、人財、時間、設備、立地などの経営資源の最適配分を研究して
経営資源を競争力の強化に重点配分しなければならない。
環境変化に適応できなければ廃業、倒産を余儀なくされる。

参考情報:2011年2月2日、バイオ企業として著名な岡山県の(株)林原
倒産した。負債総額は関連企業を含め1500億円と報じられている。
日本経済新聞(朝刊)11年2月7日第31面は「林原破綻 岡山に衝撃
バイオの雄 虚像の30年」との見出しで、「経営監視がきかない同族会社で
30年くらい前から不正経理をしていた」と報じた。



黒字経営実践

1.レーダー的情報収集力を強化する

2.月次決算と資金繰り

3.マーケティング戦略を実践する

4.視野を広げる、視点を変えて観察する

5.志村英盛撮影 空から見た日本各地

6.衛星画像で見る世界の大都市周辺

7.数字で変化をつかむ、数字で違いを知る

8.「感謝貢献」の経営理念を明確にする

9.マネジメント・イノベーションを実践する

10.予習挑戦型へ脱皮して潜在能力を開発する

11.作文能力向上を軸とする情報化推進

12.
咸臨丸
(かんりんまる)の冒険を成功させたブルック大尉

13.松平容保(まつだいら かたもり)と会津藩の悲劇



志村英盛 しむらひでもり
元・
経営アドバイザー

経営理念:価値観多様化、情報化、グローバル化、分業構造変化、
       高齢化、格差拡大、及び地球環境保全の時代における
       企業と個人の黒字経営実践に貢献する。

モットー:視野を広げる。
     視点を変えて観察する。
     立場を変えて考えてみる。

略歴:
55年−58年  横浜国大でマーケティング専攻。
58年 「現代企業経営における広告の地位」で学生広告論文電通賞を受賞。
58年〜77年 総合商社、経営コンサルティング会社に勤務。
77年 経営コンサルタントとして独立。
81年 パソコン表計算ソフトPIPSを使い始める。   
85年 ピップスワールド社より 『PIPSによる経営計画のシミュレーション』等出版。
03年 『不況に挑む黒字経営実践』を同友館より出版。
03年  ホームページ『志村英盛「黒字経営実践」』をオープン。

卸売業、製造業、サービス業、小売業の上場企業、中堅中小企業、
公益法人等約300社に黒字経営実践のためのアドバイスを行ってきた。

筆者は中堅中小企業の病気(赤字経営)を5つの視点で診断して
黒字経営実践のためのアドバイスを行ってきた。

@情報収集力とコミュニケーション力
Aマーケティング戦略とそれを支える技術力・生産管理力
B計数管理システムと財務体質
C人財構成と企業の組織風土
D経営者の経営理念と経営意欲
        の5つである。

人間の病気と同じく企業の病気(赤字経営)も複雑多様である。
この5視点で診断できない病気(赤字経営)も数多い。
病気(赤字経営)の程度もさまざまである。
しかし、先ずこの5視点で診断していくと、
企業の現在の健康状態が浮かびあがってくる。
病気(赤字経営)の原因もかなりの程度探りだせる。

浮かびあがった企業の健康状態と病気(赤字経営)の原因と対策に
ついての診断結果を経営診断報告書という文書にして報告し、
経営者と共通認識する。

そのうえで、顧客ニーズについて経営者やマネジャーと
更に話し合っていくと、病気
(赤字経営)を治す具体策が生まれる。

黒字経営実践のための
具体策を経営計画書という文書にする。
経営計画書の実践状況を毎月の経営会議で検討する。

これが黒字経営を実践するやり方の一つである。

以上