いいひとだったわねえ

ものすごい、大いなる「のろけ」をみなさんにも紹介しましょう。

以前にも取り上げました「宿替え」(やどがえ)からもってまいりました。
夫婦で引っ越しをするドタバタ話しで、枝雀師匠の十八番です。

ここに出てくるおやっさんは、なにをやっても失敗するおっちょこちょいで、 口から先に生まれてきたような人です。

引っ越し先の長屋にようやく着いて、おかみさんに、「ほうき」や「はたき」をかける 釘を打ってくれと頼まれます。

今までおかみさんに馬鹿にされてばかりいたおやっさんも、この頼みに、胸をはって応じます。

「結局、男の力がなければ、女はなにもできないのだ」とか・・・

道具箱からさっそく釘とトンカチを取り出して、

「見よ、男の勇士を」とか・・

好き勝手にしゃべりはじめます。

そして、釘を打ちながらしゃべり始めたのがすごい「のろけ」なのです。もしも、自分が先に死んでしまったら・・てなことを仮定して始めます(黙って釘くらい打てばいいのにね)

「夫婦とて、いずれは別れなければならないのです・・そうなれば、おまえは独りさみしく寝なければならないのです・・・
春、夏なぞはよいとして、秋の夜長にふと、目を覚まし、お布団の上にむっくりと起きあがって、ふと、わたしのことを思い出し・・・・

「いいひとだったわねえ」

と、おまえが思って、あまりのなつかしさに、お仏壇の中からわたしの位牌を取り出して、おまえの大きなお乳の間にぎゅーとはさんで、ぐっと抱いて寝てくれても・・・わいはもう、ええ気持ちやともなんとも思われへんのや、これ、女房・・・・」

いやはや、なんともごちそうさまでした


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