もんぜんにいちなす、しずのおのこ、おのこやおのこ

ついに落語のコトバも50題目になりました。

今回は、ある女性のコトバを取り上げましょう。
いえいえ、「カミナリのお松さん」ではないので、あしからず。

今回の女性は、「お松さん」とはじつに対照的な方です。なにしろ、京都の御公家さんに、奉公していたのです。

めちゃくちゃ言葉が丁寧で、なにを言っているのかわからない方であります。

そんな女性を嫁はんにもらってしまった、やもめ男の辰つぁんの、悲劇の物語であります。

ご存じ、「延陽伯」(えんようはく)からもってまいりました。
この話を詳しく知りたいかたは、9.「それはそれは、すたん、ぶびょうでございます、まあ、まあ」 を、お読みください。

大騒ぎの末、延陽伯さんが、辰つぁんの家に嫁入りしました。
相変わらずコトバが丁寧すぎて、意志の疎通がうまく行きませんが、なんとか一夜が過ぎました。(この一夜に関しては、みなさんのご想像におまかせしましょう)

さて、朝になって、延陽伯さんが起きてまいりました。
朝御飯の支度にかかります。しかし、お米の在処がわかりません。
そこで、寝ている辰つぁんにお米の在処を尋ねます。

「あーら、わがきみ、あーら、わがきみ、しらげのありかはいづくなりや?」

カミナリのお松訳「ちょっとあんたー、米はどこにあるねん!」

そして、なんとかご飯が炊けました。
こんどはお汁を作りますが、汁の実にするものがありません。
困った延陽伯さんが外をみると、ちょうど振り売りの八百屋さんが荷を下ろしているところでした。
そこで、彼女は外へつかつかつかと歩み出て、一言。

「もんぜんにいちなす、しずのおのこ、おのこやおのこ」

カミナリのお松訳「ちょっとそこのあんたー」

悲劇の最後は、振り売りの八百屋さんにまわってきたのでありました。


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