割れたんと違う、数がふえたんですがな

宿替え(引っ越し)したばかりの家で、猫が棚の上のほていさんの置物を倒して、下にあった水壺を割ってしまいます。

「かかえらいことした!壺が割れたがなー」

「宿替えそうそうゲンの悪いこと言うもんやおまへん!割れたんと違う、数がふえたんですがな

「壺算」(つぼざん)という落語から持ってまいりました。
確かに、引っ越しそうそう縁起でもない事件が起こってしまったのです。

そこで男は、買い物上手の徳さんと一緒に、瀬戸物町まで新しい水壺を買いに行くことにしました。

さて、この徳さんという人が、すごい人なんです。
変なインチキ演算を使って、6円の水壺を3円で買ってしまうのです。

では、その方法を解説しましょう。

瀬戸物屋についた徳さんは、まず、小さい壺を値切って買います。
3円50銭のものを3円に値切って買ったのです。

番頭さんの目の前に、3円を置いて(ここがポイント)、壺をかついで帰ります。
が…すぐに店に引き返します。

そしてこれを大きい水壺と取り替えてくれと言うのです。

ここから徳さんのインチキ話術が始まります。

まず始めに、大きな水壺の値段を番頭さんに聞きます。
値段は小さい方の2倍だということです。つまり6円。

次に徳さんは、今買った小さい水壺をいくらで引き取ってもらえるか聞きます。

番頭さんは、売った値段(つまり3円)で引き取ると、言います。

そこで徳さん、先ほど自分が小さい壺代として番頭の前に置いていった3円を指さし、
「えーほなら、さきに銭3円払うたな、で、この壺3円で引き取ってくれるんやな、ほなら合計6円でこの壺もろていんでええな?」

「えー、そういうことになりまんなあ」

「えらいじゃました、おおきはばかりさん」

大きな水壺をまんまと3円で手に入れた徳さんは、壺をかつぐなり逃げるように店を出ていきました。

さて、脳味噌がブラックホールのようになってしまった番頭さん。

瀬戸物町の路地に、番頭さんの悲しい声が響きます。

「すんまへん、ちょっとお戻りをー」




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