短歌 オレンヂ

 

 

有田 妙子(大阪)

立ち止り吾に見覚えありと言う散歩の犬としばし対話す

春の風すさびゆれあう花房の甘き香みちる藤の寺庭

病癒え安らぐ矢先の胸さわぎ気分あしきと細波たちぬ

あさかげに鶯の声透きとおるテラスにききし白湾の森(能登半島九十九湾)

 

 

 

 

 

稲垣 幹(大阪)

大和川越え安立町、細井川、回想おぼろちんちん電車

花好きのあなたに送る梅だより白梅三分紅梅七分

殿町に城番屋敷・同心町・時代劇めく松阪めぐり

太陽と小学生のコラボレーション市役所広場に千のひまわり

 

 

 

 

奥田まゆみ(大阪)

夫不在はじめのんびり日がたつとまだかまだかと待ち遠しかり

締め切りに間に合わないと出かけずに指をおりつつ短歌作る午後

大晦日ウィーンの街に花火舞うキスする人や踊り出す人

大役を終えし額に汗光る産声徐々にフォルテとなりて

 

 

  

 

 

北村 信子(大阪)

浴衣着て十銭にぎりまわりたる祭りの縁日かき氷の紅

寿命などわからないからいいんだよ如意宝珠より花びらこぼれる

ひこにゃんに賀状四千通わが家の嫁もひとりにふくまれている

石段を覆いて繁る赤松の山の頂わが産土の神

 

 

 

 

 

 

 紺田  強 (大阪)

反橋をのぼりて乙女消えてゆく白き衣のなびく残影

炊き上げし豌豆御飯に塩漬の桜ちらせば吉野の香り

夕暮の路肩に献花あるあたり黄の花もちて婦人留まる

降りたるは独りなりけり漁師まち電車の光去りて星影

 

 

 

 

 

 

菅原 幸作 (大阪)

泥水をすすりて咲くは蓮の花蛍の飛ぶは清流のみに

朝日浴び水面に映る桜花一際美しく和むひととき

寒空をねぐらに帰るか鳴くカラス寂しく聞こゆ冬の夕暮れ

ひさびさに寄りし日本庭園菊花展人ら賑わい香気ただよう

 

 

 

 

高畠 正子(大阪)

金星と繊月縦に並行の春宵に見る時の得がたし

吾の背に子供預けてチョコづくり嫁の愛情タイムの長し

窓枠をカンバスとして楽しみぬ雲の動きを一瞬止めて

秋風に萩の匂える寺訪いて野点の席にほっと和めり

落陽の紅の糸引く海面を小舟一隻影絵のように

 

 

 

 

 

西川幸枝 (大阪)

待ちかねて溢れる思いかみしめん腹帯巻きし娘(こ)をただ見つむ

七色のパンジー彩り咲き誇る小瓶に挿してそこかしこ春

散歩道顔を合わせばシッポ振り頭なづればすりよる犬あり

ほおずきの赤きが束を夫は手に里のみやげと玄関に立つ

 

 

 

 

 

 

 

 

錦見 澄子

胡蝶蘭のこる蕾も膨らみてその純白に心満たさる

ほろ苦き菜の花の味からし和え食卓にあり春は間近に

バス停の向いのビルの蕎麦屋さん何時終いしかそれぞれの秋

湯上りにスーパードライぐいと飲むひとりぽっちの気儘な自由

 

 

 

 

 

 

根津 繁子(大阪)

母によう似てきたりしと妹に言われ鏡のなかにふるさと映す

万華鏡廻せばひろがる幾何もよう錦の花になごむ雨の日

南蛮の衣装行列カラフルに昔の堺は華やかなりし

ひさびさに木琴叩けばディズニーのバンビ駈け来て子らの声する

 

 

 

 

 

 

 

 平井 明美(大阪)

秋の夜を日毎昇りし月もなく友逝かしめて星まで暗し

幹光る桜若木を植えられて瘤もつ桜はかなげに咲く

「寒がりです」言うのがやっと獣医師に手術託して犬を残し来

柿の蔕わざと落としてあざ笑う鴉のかちどき半音上がる

 

 

 

 

  

 

藤岡 恵子(大阪)

青田の上縦横無尽にひろがりて忍者のごとく風走りおり

アラジンの顔現れそうなタジン鍋冬の野菜の不思議な甘さ

雨垂れも犬のいびきもいや高しそぼ降る午後の独り居さむし

朝風に揺れるゴーヤの葉の影が蝶とぶごとく磨硝子に浮く

 

 

 

 

 

堀内 房子(大阪)

老いざまをそのまま写す三面鏡つくり笑いもみすかされおり

老年の入口かくせよ春がすみ近づく音に聞き耳たてる

諦めとさびしさのはざま楽しさの湧きて近づくわたしの古希は

新聞では老女と書かれる歳なるが白い刺繍の半衿つける

やわらかき唇ゆえに罪ふかし血管のうくわが手みつめる

 

 

 

 

 

 

松坂 浩子(大阪)

宍道湖に沈む夕日は見えなくて島根の自慢確認出来ず

遭遇す光の不思議丸い虹太陽真中に小さな輪なり

限りなく黒に近い政治家は私は潔白けっぱくと言う

ありがたきと啄木詠んだ山見えず時雨にけむる盛岡の町

 

 

 

 

 

三橋 竹一(大阪)

肌を刺す朝の冷気の気持ち良さとぼとぼ乍も寄り添う妻と

飛び跳ねて春の訪れ知らす鯉色づく野山に人や車も

山くずれ政権交代実現す打ち出す諸策の反応如何に

手を尽くし拡がり防げあとしばし国をも滅ぼすインフルエンザ

 

 

 

 

 

 

村長 房枝(大阪)

砂浜に孫と書初め琵琶湖畔寄せくる波が消してもち去る

緑葉のゴーヤカーテンいやされて和みも過ぎし根に手を添える 

窓辺より万葉の杜灯に明し明日の歌会思いめぐらす

夕立にせわしく立ちて干し物の何時(いつ)もにましてもぎとる我れは

 

 

 

安田 勝子(大阪)

諸手あげ「ちゃん」で迎える友垣の点呼始まる霧深き宿

平城の遷都を祝う冬花火ゼロゼロの大輪かかぐ千古に

目に近き通過の電車は見送ろう急ぐな転ぶな師走も半ば

浜風に窓の風鈴さえわたり夜具にさしこむ月明りかな

 

 

 

 

 

 

   山縣 哲子 (大阪)

少女期は昭和三十年代なりき「三丁目の夕日」夢がたっぷり

リビングにいつしか飾り台となるスタンドピアノ音たててみる

雲のない今宵は澄んでブルームーン山の狸が寝返り打たん

妹よ農家の手伝い辛かろう日日の草抜き食い繋ぐため

 

 

 

 

  

   山崎 悦子(大阪)

空を飛ぶ心地良い夢見た朝は翼広げてはばたいてみる

花吹雪グリーンの上は一面の花びら模様パター止めて観る

オレンジのドレスをまといて踊る女(ひと)いつまでも見ていたいそのステップ

遠くから眺めるさくら心地良く近くに寄ればあれこれ惑う

流し台の奥からひょっこり蛸焼器まあるく丸く作る幸せ

 

 

 

  

 

山地 澄子(大阪)

健康に過ごさせ給えうからの名つぎつぎ告(の)りて神社に詣づ

物識りの友は我より七つ上逝きては聞けぬ世事のさまざま

「また来い」の声をバックに黙黙と砂を袋に球児は去りぬ

お別れ」ネ歌の文句を偲ばせて友は遥けき息子のもとに

 

 Essei-

 

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