-->-->-->

山崎雪子先生の歌

 

ー歌集「春」よりー

堀内 房子 抄出

 

ほのほなす心のうらのうらづけの白き虚無ゆゑほのほやさしき

愛情が言葉となりてながるれば美しすぎて嘆くばかりぞ

人の胸に落ちるわが影わが思ひ時間の翳り空の日のかげ

刀もちて水は断ち得ず淋しさよ流る月日にまつはるこころ

夢すべてわが身の糧(かて)に逃ぐるとも目にしみて来る青き山かな

心とけて石にもたれてしばらくはあとさき知らぬ風に抱(いだ)かれ

着物をば脱ぎかけて坐り感情のせきあぐるかも今日も日暮れに

風景は昔ながらに光るなりうつろとも言へて我は立つのみ

夜霧たち部屋濃やかにふけゆくに手馴れの道具たゞ淋しくて

愛といへ生命とも言へ湧くものにひきづられつつあてなく空に

 

 

戻る