日本人のきれい好きの功罪についての話。
 
 
清潔は病気だ!!
清潔日本に警鐘を鳴らす  特別講演会
 
日時 2002年6月3日(月) 19:00〜20:30
 
場所 倶知安町文化福祉センター 中ホール
 
講演内容 
 清潔は病気だ!! きれい社会の落とし穴
       アトピーからO−157まで
 
講師 
東京医科歯科大学教授 藤田 紘一郎 寄生虫博士
 1939年生。「寄生虫体内のアレルゲンの発見」「ATLウイルスの
伝染経路の発見」等、多くの業績をあげる。著書「笑うカイチュウ」
「空飛ぶ寄生虫」「体にいい寄生虫」「原始人健康学」等好評を博す。
 
 
 インドネシア カリマンタン島。ここには花粉症・アトピー性皮膚炎
などのアレルギー病の子供は1人もいない。
 家はぼろぼろで外が見え、便所は河川に直結で川面が見え、排泄物を
狙っている魚と目があったりする。便所の下流では水浴び・洗濯・歯磨
きが行われている。川の水を顕微鏡で見てみると、大腸菌等がびっしり
である。
 でも、ここの人たちは、ここの水を飲んでも病気にはならない。
回虫に感染してはいるが、肌は艶々して、先進国と呼ばれる衛生状態
がいい日本人より健康そうである。
 
 アレルギー病とは、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症など
IgE抗体が関与する疾患群を言います。1970年以降、日本では
このアレルギー疾患が異常な勢いで増えてきました。たとえば、10
歳以下の子供では約40%がアトピー性皮膚炎ですし、日本人の5人
に1人は花粉症にかかるようになりました。
 しかし、これらの病気は30年前の日本にはほとんどなかった病気
なのです。アレルギー病が急増した原因として、多くの自動車排気ガ
スの急激な増加や農薬や添加物が混入した食物など、いろいろな環境
因子をあげています。1970年代と比べ、現在、大気汚染の規制が
強化され、環境状況が改善されたにもかかわらずアレルギー病が減少
しないのはなぜでしょうか。
 日本人にも昔は寄生虫と共生してきました。30年前は日本人の寄
生虫感染率は60%以上ありましたが、この30年でほとんどゼロに
なりました。有史以前から続いてきた寄生虫との共生を断ち切ってし
まった。
 
 その結果、何が起こったか。
花粉症やアトピー、気管支喘息などのアレルギー病で苦しむという
思いがけない結果が出てきたのだ。
 
 
 ちなみに、私はアレルギー病の特効薬の特許を取得しています。
その物質は、回虫の排泄物に含まれている成分です。
 これを投与すると、一発でアレルギーは改善されますので、特許
をとって億万長者になれるとほくそ笑んでいたのですが、副作用と
して免疫力が極端に下がり、ガンになるということが判明したため
未だに億万長者にはなれないでいます。これが1原因に対して1物
質で対処するという思想の西洋医学の限界ってやつです。
腹の中で寄生虫を飼えばそんなことにはなりません。
私は現在、サナダムシを飼っています。名前はキヨミと付けてみま
した。
 丸山ワクチンもガンに対して効果があるんですが、ガンを抑制する
物質が何なのか特定されないので認可されません。
西洋医学の思想だけでは、人は直せないんじゃないでしょうか。
 
 仏教には、「山川草木国土悉皆成仏」という自然観があります。
「この世の中には、きれいなものでも汚いものでも意味があって存在
する」ということです。
 近代科学は、その自然観を捨て人間中心の考えに傾倒しました。
「汚いもの・悪いもの」として寄生虫や腸内細菌などを「排除」して
きました。
 結果、花粉症やアトピー性皮膚炎などの免疫系の異常によると思わ
れる病気が多発し、病原性大腸菌O−157や狂牛病、薬剤耐性菌な
どの新しい病原体の出現を招いてしまいました。
 O−157は発展途上国には存在できません。毒素を作るのには
大変なエネルギーが必要なため、そちらにエネルギーを使うため、
ふつうの大腸菌より繁殖力が弱いため、雑菌がたくさんいるところ
では負けてしまうからです。無菌状態にちかい清潔なところでしか
生きていけないのです。
 
 私は以前から、アレルギー病は現代文明人がウイルス、細菌や回虫
を始めとする寄生虫などいろいろな微生物を人の体内から一方的に
駆逐したことが最大の原因だと主張してきました。
医学界・マスコミも目を向けてくれませんでしたが。
 しかし、その後の研究でそれらの微生物が人のアレルギー反応を
押さえていることが解ってきました。
 
 皮膚には、表在ブドウ球菌をはじめとする皮膚常在菌がたくさん存在
する。この常在菌は外部から体内に進入しようとする病原菌を排除して
いる。また病原菌ばかりでなくダニ抗原などの異物の進入も押さえてい
る。
 腸にいる細菌は、100種類100兆個といわれている。善玉菌と言
われているビフィズス菌、乳酸桿菌、腸球菌(乳酸菌群)と、悪玉菌と
呼ばれる大腸菌やクリストリジウムなどである。
 善玉菌・悪玉菌といっても、それはあくまで便宜上分けたもので、
宿主である人がしっかりしていれば、悪玉菌といわれる大腸菌も消化を
助けたり、ビタミンを合成したり結構人によいこともしているのである。
 また、女性の膣にはデーデルライン乳酸菌がいて、酸性に保ってくれ、
雑菌が入って膣炎になるのを防いでくれている。
 私たちの身のまわりには、皮膚常在菌や腸内細菌、女性の膣にはデー
デルライン乳酸菌という「共生菌」がいて私たちを守ってくれている
のです。
 これらの常在菌を現代人は排除し続けています。私たちの周りには
今、殺菌・抗菌剤ばかりである。家電、家庭雑貨、文具、合成繊維製品
に至るまで「抗菌グッズ」のオンパレードである。洗濯の際には漂白剤
を使い、子供がウンチでも漏らせばすぐクレゾールで消毒する。風邪を
引けば、抗生剤を多用する。
 抗菌グッズの繊維を着用することによって皮膚の「常在菌」が弱ると
人は「顆粒球」という防御細胞を繰り出し「共生菌」の排除に取りかか
る。弱った常在菌は、もはや共生菌ではなくなるからだ。
 顆粒球はさかんに「活性酸素」を出し常在菌の殺戮に向かう。それが
皮膚化膿症になる。
 常在菌を失った外部からの病原体に必ずやられるようになる。ダニな
どの抗原が体内に入りやすくなってアトピー性皮膚炎が起こりやすくな
る。
 見た目は気持ち悪い生き物として嫌われてきた寄生虫でさえも花粉症
やアトピー性皮膚炎などの発症を抑えていた「共生虫」だったのです。
 殺菌・抗菌剤の乱用は、より強力な細菌を生み出します。
 
 超清潔志向の行き過ぎで、回虫はもちろん、身のまわりの「共生菌」
まで排除しているのが今の状況です。
 私はこのような日本人の「超清潔志向」が日本人のアレルギー疾患
の多発という現象を引き起こしてきたものと考えています。
 そればかりではありません。共生菌の排除が新しい感染症、病原性
大腸菌O−157を生み、薬剤耐性の病院内感染菌の発生を促したの
です。
 そしてこの「共生菌の排除」はいつの間にか「異物」排除につなが
ったものと思われます。
 このような傾向は、もはや人間が「生物」として生きる基盤さえ奪
い、人の精神面にも影響を及ぼし、日本人の「感性や情熱の衰弱」ま
でも引き起こしているのではないでしょうか。
 第二次世界大戦後の衛生管理が行き過ぎ、日本中を無菌状態にして
しまったため、生物としてのパワーが衰え、日本人は抵抗力を失って
きたのではないでしょうか。
 「抗菌グッズ」の多用は、中長期的に事態をますます悪化させる原
因になるでしょう。
 
 免疫とは、異物を認識し排除するための機構ではなく、ほかの微生
物との共生をいかにスムーズするか、そのための機構なのではないで
しょうか。
 人は「無菌の国」では生きられません。
生物は元々寄り合い所帯なのです。細胞内にあるミトコンドリアは
かつては細菌として独立して生活していましたが、いつの頃からか
動物細胞内で共生生活をして一つの細胞として機能しています。
寄生虫、ウイルス、細菌を含めたすべての生物と共生することで、
本当の「健康」は得られるのではないでしょうか。
 
 寄生虫や腸内細菌など「汚いもの」を排除する。
この清潔衝動が社会を突き動かすと危険です。ナチスの「人種掃除」
や、ギャングをのさばらせたアメリカの禁酒法の制定とまでは行か
なくても、うわべだけの綺麗さの裏に「汚物」が積もってゆくこと
になります。
 
 地球上のすべてがつながり合いながら、与え、与えられて生きて
いる。生物界の多様性を必然として受け入れる考え方が求められて
いる。