ベルギー訪問記(1997年夏)

 「フランダースの犬」の足跡を追って、1997年夏、短い滞在ながらベルギーはアントワープを訪れてきました。


 アニメの中でもよく登場し、ネロくんがアントワープに行くたびに訪れて、マリアさまにお祈りをしていた、アントワープのノートルダム大聖堂です。
 普通、このようなゴシック建築は正面の左右に尖塔があるのが普通ですが、この大聖堂は左側の尖塔しかありません。設計上は左右に尖塔があったのですが、宗教改革運動などにより、建設資金が不足したりして、結局右側の尖塔は完成しないままになってしまいました。ですから、右側の尖塔のところにある、黒い屋根は、本来は完成するまでの仮の屋根だったはずなのです。
 未完成ながら、左の尖塔の繊細な美しさゆえ、不思議とこれで調和した美しさがあります。

 余談ながら、「フランダースの犬」の物語はベルギーではほとんど知られていません。いくつか理由があるようです。アニメ化に当たって、原作よりもネロ少年を幼く見せたということなどもあって、日本ではアニメが大ヒットしました。しかしながら、原作ではもう少しネロ少年は年上だということもあり、あれくらいの年の少年なら、自分で自分のことはちゃんとやるべきだというのが通常の倫理観のようです。ですから、アニメの中で村人達がネロ少年に冷たかったのは、決して「いじめ」的なものなのではなく、あの年齢の少年に対しては、真っ当な反応のようです。

 しかしながら、アニメに感動した日本人観光客が次から次からアントワープに押し寄せてくることもあって、アントワープ観光局も、いったい何故かと考え、日本でこの物語がそれほど愛されていることを知り、大聖堂入口付近に小さな日本語の文字の入ったオブジェを置いたり、観光案内所に日本語で「アントワープ観光局」と大きく書くなど、いろいろ努力をしてくださっているのが有り難いです。




 ネロくんがラストで亡くなったのは、このルーベンスの「キリスト昇架」の前でした。アニメ版とちょうど同じく、正面祭壇の右側にあります。
 夏の、それもベルギーにしては珍しくかなり暑い日だったこと、観光シーズンで、聖堂内にはたくさんの人がいて、結構ガヤガヤと人の声がしていたことなど、位置関係は同じでも雰囲気が随分異なり、とてもじゃないですが、静かに犬と凍死できそうな雰囲気ではありませんでした。