続東洋医学大研究1 「気功で「がん」が消えた!」(サンデー毎日 97年9月28日号、10月5日号、10月12日号)

(97.11.9)

再び、サンデー毎日が気功の特集をしています。前回の特集に関して私は、批判的な意見を述べましたが、今回の特集はどうでしょうか?

今回の特集では、「気功の効果を「証明する」実験データが示された。」と報告しています。 はたして、信用に足りうるものでしょうか?検証してみましょう。

まずはじめに、この特集ではご多分に漏れず、「癌が気功で消えた」という実例を示しています。 しかしながら、この手法はいわゆる健康食品の広告と同様、体験談のみではその効果を証明したことにはなりません。気功が効いたのかもしれないし、実は他の因子が関係していたのかもしれないからです。確かに多くの科学者はこういった事実の積み重ねからヒントを得て、仮説をたてるものですが、この時点ではあくまでも仮説にすぎません。このような記事は、確かに一般の人達にはインパクトがあるものの、実際には単に先入観を植え付けるだけです。

そして、前回の特集で、気功には「否定しきれない「効果」があることは、批判的な医師の検証を通じても明らかになった。」として、気功の効果を全く疑ってはいません。しかし、以前に指摘したとおり、気功の効果が「プラシーボ効果」を凌駕しているか否かについては、全く検証されていないのです。残念ながら、前回登場した「批判的な医師」はこのことについて言及していません。

しかしながら、「気功治療に張られた「非科学的」とのレッテルをはがすには、客観的な科学の手法でアプローチするほかはない。」ということで、今回の特集では基礎研究のデータを示しています。実は、科学的に気功の医学的な効果を証明するには、こんなまどろっこしい基礎研究をしなくても、患者を集め、二重盲検法により検証すれば十分なのです。(確かに今の日本で二重盲検法を行うのはそうたやすくはありませんが。)

確かにこの実験結果からは、気功が何らかの作用を有するようにも見えます。しかし、以下の理由によりこの結果だけからでは、気功の効果を証明するに充分ではありません。
1)これは、学会にて発表されただけであり、きちんとした論文となっていない。学会での発表のみでは、材料、その方法論、結果の解釈などの一つ一つのステップを他の研究者が充分検証することができない。多くの学術会議でみられることだが、学会発表まではこぎ着けてもいざ学会雑誌に掲載されるまでにいたらぬ研究は山ほどあり、そこまで到達しなければ十分評価された研究とはいえない。
2)方法論について言及すれば、まず例数が少なすぎる。わずか3例の検体についての結果から一般化するには無理がある。
3)追試験がなされていない。科学的であるためには、同じ方法論によって他の研究者が実験し、まったく同じ結果が得られる必要がある。それで初めてその研究の評価が確定していくものである。著名な科学雑誌に掲載された論文でも、結局追試験で同様の結果が得られず、葬り去られた研究もある。

次の号では、「医師も驚く「回復データ」」と題していくつかの実例を示した後に、実際に気功を取り入れている医療機関を取材しています。3ページの記事の1ページ半を体験談にさいたあとに、透析患者の閉塞性動脈硬化症に対する気功の効果について取材しています。気功により血行が改善したと報告しています。しかし、血行の改善は自律神経と密接に関連しており、バイオフィードバックによる自律神経作用を介して血行が改善する可能性もあります。必ずしも気功を持ち出さないでもすむような気がします。実際、バイオフィードバック法でも手におえない腎臓病を気功で治すことについては「言葉を濁さざるを得ない。」と効果は否定的であることを認めています。「最近は教授が自ら気功術を体得し、直接患者に施術している。」などという記述をみると、私は群馬大学で行われた気功の実験の際の偽気功師を連想してしまいます。 (FAQの項目参照)

次に、気功による線維芽細胞の増殖スピード促進効果やマウスの癌抑制効果を取材しています。先に述べたように1)、2)、3)の理由により、これらの研究は十分とはいえません。個人的にいえば、マウスの癌抑制効果の実験はより直接的な証明であり、他の実験結果を大々的に取り上げるより、この研究の詳細を写真入りで報告した方がよほど説得力があるのではないかと思うのですが。
第一回の記事での基礎実験の報告が1ページを割いており、線維芽細胞の実験も2段にわたって書かれているのに、この実験についてはわずか17行ですまされています。私には不思議な気がします。

さらに内気功の効果について述べていますが、私が他の所(FAQ)で指摘しているとおり、外気功と内気功は区別して考えるべきです。

最後にある専門家のコメントを載せています。「気功でがんが完全に消えたとなるとウソになりますが、気持ちを楽に持ったり、温泉に入ってくつろぐことでもがん細胞を多少なりとも壊せるものなのです。気功ががんに効くというのは、気功を受けたという精神的なものが作用して、免疫機能が上がることから起きる現象でしょう。」

おいおい、この特集はウソだったのかい。といいたくなってしまいますね。このコメントは、まさに気功はプラシーボ効果に近いということをいっているのです。

さて、3回目の記事ではどうでしょうか? いきなり、遠藤周作氏の体験を掲載しています。健康食品、民間療法、エステ、これらの宣伝の常套手段として、有名人を引き合いに出すという方法があります。サンデー毎日おまえもか。と思わずいいたくなります。
そして、その後に科学技術庁放射線医学総合研究所での研究について取材しています。これは国際生命情報科学会の第1回シンポジウムで発表された実験です。マンションの2階と5階にそれぞれ、気功師とその弟子がおり、気功師が「遠当て」を行うものです。「遠当て」とは、離れたところから手も触れずに相手を投げ飛ばすことです。「気」を発したタイミングと弟子が投げ飛ばされた時間とを計測するものですが、メディカル朝日1996年6月号では、弟子の飛ばされた方向が気功の発せられた方向と違っていたり、実験方法が複雑になりすぎ、確率の計算が難しくなってしまったりする問題点が指摘されています。この実験結果についての解釈については慎重である必要があるのです。

メディカル朝日の記事では、日本で行われている気功の実験に関して、プラシーボ効果などの心理効果を除くため、被検者間の情報の遮断やターゲットのランダマイズなどを取り入れた実験が少なく、研究の質の低さを問題点としてあげています。 したがって、今回取り上げられた実験だけでは、まだまだ科学的に気功が裏付けられたとはいえないようです。

サンデー毎日では、その他、気功遠赤外線説、気功共鳴説などが述べられていますが、これらはあくまでも仮説であり、この仮説からではとても癌が消えるとは実証できそうにありません。

この気功の記事と同じページに「植物配糖体国際学術討論会」の記事が載っています。植物配糖体と気功とは全く関係ありません。しかし、「気功発祥の地、中国では・・・・」とか、「それは気功の「現実」と通じる。」などの記述があり、気功の実験と、この学会での実験報告とを混同させるような取り上げ方は好ましくありません。

私は、はなから気功の効果について否定するものではありません。しかし、こういった雑誌の記事は読者の注目を引くためにセンセーショナルな取り上げ方をし、実際に病気に悩む人たちを混乱させてしまいます。残念ながら、この記事は充分科学的ではありません。本当にがんに気功が効くかどうか、その原理はどうであれ、二重盲検法にて証明するしかないのです。つまり、協力してくれる患者さんを集め、2つの群に分けて、本当の気功師が気功をあてた場合と偽の気功師が気功をあてた場合との治癒率を比較することのより、気功の効果を判定すべきなのです。  

[ 「最近の記事」へもどる ]