(97.8.26)
8月にサンデー毎日で、気功に関する記事がのりました。
「火気功」は「外気功」の一つだそうですが、根本的には一般的な外気功と
そう違いはなさそうです。雑誌特集のご多分に漏れず、まずは気功の効いた例を
取材しています。それによれば、火気功は、糖尿病、心臓病、癌や盲目、難聴、
リウマチなどに効くのだそうです。そこで、記者のいる前で何人かの病人の
治療を行い、2回目の特集でそれを医学者の中原氏に検証してもらい、最後に
その気功の謎について迫るというものでした。
治療の対象となったものは、
1)リウマチによる関節痛、膝の関節の変形、
2)交通事故後の腰痛、
3)足のむくみ、
4)片頭痛、
5)難聴、
6)未熟児網膜症、
7)先天性白内障、
8)脳塞栓による右半身不全麻痺、でした。
さて、各々の病気に対する「火気功」の効果はどうであったかというと、
1)膝の痛みという自覚症状が改善したが、関節の変形はかわらず。
2)足のしびれは軽くなったというもの、肝腎の腰痛はそのまま。
3)足がよくなったということはない。
4)あまり変わりなし。
5)自覚的な聴覚の改善はあったが、前後にて聴力検査をしていない。
6)目が見えるようになったわけではないが、感じられる空間が広がったよう。
7)弱視は改善せず。
8)歩行の改善がみられたが、右手の症状は変化なし。
と記載されています。
自覚的な症状は一部改善したようにみえたものも、客観的な変化は全く見られず、
私にいわせれば、これらの効果は「プラシーボ効果」の域を出ないものです。
にもかかわらず、「火気功は、糖尿病、心臓病、癌や盲目、難聴、リウマチなどに
効く」などと判断してしまうのは、大きな間違いです。
記事の中で、中原氏が「気功治療は単なる「仮説」にすぎない。」と発言しているにもかかわらず、そのすぐあとで、「現在は西洋医学だけでなく、気功や漢方薬など
「東洋医学」の手法を取り入れた医療機関が増えているのも確かだ。」と「気功」
の問題を「東洋医学」の問題にまで範囲を広げてまで、肯定的にとらえようとしています。
しかも、「効く人がいる一方で、効かない人がいる-それは一般に西洋医学でも
同じことである。」などと居直っています。
しかし、現代の西洋医学では、どのような場合に効いてどのような場合に効かない
か、効果のみられる確率はどれ位か、それぞれ統計学的に検証する方法が確立して
います。
私は、西洋医学が万能であるとはいいませんが、このように客観的な評価基準に
基づいている西洋医学と、「プラシーボ効果」以上の効果もあるかどうかもはっきり
しない気功とを一緒にすることは、大きな誤りであると思います。
そして、この特集は第3回の「気功」の謎に迫るわけです。
その中でも「気」ついての定義ですら取材する人により微妙に異なり、何だか煙にまかれているようです。しかも、
中国での気功師の「気」による大腸菌の殺菌作用についての研究について取り上げ
ながら、そのあとで他の気功の研究者にそのデータは客観性、再現性では弱いと言われてしまっています。
最後に、気功を取り入れている医療現場の取材をしていますが、そこの医師は、
「統計的に数字を出すのは無理です。」といいながら、「個々の症例を見ていくと、
手術をしてがんが再発する比率は低いし、再発しても延命効果がある。」などと
発言しています。再発率が低いとか、延命効果があるとかいう評価は、他と比較して
初めて言えることであって、統計的に評価できないのであればこのようなことは
言ってはいけないと思うのですが。
確かに、医師は、それが科学的に評価されない治療法であっても、プラシーボ効果であっても、従来の治療の妨げとならず、
しかも患者に好影響があれば採用する傾向があります。それが金になればなお
さらです。従って、医師がその治療法を採用しているからといって、必ずしもそ
の治療法が客観的に効果的であると評価しているわけではないのです。
最近のマスコミは、科学万能主義に対する批判や、神秘的なものに対する興味など
の世間の風潮に同調して、東洋医学に対し、好意的な書き方が多いようです。
しかし、病気が直るか直らないかは、明らかに客観的に評価できる問題であり、
東洋医学であろうと、西洋医学と同じ土俵で評価することが重要です。
ちゃんと医師のもとにかかればよくなるであろう患者さんが、世間の風潮に
乗せられて、西洋医学を嫌い、気功などに走ったがために手遅れになる、
などということがないように望むばかりです。
[ 「最近の記事」へもどる ]