インチキ医師のリンパ球療法(朝日新聞98年10月15日付、その他朝日新聞、毎日新聞、読売新聞のインターネットサイトより)
東京都内の診療所で、医師の資格のない職員らが大学生から採血し、この血液から抽出したリンパ球液をがん患者などに投与していたとして、診療所「竜岡門クリニック」を医師法違反容疑(無免許医業)で摘発し、クリニックを経営する医療研究会社「シービーエス(CBS)研究所」社長と看護婦や事務員らが逮捕されました。入手した血液はC型肝炎などの検査を十分していなかったとみられ、2次感染や免疫疾患のおそれも心配されています。
同研究所は同診療所を開設し、若い人の血液からリンパ球を分離した輸液を投与すれば免疫力が高まるとして、末期がん患者らを治療しており、研究所の社長自らが著書で「がんに有効」などとPRしていました。クリニックでは、都内の学生らのべ100人以上から血液を採取し、抽出したリンパ球をパック詰めにし、末期がん患者ら来院者に投与していたほか、希望者には販売もしていたといいます。全国の複数の病院でも患者に投与されていたとみられ、投与された患者数は約500人にのぼるといわれています。また、逮捕された「シービーエス(CBS)研究所」社長が、患者の希望でリンパ球を取り寄せた医師に、「副作用は一切ない」と説明する文書を配布していたことが、十五日明らかになりました。
この事件は、「医師の資格のないものが癌患者を治療した」というだけでなく、多くの問題を含んだ事件であると思います。私の考えた問題点を上げてみましょう。
- 医学的知識のないものが、新しい治療法であるとふれこんで治療をした。・・・わらをもすがる癌患者をだますことは非常にあくどい手法です。採血した血液の検査が不十分であることから分かるように、彼らの医学的知識はたかがしれています。(輸血の危険性を知りながら、コスト削減のために検査を省略したならば、もっと悪質ですが。)いい加減な医学的知識に基づいた根拠のない仮説をもとに治療法を考えだし、それを患者に適用することは大きな問題です。このことは、十分な医学的常識に基づかない民間療法を考えつく医師に対しても言えることです。
- 自ら本を書いてそれを宣伝に利用した。・・・マスコミを宣伝に利用することは、民間療法のよくやる手法です。本を書いて出すことは、何ら専門家の批判も得ずにできることです。本屋に行くと多くの民間療法に関する本が並んでいます。中にはまともなものもありますが、このようにいい加減な本も多いので、批判的に読むことが必要です。
- このクリニック関係者以外に、このリンパ球を取り寄せ、患者に投与した医師がいた。・・・リンパ球を投与することは輸血と同等です。それに伴う多くの危険性より、投与することによる効果の方が勝ると判断されて初めて使用されるものです。リンパ球療法の効果も不明でありながら、その効果を十分検証せずに「副作用はいっさい無い」という説明を鵜呑みにして、投与してしまった医師に責任は無いとは言えません。
- このような何の裏付けもない治療法が、多くの患者に受け入れられた。わらをもすがる患者や家族の気持ち、情報を十分に検証することができないこと、これらのことが、彼らをのさばらせる原因となりました。私たちはもっと賢くなる必要があります。
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