”健康教祖”みのもんたにブーイング(週刊文春98年12月3日号)(99.1.15)
”みのもんた「ゴーマニズム教祖」は二重人格か”(女性自身99年1月19日号)(99.1.15)




「赤ワインやココアの大ブームを巻き起こした人気番組『おもいっきりテレビ』。司会のみのもんた氏は、言葉巧みに主婦の恐怖心を煽ると、特定の商品が健康にいいと説く。だが、ちょっと待った。専門家の間からは、その手法に疑問を呈する声が聞こえてくるのだ。」という書き出しで、週刊文春の記事は「思いっきりテレビ」で放映されている内容について検証しています。私は週刊文春の記者の方から取材を受け、この番組を見てコメントしました。その後女性自身からも同様の取材を受け、同じ様なコメントを述べました。両者の記事の中では私のコメントが紹介されていますが、もう一度この記事で取り上げた11月3日放映の「チョコレート、ココア特集」について私なりに分析してみました。(女性自身では私の意見が詳細に取り上げてもらえましたので、かなりの部分オーバーラップがあります。)

問題点1;基礎実験、動物実験の結果と人間における場合を混同している。

この番組の中で示されたデータは全部基礎実験、動物実験の結果です。これらの実験がたとえ事実であるとしても、その結果をそのまま人に当てはめることができないことは、医学の世界では常識です。この時点ではあくまでも仮説であり、これらのことが人でも当てはまることを証明するためには疫学調査や臨床実験などが必要なのです。

問題点2;研究結果の解釈、評価をみのもんた氏がしてしまっている。

これが大きな誤りの根本であると考えます。確かに、この番組には専門家の某教授がおり、一つ一つの実験の解説をしていますが、彼はただ実験の目的や方法、結果を説明しただけでした。問題点1が生じた原因は、科学や医学について素人であるみの氏が、それらの結果をあたかも人間でもそのまま当てはまると解釈し、大げさな身振り手振りで断定口調で解説してしまっていることにあります。

問題点3;都合のよい結果を引き出すために都合のよいデータを持ち出している。

たとえば番組の中では、チョコレートに含まれるカカオバターのLDLコレステロール量をバター、牛脂と比較してその量の少なさを強調しています。しかし、考えてもみて下さい。あなたは、チョコレートを食べるように、バターのみ、牛脂のみを食べることはないでしょう?この3者のLDLコレステロール量を比較すること自体ナンセンスなのです。しかも、番組内で提示されたグラフはそのスケールを差が大きく出るようにとってあります。スタッフはチョコレートのコレステロール量が少ないことを強調したいがために、このデータを見つけてきたのではないでしょうか?チョコレートだって、毎日食べていれば血液中のコレステロールが上昇することは十分考えられます。

問題点4;一つの食物だけをとり続けることによる弊害について言及していない。

たとえ健康によいといわれる食物であっても、そればかりを食べていればやはり健康によいわけはありません。番組の中でみの氏はチョコレートを食べることで太らないと発言しています。しかし、番組によればチョコレート50gは193kcalですので、これを毎日食べれば、 月に5790kcal余分に摂取することとなります。約7000kcalで約1kg体重が増加するといわれていますので、チョコレートをこれだけ毎日摂取することで、月に0.8kg体重が増加することになります。

このことは特に糖尿病患者にとって大きな問題となります。糖尿病の患者さんにとって、1日の食事量が1200kcalであるか1400kcalであるかは大きな違いです。チョコレートが砂糖を含むことを考えれば、これを毎日食べることで血糖が悪化してしまうことが十分考えられます(砂糖摂取は血糖をあげやすい。)。また、体重の増加を恐れ、チョコレートを食べる分、ご飯を減らせば、ご飯の炭水化物や蛋白質が砂糖と脂質にとって変わられてしまうことから、栄養上問題になると思われます。
このように、この番組の内容にはいろいろ問題があるようです。最近は多くの人たちが健康、特に病気の予防について関心を持つようになりました。それに便乗して誤った知識を植え付けることは大変問題であると考えます。

女性自身ではさらにみのもんた氏の人格にまで言及し、問題を指摘しています。雑誌の性格上やむを得ないのかもしれませんが、私個人としてはそこまで言わなくても、と思います。確かにみの氏の語り口、考え方の問題もありますが、彼のような断定的な意見を求める社会的な風潮、健康問題を簡単に解決してしまおうという一般の人々の考え、それに便乗する番組の作り方、スポンサーの姿勢など、問題は多岐にわたるのではないかと思います。

最後に女性自身の記事にはみの氏へのインタビューが掲載されていますが、それに対する反論を述べておきます。(太字が彼の発言の一部です。)

「医者の推奨するものであり、きちんとしたデータがあるものをテーマにしている。」 私が述べているのはデータのあるなしではありません。データの扱いが不適切であると言っているのです。どんな食材でも詳しく調べれば、何らかの長所もあり、短所もあります。あなたは全部のシリーズをみれば、「なあんだ。どんなものを食べても健康にいいんだ。」と感じるに違いありません。ことさら長所のみを強調し、短所を隠してしまう方法は、一般受けはしても、マスメディアの姿勢としては感心できるものではありません。

「医者同士でもいろいろ派閥があり、全員が同じ理論でもないでしょう。」 確かに理論はいろいろあるでしょう。しかし、あるデータから導き出される結論は一つなのです。彼には、仮説、理論、実験結果、これらの違いが理解できていません。派閥とかは全く関係ありません。

「僕のトークはキャラクター。」 健康番組と自負している以上、情報は正確に伝えなければなりません。単なるキャラクターで情報をゆがめていいはずがありません。

「自分で必ず試してみて、これはいいと思えたら「これが最高!」といえる。」 これは私が健康食品や民間療法で指摘している問題点です。みの氏にとってよかったとしても、他の人に必ずしもよいとは言えないのが医学の世界です。こんな判断基準ではせっかくデータに基づいていると言ってもだいなしです。

 
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