「温泉でがんが治った」生還証言が続々!(週刊ポスト2000年11月10日号)(00.12.28)


これは、小学館が出したあるがんに効くという温泉を紹介した本を宣伝するような記事です。(週刊ポストも小学館発行です。)この記事では温泉に入ったり、温泉を飲んだりしてがんが改善した4人の患者さんを紹介しています。
記事の中では、「残念ながら、現在、温泉の効力とがんとの因果関係は、医学的には認められていない。」と述べ、医師のコメントを引用していますが、やはり「温泉はがんに効く」といいたそうです。「やはり温泉水そのものが、がんに何らかの作用を及ぼしているように思える。」と書いています。そしてある理学博士のコメントを紹介しています。しかし、彼のコメントは私にとって???です。たとえば、「がんが治ったとされる温泉水の多くは、細胞をがん化させる原因ともなる活性酸素を殺す抗酸化酵素(SOD)の活性が強いんです。」と述べています。しかし、活性酸素はがんを発症させるひとつの因子にはなりえても、それががんを治すかどうかについては疑問です。(これは他の記事でも述べました。)最近抗酸化作用は流行ですので、どうもこの理論が多用される傾向にあります。また、SODというのはスーパーオキシドジスムターゼという動物の体の中にある酵素ですから、これが温泉の中にもあるのでしょうか?しかも、ある温泉にはこの酵素活性値が通常の水の2倍あるといいますが、高々2倍程度でそれほど効果の違いが出るものでしょうか?さらに疑問なのは、次のような某理学博士の発言です。「(温泉水の)界面活性力が高ければ、脂肪に蓄積した毒素も乳化させ、尿として対外に排泄しやすくなるのです。」これはどう見てもおかしな見解です。私にはこの記事を書いた記者は自ら思考することを停止してしまったのではないかと思ってしまいました。ちなみにこの発言を分析しますと、界面活性力を簡単に解釈すれば油を水に混ぜ込む力といえます。つまり、石鹸のことです。界面活性剤を入れれば水と油は混じり合って乳化した状態となります。それでは界面活性力が強い温泉に入れば体の中のしかも脂肪細胞の中の脂肪は乳化するのでしょうか?そのためには温泉水が皮膚から浸透し、血液中を流れ、脂肪細胞の細胞膜を通り抜けその脂肪滴に到達しなければなりません。はたしてこんなことが起こり得るのでしょうか?しかもその後に、乳化した成分は脂肪細胞の細胞膜を通り抜け、血液中に入り、腎臓から尿として排泄されるというのです。私には荒唐無稽な仮説としか思えません。

このように考えても、この記事はうさんくさいと思わざるを得ません。ただし、私は温泉にはいることにより癌が治らないと言っているのではありません。癌に対しては温熱療法という治療法があります。上記のような変な仮説を立てなくても、温泉にはいることが温熱療法と同じような原理で癌に効果があるとも考えられます。また、温泉にはいることによるリラクゼーション効果がよい影響を与えるかもしれません。

 

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