驚異 免疫療法で末期がん7割が生還(週刊読売99年7月18日号)

「週刊読売」トップ記事が絶賛した統一教会系病院の「カネと評判」(週刊朝日99年99年7月23日号)(99.8.14)

週刊読売のこの記事は、ちょっとあきれるほど堂々と出しています。何しろ、トップ記事ですから。「末期がん7割が生還」などと、週刊読売が出す題名にしては、怪しさがぷんぷん臭います。7割という数字も数字ですが、「生還」という言葉自体私には奇妙に聞こえます。「生還」とは字の如く、生きて帰ってくることです。それでは、末期がんが治ったということなのでしょうか?

この記事は、この手の記事の定番通り、ガンが治ったといわれる人のエピソードから始まります。おそらくこの記事の内容に現実味を与える意図があるのでしょうが、科学的な記事の場合、このような「特例」を記述することは本来避けるべきであると思います。確かに読者に強い印象を与えますが、内容的にこれはクロレラの広告にみられる体験談と同レベルであるといわねばなりません。このような医学的な記事を客観的に評価する場合は、私はこのような具体例は無視して読むべきであると思います。

ただし、この記事ではこの病院の免疫療法で治療された52例がでていますから、まだよいとしましょう。52例中17例がなくなられていますから、確かに生還率7割ということになりますが、その生存者の内訳をみると生存期間が5ヶ月から17年といろいろです。17年であれば確かに、治ったといえるかもしれませんが、5ヶ月では治っているのかどうかこれだけでは判断できません。一般にガンに対する治療効果をみる場合、5年生存率という指標を用います。これに従うと、5年以上たっている例は20例ということになります。まあ、4割という数字は悪くありませんが・・・(ただし、診断がきちんとされているかどうかについては何ともいえません。第3者の評価が必要です。)

次に、あれ?、と思うのは、「温熱療法が中心」という記述です。この記事のタイトルは「免疫療法」です。温熱療法と免疫療法は明らかに異なります。どういうことなのでしょうか。この記事の中でも紹介しているとおり、温熱療法は一部の大学病院でも取り入れられており、医学界でも認知された治療法です。決してこの病院特有の理論ではありません。その治療に加え、この病院では温熱療法の前後に「東洋医学の発想を取り入れたリフレッシュ療法」を行っているとしています。しかし、その内容をみるとガン治療の中心はあくまでも「温熱療法」です。記事から推察すると、この「リフレッシュ療法」はあくまでも補助的な治療であり、これも免疫療法というには不十分です。この記事の中でも、私のホームページの中でも載せていますが、心理的サポートを受けたガン患者では生存期間が長くなるという報告もあります。このデータを示すことで、いかにもこの病院で行われている「リフレッシュ療法」が効果的であるかのようにみせています。しかし、この病院の「リフレッシュ療法」と引用された心理療法とは全く別物です。この病院の正確なデータは示されていないのです。(そこでの心理学的アプローチによりどの程度予後やQOLが改善したかについて)。人のふんどしで相撲を取っている感は否めません。

この記事の中では、「西洋医学=病気だけを治す、機械的な治療」、「代替医療(東洋医学など)=人を治す、自然治癒力で治す」というステレオタイプ的な図式が見えてきます。確かに医師の中には、病気を診て患者を診ない医師がいることは否定しませんし、今の医学教育の中で抜け落ちている部分ではあります。しかし、西洋医学的なアプローチで、患者さんを人として診ることは十分可能ですし、そうしている医師は多くいます。ただ単に、東洋医学や代替療法を導入することで、全人的医療が行えるわけではありません。

さて、この週刊読売の記事にさっそく週刊朝日がかみつきました。週刊朝日の記事によれば、この病院は1993年週刊文春の「統一教会系病院/命を弄ぶ霊感商法」と題した記事によって告発されたことがあるのだそうです。その中で、この病院の院長は他の病院ではがんと診断されない患者に「がんの疑いがある」と診断したり、「ガンが再発する」などと脅して、高額の治療を受けさせたと指摘されています。院長はこの記事を名誉毀損で訴えたそうですが、完敗してしまいました。また、全国霊感商法対策弁護士連絡会がこの記事に関して週刊読売編集部に公開質問状を送ったといいます。

やはり、週刊読売の記事はかなり怪しいものであったといえそうです。



 
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