「久司式ダイエット」って何?(週刊文春99年7月1日号)(99.8.14)

この記事の最初の文章をみてみましょう。

「マクロビオティック」と呼ばれる食事法がアメリカで流行している。クリントン大統領にカーター元大統領、マドンナにトム・クルーズら、各界の著名人も実践しているという。ダイエット食としてもてはやされる一方、ガンやエイズの予防や治療にまで効果をあげているというのだ。

このようなセンセーショナルな書き出しに続いて、この「マクロビオティック食事法」の提唱者である久司道夫氏の論文や著書がスミソニアン博物館に展示されることになったことが記されています。

さて、マクロビオティック食事法がどんなものか、この記事から引用してみましょう。 主食として50〜60%が精白しない穀物、5〜10%がスープ、20〜30%が野菜、5〜10%が豆類と海藻。これを基準とし、果物やナッツ類を時々食べる。動物性食品は白身魚を1週間に1回程度とし、肉や卵、牛乳は摂りすぎない。飲み物はコーヒー、アルコールは避け、刺激の弱い茎茶などを飲むようにする。食材や調味料は有機農産物、天然醸造のものを用い、砂糖はいっさい使わない。

以上がその概要です。よくよくみると蛋白質摂取が少ない点を除けば、昔ながらの日本食に類似しています。まあ、提唱者が日本人ですからね。確かに、この食事療法はアメリカではガンの民間療法では一般的なようです。この食事法は、米国議会の調査機関であるOTA(Office of Technology Assessment)の「ガンの民間療法」という報告書にも掲載されており、その中で「ガン患者に最も利用されている民間療法の一つ」と記されています。

久司氏は、どのような原理でこの食事がガンやエイズに効くといっているのでしょうか?彼は、「ガンは肉や乳製品、砂糖の取りすぎが原因であり、このような動物性食品を摂取すると血液が酸性になり病気にかかりやすくなる。マクロビオティックは血液を浄化し、ウィルスに冒されない免疫力を付ける。」といっています。私のホームページをご覧いただいている方はこの説明がいかにいかがわしいか、おわかりになると思います。

OTAの報告書によるとマクロビオティック食事法を初めてアメリカに紹介したのは、久司氏ではなくてジョージ・オーサワ氏ということになっています。久司氏はオーサワ氏のマクロビオティック食事療法を改良し、一般に普及させたのです。この食事の提唱者たちは、この食事が低脂肪、低コレステロールであり(この文句は、アメリカ人が最も好むものです。)、食物繊維、ビタミンAやC、βカロチンが多いと主張しています。しかし、ビタミンB12、D、カルシウムが不足すると指摘されています。最近の論文でも、小児にとってはビタミンB12の不足などは重大な問題をもたらす可能性がると指摘されています。
しかも、OTAが調査した結果、マクロビオティック食事法について無作為化対照試験はなく、いくつかの臨床研究論文だけ(症例報告的な研究、しかもこれは未発表のもの)では、この食事法が癌に効果的であるという結論はつけられないと報告しています。

 
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