「人はなぜ騙されるのか」非科学を科学する

安斎育郎著 朝日新聞社刊 ¥1500

 

物事の真価を確かめるためには、人がどうして、どのように騙されてしまうかを知っておく必要があります。科学的な見方は、完璧ではないにしても、真価を評価する上で効果的な見方であると思います。この本では物事を見極める一つの方法として、その対象が科学的に証明可能なものか否かを区別することが必要であると説いています。健康情報を読み解く際に、この本は非常に参考になります。

 

この本は5章より成り立っています。

第1章 不思議現象を考える

ここでは、過去にいかに多くの人たちが「超能力」に魅せられ、そして騙されたが具体的に述べられています。過去の多くの「超能力者」と呼ばれた人たちが、いかに「いかさま」であったか、そしていかに多くの人たちが騙されてしまったかが語られています。たとえ当時偉大な科学者であったとしても、いとも簡単に騙されてしまっています。76ページには「気功は気のせいか」と題して、群馬大学の研究を紹介しています。

第2章 科学する眼・科学する心

ここでは、科学で扱えるものと扱えないものを区別し、前者を評価するためには、科学的な眼が必要であることを説いています。最近は「科学の限界」を唱える傾向がありますが、科学的に分析することは必要なことです。自分は直感的に分からないからといって、思考を停止して「超能力」のせいにすることなく、自ら科学的、論理的に思考することの必要性を説いています。106ページには「二重盲検法」が紹介されています。

第3章 人はなぜ騙されるのか

ここでは、人が陥りやすい錯覚や勘違いについて分析しています。「私は騙されない」などと豪語している人に限って騙されてしまいます。私たち人間は騙されやすいものだ、という認識に立って、謙虚に物事を分析する必要があるのです。

第4章 社会と、どうつきあうか

著者は、人生の大事を次の四つと考えている。

1. 価値観の形成

2. 価値実現のために自然・人間・社会に主体的に働きかける姿勢の獲得

3. 自然や社会の成り立ちについての体系的な合理的認識の修得

4. 自己の相対化

この考え方に基づいて、どのように社会と関わっていくかが述べられている。この考え方については、人生の考え方の一つというほかないが、私としては「価値観の相対化」「自己の相対化」については重要なことではないかと思います。自分の価値観は絶対的ではないということから、他人を理解する第一歩が始まるのではないでしょうか?

第五章 宗教と科学

この章では科学と宗教との考え方、対象の違いについて述べている。最近のオウム真理教を初めとした、新興宗教は科学の分野にも進出している。超能力による空中浮揚を喧伝したり、手かざしによる病気の治療をしたりしている。しかしこれらは、科学的に評価分析可能であり、ほとんどが「いんちき」である。本来宗教の目的はこのような超能力まがいの力を借りたり、修得することではない。著者は、「宗教は一つの価値体系」であり「宗教は「価値のある生き方とは何か」について積極的に提起すること」が必要であると主張しています。

 

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