ダイエット広告の読み方

(98.6.3)

これから夏に向けてダイエットの広告が多くなってきました。「痩せること」は多くの人たちの願望の一つですが、ご存じの通り「インチキ」がまかり通っています。これは欧米でも同じことです。米国ではHealthy Weight Journalという雑誌があり、「Weight Loss Quackery and Fads」という別冊を出していました。ここには万国共通の「インチキダイエット広告をどのように見分けるか」が簡潔にまとめられています。これを元にしてダイエット広告の読み方について解説します。ここ2年間私は新聞の折り込み広告を集めてみました。以下をお読みになると分かりますが、新聞の折り込み広告にみられるダイエット広告はほとんどがインチキであると考えられます。



1)広告の中にある言葉、表現の仕方に注目しよう。
インチキダイエット広告の多くは、簡単に、努力もせずに、すみやかに体重を減らせるとうたいます。「らくらく痩せる」「簡単ダイエット」「スピードダイエット」「あっというまに」などという言葉がみられたら、もうインチキであると判断してよいでしょう。誰でも、楽をして簡単に痩せたいと思います。そのような人の弱みに付け入るのが「インチキダイエット広告」の特徴です。医学的にみて1週間に何キロも体重を減らすことは不可能ですし、もし減らせたとしても体にとってはよくありません。

インチキダイエット広告では、しばしば「食事制限はいりません!」などと書かれています。原理的にみて食事療法なしでは減量は困難です。食品成分や薬物には基礎代謝を高めてエネルギー消費を高めるものもあります。しかし、臨床実験にて確実に体重を減らす効果が認められたものはありません。あるいはその健康食品を食べたりすることで運動のかわりとなるといっているものもありますが、そんなものはありません。

「リバウンドなし」とうたうことも問題です。リバウンドをおこさないためには日々の生活管理が必要です。一旦痩せたからといって元の生活に戻ればまた太ってしまいます。

インチキダイエット広告では、しばしば特別な形容詞を用います。これらの言葉があった場合、インチキであると判断できます。すなわち、驚異的な奇跡的な驚くべき効果秘密の神秘の究極の等々、このような言葉がみられたら要注意です。だいたい本当に驚異的な効果があれば自分でいわなくても自然に他の人が認めてくれます。自分で驚異的だと喧伝するのは、そうでないことの裏返しなのです。そして日本に特徴的な言葉として「中国?千年の歴史に基づいた」などといった東洋医学的な雰囲気をほのめかしたものや「アメリカで話題の」とか「海外で注目されている」「ハリウッドの有名女優も愛用の」などがあります。

米国のインチキダイエット広告には「セルライト(Cellulite)」という言葉がしばしば登場するようです。この言葉があればインチキと考えてよいと思います。日本ではあまりダイエット広告に使われていないようですが、エステの宣伝には使われることがあるようです。セルライトはフランスで太ももの脂肪にえくぼのようなくぼみのある女性のことを意味する言葉として使われていました。それが、ニューヨークのビューティーサロンのフランス人オーナーであるNicole Ronsardの著作に登場して以来、米国に広まったとのことです。その後セルライトは代謝が低下し老廃物の蓄積した脂肪細胞のことをさすようになり、彼らはこの脂肪細胞は通常の食事療法や運動などでは解消することができないと主張します。そして彼らのいうエステによってのみ解消することができると宣伝するのです。もちろん医学的には何の意味もありません。

よくあるのが使用前使用後の写真です。この健康食品でこんなに痩せましたと宣伝するわけです。しかし、その大部分はインチキであり、食事療法などで痩せた人を出したりしているわけですが、最近はコンピューターグラフィクスを使うと自由に痩せた写真や太った写真を作ることができるのです。私の印象では、コンピュータで顔だけをすげ替えた写真もあるようにも思います。したがって、使用前使用後の写真があったとしても絶対信用してはいけません。最近、この手の宣伝で摘発されたものもありました。

体験談が載っている場合も要注意です。「この方法で1ヶ月で?キロ痩せました。」というものです。このような話はいくらでも創作することができます。健康食品の宣伝でよくやられる手法です。

中には、学会や研究会でその効果が証明されているといっているものもあります。しかし、その出典を明らかにしていない場合は、信用するべきではありません。また、その出典が示されていても架空の学会や研究会であることもあります。最近は肥満学会で発表された情報を掲載しているものもありますが、実際は動物実験のデータであり人では同じ様な効果があるか疑問であったり、すでに研究方法の段階で問題のある発表もあるのです。学会で発表されただけでは十分な信用はできません。

健康食品によくあるものとして、体重を減らす効果の他にいろいろな病気を治す効果もあるとうたっている場合があります。確かに糖尿病や高脂血症などは体重を減らすことで改善しますが、他の病気、たとえば癌や肝臓疾患、腎臓疾患などは逆効果の時もあります。これらの病気も同時に改善すると宣伝している場合は信用すべきではありません。
2)どのようにして減量をするかについてチェックしよう。
一日の食事摂取量を1000kcal以下にするようなダイエットは、原則として医師の指示に従うべきです。そのことに言及していない場合は問題があります。

特定のものだけ取っていればよいとしているものにも注意が必要です。バランスのとれた栄養をとることが大原則です。

ダイエット器具を売っている場合があります。体をラップで包んだり、電気で筋肉を刺激したり、ベルトや腹巻きのようなもを装着するとか、いろいろなものが売られています。減量は食事と運動でしかできません。このような器具で医学的に痩身効果の認められたものはありません。ちょっとした電気刺激程度では大したカロリー消費にならないと報告されています。

部分的に痩せることはできません。宣伝の中には、顔痩せ、足を細くする、ウエストを細くするなど、特定の部分だけ痩せさせるといっているものがあります。まだ現代医学では特定の部位の脂肪代謝を促進させることはできません。ましてや、しばしばエステなどで行われているマッサージや局所的な電気刺激などでは部分的な痩身効果など得られません。

また、どのように減量させることができるかについて、特有の言葉を使っていることが多いようです。たとえば、「脂肪を燃焼させる」とか「太りやすい体質を改善させる」などです。これらの言葉については他のところで説明してあります。
3)健康食品の成分に注目しよう。
最近はいろいろな成分が痩せるのに有効ではないかと報道されています。しかし、健康食品のたぐいで人間で痩身効果の証明されているものはありません。余分なカロリーの消化を抑え、吸収されないようにするとの宣伝文句は大変魅力的であり、多少はそのような効果のある成分が含まれているものもあるようです。しかし、効果の出るようにするためには毎回の食事の際にかなりの量を摂取しなければならず、本当にそのような効果が出た場合、下痢になってしまいます。一般に売られている程度の摂取量では効果は期待できないと思います。
4)販売方法に注意しよう。
訪問販売には特に注意が必要です。販売員は客を言いくるめるように訓練されており、話を聞き始めればほとんどその術中にはまります。説明を聞かないうちにきっぱり断ることが必要です。

中にはマルチ商法まがいのものも見受けられます(サンデー毎日の記事参照)。ことに、最近アメリカの健康食品会社が日本への進出をもくろんでおり、販売員(distributer)を募集しているようです(日本は健康食品の大きな市場なのです)。肥満を解消できるだけでなく、高額な収入も得られるという宣伝文句に騙されてはいけません。

バイブル商法

ある特定の健康食品や健康法を賛美する本を出版することで、その健康食品や健康法を宣伝する方法があります。しばしば怪しげな医学博士が登場するわけですが、ダイエットの分野でも非常に多くの本が出回っています。これらの本は特定の健康食品や民間療法を宣伝するためだけに出版されたもので、本の中に必ず健康食品の入手先やその民間療法を受けられる施設を紹介しています。タレントのダイエット本もありますが、週刊文春で最近取り上げているとおり、ほとんどが当てにならないものです。
5)エステについてのコメント

エステではしばしば痩せることを宣伝します。はたしてエステで本当に痩せるのでしょうか? いくつかのエステの宣伝よりどのようなダイエットの方法があるかを探ってみました。(実は痩せることについては大々的に宣伝しているのですが、どのように痩せるかについてはあまり言及していません。)ご覧の通り、すでに述べたような器具や記述が目立っています。広告の中でその方法について説明されていた記述を()内に引用しました。注)は私のコメントです。
TBC
グリースブレイク(ハンドテクニック効果、もみほぐし効果)、セルウォーミング(ヒートマットにより体を温めエステ効果を高める)、スライドシェイバー(足;空気の力で気になるところをすっきり整える)orパルスウェーブ、バイブロサーモ、ボディクリーン(エステ五の肌を整える)、

エステdeミロード
リンパドレナージュ(低周波により、全身の血行・発汗作用を促進)、バンテージ(たるんだ部分・むくんだ部分を集中的に引き締める)、ファットナイザー(バイブレーションの効果で脂肪や筋肉をほぐす)、テクニカルブレイク(脂肪をもみだしてプロポーションを整える)、ウルトラセルライト(超音波マッサージにより脂肪を燃焼させて血行を促進させる)、フィジカルルーズ(低周波で筋肉に働きかけ、全身のボディバランスを整える)、タラソテラピー(ミネラルやヨードを含む海草パックで、代謝を促進、発汗作用を促す)

ソシエ
フランスのエステダム社のスリミング化粧品で脂肪分解、マシーンによるマッサージ効果で、新陳代謝を高めて老廃物を排出、マッサージで脂肪を落とす
注)どんな器具を使うかについては言及なし。

スリムビューティハウス
陰陽五行トリートメント、耳つぼ、ヒートマット、ゴールドトリートメント、ハンドブローク、P-8、ラスパー、スリマー、バイブレーター、エアトーン、バンテージ、漢ポオアロマコース(カップドレナージュで滞っていた血行やリンパの流れをスムーズにし、水ぶとりやむくみを解消し、脂肪の燃焼にはずみをつける)
注)ここの広告にはいろいろな用語が並んでいるがどんなものであるか説明がない。

たかの友梨ビューティクリニック
スイス式減量(細胞活性トリートメントで、体内の老廃物をクリーニングしてスリムをめざす)、スレンダー(低周波で筋肉を刺激)、ミラクル(気になる部分を集中的にもみほぐす)、顔痩せマッサージ、スリランカスリミング(足を引き締める)、
いろいろな器具や、その命名法、いろいろ腐心している様子がうかがわれます。その前のいろいろな私の解説から分かるように、このようないろいろな器具を使ったり、もんだり、たたいたりして燃やせることはできません。痩せるためには過剰なエネルギーが消費されねばならないからです。上に述べられたエステでいろいろやられてい処置では、カロリーの消費にはつながりません。それでもエステで痩せられる可能性はあります。そうでなければこれほどエステがはやらないでしょう。そのヒントは、たかの友梨ビューティクリニックの広告にありました。それには次のような記述があるのです。()内は私のコメントです。
たかの友梨式、減量黄金法則5
  1. グラフ過体重日記(これは大分医大の坂田教授らが行っている方法で、1日4回体重を測定し、それをグラフにすることで、自分の体重、食生活などに対する自覚を促すものです。)
  2. エステ体操(内容によってはある程度カロリーを消費することは可能でしょう)
  3. 肥満度チェック&咀嚼法(1回30回かむというのはゆっくり食事をとるきっかけとなり、満腹感を促し食事量を減らす効果があります。)
  4. 食事のアドバイス(これがダイエットに最も重要なのです)
  5. エステ・トリートメント(これはダイエットとは関係ありません。エステだからこの項目を入れざるを得ないのでしょう。)
上記の1、2、3、4がきちんと守れればダイエットは可能です。実はいろいろな器械を使ったり、マッサージをしたりする必要はないのです。これが痩せる秘密なのです。あなたはこれだけのために高額な費用を払いますか?(しかも、エステの中には自分たちのところでつくっている高額な化粧品を売りつけることをもう一つの収入源としています。)ただし、これだけ高額なお金を払ったのだから、一生懸命上記の黄金法則を守るかもしれませんが・・・。

参考文献
Weight Loss Quackery and Fads; Frances M. Berg, Healthy Weight Journal
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