活性酸素や坑酸化物質について

ビタミンE、βカロチン、SOD等と病気予防について (98.4.19)

最近は、健康ブームに乗って坑酸化作用とか、SOD様物質等が健康食品の宣伝文句に使われるようになりました。また、ビタミンE、βカロチン、ビタミンCなどは以前より、動脈硬化や、癌の予防によいと喧伝されています。最近新たに、注目されてきているのが、赤ワインなどに含まれるポリフェノールや緑茶に含まれるカテキンです。これらは坑酸化作用を有し、成人病の予防によいなどと報道されています。果たしてこれらの情報はどれくらい信用してよいものでしょうか?気の早い人たちは、少しでも健康によいとマスコミで報道されるとすぐに飛びついてしまいます。果たしてそれでよいのでしょうか?今回、私はこれらの坑酸化物質の医学的にどの程度までわかっているか、どう考えたらよいかについて調べてみました。

酸化作用と病気 活性酸素とは何か?

活性酸素と動脈硬化

活性酸素を除去するためにはどうしたらよいか?

SODとは何か

ビタミンE

βカロチン

ポリフェノール


酸化作用と病気 活性酸素とは何か?

活性酸素は、本来体の中では生体防御や遺伝子発現の調節などの生命現象に必要な役割を持っています。しかし、同時に強力な酸化作用を有し、細胞膜の脂質や細胞の中のタンパク質や酵素を酸化させその機能を障害し、成人病や老化の原因となっています。その酸化作用が遺伝子に障害を起こせば、癌の発生の原因にもなります。

活性酸素と動脈硬化

最近の研究では、動脈硬化には、コレステロールが高いこと以外にコレステロールを運んでいるLDL(低比重リポ蛋白)の酸化が関係しているといわれています。コレステロールが高いことはLDLが高値であることであり、LDLが多ければ酸化されるLDLも多くなるので、コレステロールを低下させることは動脈硬化の予防になります。しかし、それだけではなくLDLが酸化される率を低下させることも動脈硬化の予防なると考えられます。。LDLが酸化されてしまう原因として、
1)LDLに含まれる脂肪酸の組成(リノール酸やEPAはオレイン酸に比べて酸化されやすい)
2)細胞の発生する活性酸素や血液中の鉄や銅などによる酸化の促進
3)血液中の坑酸化物質などの減少
4)LDL中の坑酸化物質の減少などがあります。
また、糖尿病がある場合、高血糖により活性酸素が発生しやすくなり、しかも活性酸素を除去する酵素(SOD, スーパーオキシドジスムターゼ)の活性が低下することにより、活性酸素が増加しているといわれています。

活性酸素を除去するためにはどうしたらよいか?

組織や細胞の酸化が、病気の一因となっているのであれば、それを防げば病気の予防、治療になると考えられます。体の中にはすでに酸化を防ぐいろいろな物質が存在します。細胞の中に存在するいろいろな酵素、血液中を流れるいろいろなタンパク質など、あげればきりがありません。

SODとは何か

その中で、活性酸素の除去に重要なのが細胞内に存在するスーパーオキシドジスムターゼです。これを略したのがSODです。最近の健康食品や民間療法の宣伝の中に時々この言葉がみうけられます。よく読むと、SODではなくてSOD様と書いてあります。SODとは全く異なるものです。おそらくSODと同じ様な働きがあるかどうかは確かめていないでしょう。(本来、主としてSODは細胞内にあるものなのです。)宣伝に利用しただけです。 一般的には、坑酸化物質として注目されているのは以下のものでしょう。

ビタミンE 、βカロチン 、ビタミンC、 ポリフェノール

以下、それぞれについて解説します。(ビタミンCはまだデータが少ないので省略します。)

ビタミンE

ビタミンEは以前より坑酸化物質として注目され、動脈硬化や癌予防に関して多くの研究がなされています。 ビタミンEと動脈硬化 動脈硬化を原因とする病気で問題となっているのが、心筋梗塞などの虚血性心疾患です。(心臓を栄養する動脈が動脈硬化を起こすと、その部分がつまりその先が酸素不足になり、心筋が壊死を起こしてしまう病気です。重症の場合、一回目の発症にて心停止をきたしてしまう事もあります。) 活性酸素のところで述べたように、ビタミンEによって、LDLの酸化を防げば動脈硬化による心筋梗塞の発症率を低下させると考えられます。したがって、ビタミンEを服用した人たちは服用しなかった人たちに比べて心筋梗塞を発症しにくいはずです。いくつかの研究がされていますが、実は結論はでていないのです。
1994年のフィンランドの研究では、ビタミンEを毎日50mg服用しても、偽薬を服用した場合と比べて、心筋梗塞の発症率に差はありませんでした。
1996年の研究では、閉経後の女性について食事からのビタミンA、C、Eの摂取量を評価し、その後の心筋梗塞の発症率を調べたところ、ビタミンAやCは虚血性心疾患による死亡の危険度を低下させませんでしたが、ビタミンEは多く摂取するほど死亡率は低下したそうです。
1996年のCambridge Heart Antioxidant Studyでは、すでに動脈硬化のある人にビタミンEと偽薬を投与し、心筋梗塞の発症率をみたところ、ビタミンE服用者にて発症率が低かったという結果でした。(ただし、総死亡率では変わりなかったということです。)
もっとも新しい1997年の過去に心筋梗塞を発症した喫煙男性を対象とした研究では、ビタミンEの摂取は心筋梗塞の再発を低下させることはできませんでした。

ビタミンEと癌予防

動物実験では、肺癌や食道癌、大腸癌の予防効果が期待され、疫学調査でもビタミンEの血中濃度が高い人の方が癌の発症が少ないといわれています。このため癌の予防効果が期待され、いくつかの研究がなされています。
1993年の中国での研究では、ビタミンE、βカロチン、セレンを服用した場合、一部の癌の発症率の低下がみられました。
1994年のフィンランドでの研究では、たばこを吸う人たちにビタミンEを投与し、肺癌の発症率をみましたが、発症率は低下しませんでした。
このように、ビタミンEは必ずしも、癌の発生を抑えるとは言えないようです。ただし、癌の種類によるのかもしれませんが。

私の 結論

人で調べる場合、それぞれの食生活が異なるので、微妙な差はなかなかでないものです。ビタミンEは、少しは動脈硬化を予防するが、癌の発生にはあまり関係ないというのが現在の結論ではないでしょうか? ビタミンEは、それほど劇的な効果は期待できないが、とっても悪くはなさそう、というのが私の意見です。

βカロチン

βカロチンは、ビタミンEと同様、坑酸化物質として以前より注目されてきました。 したがって、今までにも心筋梗塞の発症予防や、癌の予防効果が期待されて研究がなされてきました。しかし、結論は惨憺たるものです。

βカロチンと動脈硬化

1994年のフィンランドの研究では、喫煙者にβカロチンを6年間投与したところ、βカロチンを服用した人たちの方が11%も心筋梗塞の発症率が高くなってしまいました。
1996年の米国の医師が参加した研究で、βカロチンの虚血性心疾患、癌などの予防効果について調べましたが、効果はありませんでした。
1996年のthe Beta-carotene and retinol Efficacy trialという研究では、肺癌のリスクの高い人にβカロチンとビタミンAを投与してそれらの予防効果について調べています。しかし、4年後にはむしろそれらを服用した人たちの心血管疾患による危険度は増加してしまいました。
最近の研究では、1997年に発表されたものがあります。以前に心筋梗塞を発症したことのある喫煙男性にβカロチンを投与し、その後の心筋梗塞の発症率を調べました。しかし、βカロチンを服用した人たちの方が、偽薬を服用した人たちより、心筋梗塞がより高率に発症してしまいました。
これらの結果は、βカロチンは動脈硬化を予防するどころか、むしろ促進してしまうことを示しています。

βカロチンと癌

上記のフィンランドの研究では、βカロチンの服用により、肺癌と前立腺癌の発症が増加したと報告されています。
上記の1996年の2つの研究では、同時に癌の発生率も調べていますが、βカロチンを服用しても癌の予防効果は認められませんでした。

私の結論

βカロチンは坑酸化物質として注目され、健康食品としても売られています。しかし、今までのデータより考えると、動脈硬化や癌を予防する効果はなく、むしろこれらを悪化させてしまう可能性があります。βカロチンを積極的にとっている人は直ちにやめた方がよいと思います。

ポリフェノール

ポリフェノールとは何か?

最近は、マスコミでポリフェノールという言葉がでてくるようになりました。 ポリフェノールは、構造上フェノール性OH基を2個以上持つもので、坑酸化作用を有します。後で述べるように、ポリフェノールはいろいろな食品に含まれており、フラボノイドとノンフラボノイドに分けられます。

ポリフェノールと動脈硬化

1993年にオランダでZutphen Elderly Studyと呼ばれる研究がされました。その中で野菜、果物、お茶などを多く摂取している高齢者に心筋梗塞などによる死亡が少ないことがわかりました。そこでこれらのものに含まれるポリフェノールがその原因ではないかと考えられました。
ポリフェノールが日本で注目されるようになったのは、おそらく赤ワインがきっかけではないでしょうか。フランス人は他の欧米諸国と類似した油の多い食生活を送っているにもかかわらず、虚血性心疾患の発症率が低いことが知られています。これはフレンチパラッドックスと呼ばれていますが、この理由としてフランス人がよく飲む赤ワインに含まれるポリフェノールが考えられました。赤ワインにはポリフェノールが多く含まれ、実験的にもこれを飲むと血液中の坑酸化能が上昇することが証明されたからです。しかしながら、赤ワインが動脈硬化を抑制することはあくまで仮説の段階であり、実は疫学的には十分証明されておりません。アルコール自体が動脈硬化を抑制する作用を有しており、このためである可能性もあるからです。その他、アルコールは肝臓で代謝される際に、活性酸素を発生することが知られており、飲みすぎは逆効果かもしれません。
その他の食品での基礎的な実験では、緑茶や紅茶を飲むと血液中の坑酸化作用が増すことが証明されています。緑茶や紅茶により動脈硬化が抑制されたという報告はまだありませんが、緑茶では動脈硬化をある程度予防できる可能性があります。

ポリフェノールと発癌予防

主として紅茶と発ガン性に関する疫学的研究があります。しかし、その結果については、紅茶が発癌を抑制したとするもの、無関係とするもの、発癌を促進したとするもの、いろいろであり、結論はでていません。無関係であると結論した論文が大部分ですが、大腸癌、膵臓癌乳ガンは紅茶を飲むことで発癌が抑制されたとする論文が多いようです。しかし、食道癌はむしろ増加すると結論した論文が多いようです。(これは紅茶によるやけどが原因かもしれません。)
緑茶については、胃癌の発癌を抑制するという論文がいくつかあります。埼玉ガンセンターの中地 敬先生らが中心に研究しており、基礎研究でも緑茶がガン細胞の増殖を抑制することが証明されています。疫学的にも緑茶をより多く飲んでいる人の方が癌を発症する時期が遅れるということですし、緑茶を1日10杯以上飲む人の癌のリスクは飲まない人より40%も低くなるとのことです。

ポリフェノールはどのようなものに含まれているか?

ポリフェノールには以下に示したように、いろいろな食品にあります。 臨床栄養92巻4号山中直樹氏の論文より引用させていただきました。

私の結論

確かにポリフェノールは抗酸化作用を有するようです。しかしながら、その作用は十分動脈硬化や癌を予防できるほどではなく、せいぜいその発症を遅らせるぐらいでしょう。赤ワインがブームですが、飲み過ぎればアルコール性の肝障害を来しますし、アルコールに弱い人には勧められません。むしろ緑茶の方が日常的に飲みやすいですし、カテキンには抗菌作用もあるといわれていますので、私としては赤ワインより緑茶をお勧めします。

 

参考文献
臨床栄養 98年92巻4号
内科 98年79巻3号
メディカル朝日 98年3月号
日本医事新報 1998年 No.3858

 

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