健康食品や民間療法がなぜ問題なのか?

(98.8.14)

健康食品や民間療法の中には、ある程度その効果が認められているものもあります。しかし実際その大部分は商業的なものであり、その効果が怪しいものばかりです。
そこで、今回、Quackwatch Home PageのDr.Jarvisにより書かれた「How Quackery Harms」を元に、なぜ健康食品や民間療法が問題になるのかを考えてみました。基本的な考え方はこの記事をヒントにしていますが、内容は私独自の考えで書いています。



1)経済的な問題

代表的な問題は、これらの健康食品や民間療法に費やされる費用です。アメリカの研究では民間療法に支払われた額は、年間212億ドルにものぼります。日本でのデータはありませんが、98年3月に摘発されているダイエット健康食品会社の総売上が30億円、99年に摘発されたガンに効くとうたった健康飲料の売り上げが120億円、インチキ医療器具の売り上げが30億円です。これらは氷山の一角ですから、いかに健康食品、健康器具販売が儲かるか、いかに多くの人たちが騙され、無駄なお金をつぎ込んでいるかが推測されます。一部の調査では、一人あたり、月に数万円から数十万円までの費用を健康食品や民間療法に費やしているといいます。特に、ガン治療に関連したものは高額になる傾向があるようです。まず、健康食品や民間療法を考えている場合、それにかかる予算について十分考慮して下さい。高額であればあるほど、その効果について厳密に調べる必要があるでしょう。

2)直接的な問題

第二の問題は、それらの健康食品や民間療法による直接的な被害、つまり副作用です。しばしば、これらの宣伝文句には、自然だから、天然だから、などといって副作用を心配しなくていよいような記述がみられます。しかし、このホームページで指摘しているとおり、健康食品や民間療法も、決して安全とはいえません。中には、プロポリスで危うく生命を落としそうになった例もありますし、あるアトピーの民間療法ではお子さんが亡くなられているそうです。かえって、きちんとした臨床データが不足しているために、副作用の実体が分からず、危険であるとさえいえます。業者の方ではその健康食品に副作用があっても、それが表沙汰になると売れなくなりますから、きっと故意に隠蔽するでしょう。医薬品と異なり、副作用の報告義務もなく、その成分の保証もありませんから、いろいろな不純物が含まれていたり、表示されていない成分が加えられていたりする可能性もあります。輸入漢方薬の中には砒素や水銀などが混入していたり、西洋薬が加えられたりしているものがあります。日本でも、輸入漢方薬に血糖降下剤が加えられていたため、低血糖のために死亡した例もありますし、鉛が混入していたために鉛中毒になってしまった例輸入国産の健康茶に医薬品であるセンナが含まれていた例などが、報告されています。
民間療法の中には、極端な食事制限やある一定の食品を摂らないように指導する場合があります。それが栄養学的に間違っていた場合、栄養障害に陥る可能性があります。特に小児の場合は深刻です。たとえば、マクロビオティック療法という食事療法がありますが、これはビタミンB12が不足することが指摘されています。
その他、民間療法で頸椎牽引療法をしたため、脊髄の損傷をおこしたなどという例も報告されています。
その他、健康食品や民間療法の副作用については、こちらに一覧があります。

3)間接的な問題

間接的な問題として最も重大なものは、健康食品や民間療法に頼ったばかりに、正当な医療を受ける機会を逃してしまうという問題です。N.Engl.J.Medには、正当な治療を拒否し、民間療法に頼ったばかりに、治療が遅れてしまった悪性リンパ腫の子供の例が報告されています。また、日本でも、ある大学病院の先生が次のような報告をしています。知人より、ある著明な棋士が胃癌になったということで、よい医師を紹介して欲しいという連絡がありました。内容を聞いたその先生は胃癌の部位からまだ十分治療が可能であろうと思っていました。しかし、よく効いてみると、その棋士は胃癌が発見されてから、1年間気功治療を受けていたということが分かりました。もちろん、その気功の効果はなく、その1年の間に胃癌は徐々に進行していたのです。残念ながら、その先生は後日、その棋士の死亡記事を新聞で見つけることになります。このように、生命に関わる病気では、治療が少しでも遅れただけで手遅れになる可能性があります。健康食品や民間療法がガンに効くなどと宣伝されていても、まず正当な医療を受けることを考えて下さい。その上で、主治医に相談するべきでしょう。最近、マスコミではある健康食品や民間療法が民間療法がガンに効くなどと報道しています。その時私はいつも感じるのですが、それをまに受けた人たちのガンが手遅れになったら、どう責任をとってくれるのでしょうか?
その他、民間療法の施術者の中には、病気の診断まで行う人たちがいます。占いなどで、「あなたは胃が悪いですな。」といわれる程度ならまだ笑ってすませるかもしれません。しかし、民間療法の施術者が中途半端な医学的知識を振りかざし、深刻な面もちで「あなたは、悪性の病気である。」と脅したり、逆に重大な病気が隠れているにもかかわらず、大したことはないと断言してしまった場合など、笑い事ではすまされません。ことに、後者の場合、上記の如く、医療機関でのきちんとした治療が遅れることになります。
また、健康食品の中には医薬品と相互作用のあるものもあります。医療機関より処方された薬を内服している人が、ある健康食品をとったことで、体の具合が悪くなるという可能性もあるのです。たとえば、クロレラはビタミンKを含んでおり、ワーファリンという薬の作用を減弱してしまいます。クロレラを飲めば病気がよくなると信じていた人が、実はかえって病気を悪化させていたということになります。

4)心理的、社会的な問題

上で述べたように、大したこともないのに、悪性の病気だといわれれば、うろたえない人はいないでしょう。人を恐怖に陥れて、そこにつけ込むのが「インチキ医療」です。この治療を受ければ必ずよくなると洗脳され、高額な費用を払わされることになります。実際は大した病気ではないため、「インチキ医療」によって治癒するわけです。このような場合、経済的な問題ばかりでなく、その人の心理的なダメージは相当なものでしょう。(まあ、治ったといわれれば立ち直るかもしれませんが。)あとになって、その治療がインチキであったと知れば、さらに落ち込むことでしょう。
反対に、インチキとは知らずに、よく効いたと信じ込み、その人がその「インチキ医療」を他の人に勧めたとしましょう。他の人がそれが「インチキ医療」であることに気がつけば、勧めた彼は友人を一人失ったことになります。(気がつかなければ同志が一人増えたことになりますが、いずれ誰かが気づくことでしょう。)結局親切があだになってしまいます。
あるいは病気の肉親のためと思い、ある民間療法をすすめたとしましょう。その後その肉親の病気が悪化してしまった場合、すすめた人の心の傷はずっと残ることとなります。
最近はマルチ商法まがいの健康食品販売が現れてきました。「健康になると同時にお金持ちにもなれる。」などという甘言に踊らされて、お金も友人も失ってしまった、などということにならないように注意しましょう。

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