糖尿病の基礎知識 (05.5.6)

 

誤解を解くための基礎知識
ここでは、成人型の糖尿病(インスリン非依存型糖尿病について述べます。)

1)「尿糖がでること=糖尿病」ではない。

糖尿病は尿糖が出る病気だと考えてはいませんか。そう考えてしまうと、尿に糖が出なくなったから治ったなどと誤解されかねません。糖尿病は血液中の糖(ブドウ糖)が正常以上に高くなる病気であって、その結果として尿に糖がでるのです。しかも、血糖が170mg/dl程度に上昇しなければ尿糖は出ませんし、腎臓の機能の低下している方では、それ以上に血糖が上昇していても尿糖が出ない可能性もあります。

2)糖尿病にかかっても症状は無いことの方が多い。(いつ糖尿病にかかったかは分からない)

糖尿病の症状として、よく喉が渇く、尿量が多くなる、疲れやすい、身体がだるい、などがあげられています。しかし、こういった症状はよっぽど血糖が上昇しない限り出ません。このような症状が出た頃にはもうかなり糖尿病は進行しているといえます。早期に糖尿病を発見し、早いうちから治療を開始するためには、検診が不可欠です。ときたま、目が良く見えなくなって眼科を受診したら糖尿病と診断されたという患者さんがいます。糖尿病の症状を自覚できないまま、合併症が進行して、合併症の症状が出てしまったケースです。

3)インスリン治療はやめられるときもある。

糖尿病が進行し、血糖降下剤だけでは血糖が改善しない場合、医師はインスリン注射を勧めます。最近は以前より早い段階でインスリン注射を開始する傾向があります。これは、早くからインスリン注射を開始することにより早く高血糖を是正し、高血糖による障害を防いだり、身体のなかのインスリンを温存することを目的としているようです。このような場合では、高血糖が是正された後、インスリンから経口剤に切り替えられる場合もあります。

4)糖尿病の治療の第一の目的は合併症の予防である。

糖尿病でこわいのは、合併症です。最近では糖尿病が原因で失明する患者さんが増えていますし、透析患者さんのなかの糖尿病患者さんの比率も増えてきています。このような合併症の進行を抑えることが糖尿病の治療の目的です。胃潰瘍や肺炎などは病気の状態に応じて症状が変化します。病気が悪ければ症状も悪くなりますし、病気が改善してくれば症状も消失します。これに対して、糖尿病の場合は多少病状が悪くても症状はありません。「症状が出ていないから、適当に治療していればいいや。」などと考えているうちに、合併症は静かに進行していくわけです。

もう一つ考えなければならないことは動脈硬化症です。動脈硬化症は血管の内側にコレステロールが蓄積し動脈が徐々に硬くなったり、中が狭くなったりする病気です。心臓の血管が細くなってつまってしまえば心筋梗塞、脳の血管がつまってしまえば脳梗塞となります。糖尿病があると動脈硬化になりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性も高くなります。動脈硬化は糖尿病が軽いうちやまだ糖尿病予備軍の段階から始まっています。糖尿病の管理とともに動脈硬化への対策が必要となります。

5)現代医学では完全に治癒させることはできない。

いろいろな民間療法や健康食品の広告のなかで、「糖尿病が治る!」などと宣伝している場合があります。しかし、残念ながら現代医学ではまだ、糖尿病を完全に治すことはできません。しかし、血糖を改善し、合併症を防ぎ、健康な人と同じように生活できるようにすることはできます。人によっては血糖を正常値まで下げることもできます。昔から「腹八分目は健康に良い。」などといいますが、糖尿病食は栄養のバランスも考慮され、しかも必要最小限のカロリーをとるという観点から見れば、糖尿病のない一般の人にも勧められる健康食といえます。

6)運動療法は食べたカロリーを消費するために行うのではない。

糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法ですが、運動は食べたカロリーを消費するため、あるいは運動すればそのとき一時的に血糖が下がるため、と思っている人がいます。本来の運動療法の目的は、運動によりインスリンを有効に使えるようにすることです。糖尿病の原因は、インスリンという血糖を下げるホルモンの作用不足にあります。作用が不足する原因は二つあります。一つはインスリン自体が少なくなること。もう一つはインスリンはあっても、それがうまく効かないこと。現在この二つの両方が糖尿病の原因であると考えられています。運動はそれによりインスリンの効果を高める作用があるので、糖尿病の原因の後者の方を改善する役割を担っているのです。

7)血糖が高いままだと、糖尿病がさらに悪化する。

最近の研究では、血糖が高いこと自体が身体に悪影響を及ぼすことが分かってきました。血糖が高いことで、インスリンの分泌も悪くなり、しかもインスリンの効きも悪くなるのです。したがって、早期に高血糖を是正することでこれらの悪影響を排除し、糖尿病の進行を遅らせることができると考えられています。

8)糖尿病は自分で治療する病気である。

糖尿病の治療の根本は、日常生活にあります。したがって、いくら医者が食事療法や運療法の必要性を訴えたところで、患者さんが実践しなければ全く治療効果は上がりません。症状も出ないだけに患者さん本人の自覚が最も必要な病気です。

9)力がでないのは食事療法のせいではない。

食事療法を始め、以前より食事量が減ると、「こんなに少なくては力が入らない。」と不満をいう患者さんがいます。たしかに腹一杯食べると力が入るような気がします。しかし、これはあくまでも気がするだけで、食べたカロリーは身体に蓄えられ、食べていないときにそれは少しずつそこからエネルギーが供給されます。多く食べようが、すくなく食べようが、そのとき供給される量は同じです。糖尿病食では、その人その人に応じた必要十分なカロリーを計算しており、通常足らなくなることはありません。本当に足らなければ、体重が減りますので分かります。(ただし、糖尿病が悪化している場合、食べすぎによりさらに血糖が上昇した場合でも、体重が減ることがあり注意が必要です。)力が入らない原因として、まだ血糖コントロールが不十分である可能性があげられます。血糖コントロールが悪い場合、空腹感が出やすいからです。

10)おなかがすくのは糖尿病のせいかもしれない。

糖尿病の患者さんの中にはおなかがすいてどうしてもたくさん食べてしまうか違います。もしかするとそれは糖尿病が悪化しているためかもしれません。私たちの身体を構成する細胞一つ一つはブドウ糖(グルコース)をエネルギー源としています。インスリンは血液中のブドウ糖を細胞の中に運び込む役割を持っています。インスリンが不足している状態、糖尿病状態では血液中のブドウ糖が細胞の中に入れない状態となっています。つまり、糖尿病状態では、血液中にブドウ糖がたくさんあるにもかかわらず、細胞の中はエネルギー不足となっているのです。これは身体にとってエネルギーが不足していると認識され、その信号が脳に伝わります。ですから糖尿病が改善すると異常な空腹感もなくなる方も多いようです。

 

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