第19回肥満学会報告

1998年12月3日から4日に愛媛県松山市にて肥満学会が開かれました。
肥満研究のトピックスは、熱産生にかかわる脱共役蛋白(uncoupling protein, UCP)や食欲を抑制するホルモンであるレプチン、脂肪細胞の分子生物学的研究などですが、このホームページではこの学会で発表された健康食品や民間療法関係についての私のコメントを載せたいと思います。
いったん学会で発表されるとその情報は一人歩きしてしまい、いろいろな健康食品の宣伝等に使用されてしまいます。しかし、学会発表されていても、まだその効果が承認されていないものも多く、中にはあまり評価できない研究もあります。今回の学会で、私は発表者にいくつかの質問をしたりして、その研究が十分批判に耐えられるものかどうかについて検討しました。

カワラツメケイの抽出物と桑葉の抽出物の抗肥満効果(ラットを用いた研究)

カワラツメケイは豆科の植物でその抽出物には脂肪を分解する酵素であるリパーゼの効果を阻害する作用があるそうです。また、桑葉の抽出物にはαグルコシダーゼと呼ばれる糖質を消化する酵素を阻害する作用があります。従って、食事と共に両者をとれば、食べたものが全部消化されず、吸収されずに、食べても太らないということになります。実験的には確かにこれを一緒に摂取すれば、体重増加を抑制する効果はありそうですが、その内容を見てみますと、これらの抽出物の効果が見られるのはこれらを食事中に2%〜4%含む場合です。計算上これらの抽出物を20〜30gをとる必要がありますから、いちいち食事をする度にこれらのものをこの量摂取することは現実的に無理ではないかと思います。


キチン・キトサン、ラクトスクロースの抗肥満作用(マウスを用いた研究)

キトサンはリパーゼの効果を阻害し、ラクトスクロースは脂肪の分解の結果生じた2-モノアシルグリセロールの腸管吸収を阻害するそうです。従って、これらが一緒に働けば脂肪の吸収量は減少し、食べても太らないという効果が期待できます。この実験でも飼料にこれらの物質を混ぜています。実験結果から考えると、ヒトが摂取してこれだけの効果を期待するためには、1日あたり1〜2gは摂取する必要があります。ただし、脂肪の消化吸収を抑制するわけですから、下痢をしてしまう可能性もありますし、ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性のビタミンの吸収も低下する可能性があります。


L-Carnitineの肥満効果(マウスを用いた研究)

L-Carnitine (β-hydroxy-γ-trimethylammonium butylate)は脂肪細胞の中の脂肪を分解し、ATPに変換する作用があるのだそうです。(これはインターネットで健康食品として販売されています。)飼料にこれを加え、マウスに与えて脂肪減少効果がみられたといいます。しかし、用量効果反応があったかとの私の質問に対し、認められらなかったとのことでした。通常、ある薬理効果が認められた場合、投与量の増減に伴い、一定の効果の変化がみられるはずです。一定の変化がみられなければ、その時の実験の時だけ偶然効果がみられただけという可能性も否定できません。


耳鍼療法の抗肥満効果について(臨床研究)

鍼により耳介を刺激すると痩せることができるという仮説に基づき、4例の成功例を報告しています。しかし、対照がないので、偶然痩せたのか、鍼により痩せたのかははっきりしません。4例しか報告していないので、効果のあった例しか発表しなかったのかも知れません。効果をはっきりされるためには無作為化二重盲検法を使うしかありません。


高周波を用いた肥満治療(臨床実験)

肥満治療に効果のある高周波機器を発明したとして、その臨床効果を発表していました。食事療法だけのヒトとこの機器を併用したヒトとで減量効果を比較して、併用した場合の方が減量効果が大きかったという事でした。ただし、両方の群は無作為割り当てでないため、グループの違いである可能性もあり、もう少しきちんとした実験デザインが必要でしょう。


エステで使用されている痩身機器で痩せることができるか?(臨床実験)

エステでは電気刺激で筋肉を刺激して痩せるとのうたい文句で、痩身機器が使用されています。この研究ではこの機器で果たして痩せることができるかどうかについて調べています。つまり、この機器を使用した場合のエネルギー消費量を測定しています。その結果、消費カロリーは30 kcal程度であり、痩身効果は期待できないことが明らかとなりました。


 

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