海外における民間療法と「いんちき医療」(Quackery)(99.3.20)

 

用語解説

海外でのQuakeryに対する取り組み

なぜこのような、団体があるのでしょうか?

海外のインチキ医療に関する情報を提供するホームページ(anti-quackery site)のリンク

民間療法を科学的に評価しようとする試み


用語解説

alternative medicine 代替医療。

これは、現在先進国の大学の医学部で教育され、世界的に広く認められている医学以外の医療についてをいいます。民間療法といってもよいかもしれません。下に述べるquackeryよりも広い意味で、鍼灸やカイロプラクッティク、欧米では漢方等も含みます。イギリスでは、complementary medicineと呼んでいるようです。 この中には、実際効果がありながら、十分研究されていないがために、alternative medicineと呼ばれてしまっているものも含みますが、多くはQuackeryといえます。

quack

たまたま手元にあった「新コンサイス英和辞典」をひらくと、「があがあ(あひるの鳴き声」の他に「にせ医者、山師、いかさま師」とでています。つまり、医学的に証明されていない、薬や治療法をいかにも効果があるかのように言いふらす人達を言います。

quackery

医学的に証明されていない、いいげんな「いかさま医療」のことを言います。 欧米でも日本と同様、山ほどのいい加減な医療、quackeryが存在します。ですから、「欧米で広まっている」と宣伝されても、全く当てにはなりません。

 

海外でのQuakeryに対する取り組み

これら、Quackeyに対して、欧米ではそれらに騙されないよう、いろいろな情報を集め一般に提供している組織があります。
アメリカでは、Dr.John H. Rennerが中心となって組織している「消費者健康情報調査研究所(CHIRI; Consumer Health Infomation Research Institute)」という非営利団体やQuackeryと闘う医師らの専門組織である「健康欺瞞と闘う国民会議(NCAHF; National Council Against Health Fraud)」、イギリスでは「Health Watch」がよく知られているようです。これらの組織は、マスコミや教会等からQuackeryに関する情報を集め、それを検証し、その情報を一般の人に提供することにより、Quackeryによる被害を防ぐ役割を果たします。
その他、個人的にQuackeryに関して情報を提供しているホームページ等があります。(近いうちにlinkを張りたいと思っています。)

なぜこのような、団体があるのでしょうか?

Dr. Rennerが概算したところによると、アメリカでQuackeryに費やした費用は年間3兆円にものぼるといいます。まさに、「いんちき医療」は金のなる木なのです。93年にも有名な医学雑誌にalternative medicineを利用した人は、一年間に延べ4億2500万人に上り、家庭医に受診した患者数3億8800万人を上回っていると報告されています。これだけの人達がこれ程の費用を費やして、果たしてそれに見合った効果を得ているでしょうか?多くは、Quackたちの懐を肥やしただけなのではないかと思います。 そして最近新たな論文が発表されました。それによると、最近の米国ではさらに民間療法が広まってきているようです。1991年と1997との民間療法の利用状況を比較したその研究によれば、 1)その前年の代替医療の利用率は33.8%より42.1%に増加。 2)代替医療の施術者の所に行った率は36.3%より46.3%に増加。 3)代替医療の施術者の所に行った総回数は4億2700万回から6億2900万回に増加。これはホームドクターにかかった回数を上回る。 ということです。しかし、彼らが主治医に代替医療を受けていることを告げているのは39.8%から38.5%とほとんど変わらないのが現状です。米国で代替医療サービスに支払われた金額は212億ドルにのぼり、その中の122億ドルは自分たちの財布から払われたといいます。代替医療関連で自分たちの財布から払われた総額は270億にのぼり、これはホームドクターへ自分たちの財布から払われる金額と同程度です。このように米国では代替医療は一大産業となっているのです。 したがって、これらの民間療法を正当に評価し、多くの人たちに被害をもたらすような不当なものを排除する必要があるのです。 私の知る限りでは、日本ではこのような組織はありません。敢えていえば国民生活センターなどが一部情報を流しているようですが。日本でもこれら「いんちき医療」に関する情報を提供する組織が必要ではないでしょうか。
宣伝方法のところに米国FDAの「いんちき医療」についての基本手引き(一部改変)を載せましたのでこれも参考にしてください。

 

海外のインチキ医療に関する情報を提供するホームページ(anti-quackery site)のリンク

民間療法を科学的に評価しようとする試み

一方では、海外、特にアメリカにおいて医師の間でも民間療法が注目されています。それは、すでにかなり多くの人たちが実際に民間療法を利用している現実を無視できなくなってきたことと、中には評価できそうな治療法があること、一部西洋医学的な考え方が息詰まってきている現実、民間療法をも有効であれば積極的に利用しようという合理的な考え方などに基づいているものと考えられます。すでに述べたとおり、アメリカでの民間療法に相当する言葉は、alternative and complementary medicine(以下ACMと略す)です。アメリカではこのACMに対しても、EBMの手法を用いて評価しようとしています。そしてそのアプローチの方法には二通りあります。ACMを積極的に評価し、それを医療に取り入れようとするグループと、ACMの問題点を明らかにし、それによる弊害を取り除こうとするグループです。いずれの立場も、ACMを科学的に評価するという姿勢では共通していると考えられます。後者については前述したとおりですが、前者の代表が、国立衛生研究所(National Insititute of Health, NIH)内に創設されたオルタナティブ医学局(Office of Alternative Medicine, OAM)です。この部局は、巷の民間療法の中でその効果がありそうなものを選択し、積極的にその臨床研究を促進させることを目的にしています。その後、OAMはOffice of Complementary and Alternative Medicine (OCAM)を経て、米国立補完・代替医療センター(Center of Complementary and Alternative Medicine)に格上げされました。それに従い、その権限が強化され、予算も増額されました。このことは米国が徐々に民間療法に力を入れ始めたことを示していると思われます。これまでに、13施設に補助金を出し、現在50の研究プロジェクトが行われているといいます。しかしながら、たとえば1993年に研究助成された30の研究のうち、28の研究で最終報告がなされましたが、論文になったものは9つしかないといいます。その内の5つの研究論文は、あまり有名でない医学雑誌に掲載されただけであり、残りの4つの研究は比較対照試験でなかったため、その民間療法が果たして効果があるものなのか判定することができなかったということです。つまり、今のところ十分な研究成果があがったというわけではないようです。ただし、このホームページでいくつか紹介しているとおり、最近になって評価に耐えうる論文が次第に増えつつあります。

EBM Evidence Based Medicine; 日本語では「根拠に基づく医療」と訳される。最近注目されている臨床医学の方法論である。従来の医学は、その多くを経験と伝承に基づいている。このような従来の臨床医学的手法に対し、最近次第に蓄積されつつある臨床疫学を基礎とした科学的な臨床試験の結果に基づいて診療を行おうという方法である。実際的には、1)目の前の患者の問題点を抽出し、2)その問題の解決に必要な臨床論文を検索し、3)その臨床論文を批判的に吟味し、4)その論文がその患者に適応できるかどうかを検討する、といったステップを踏む。詳細はこちらのホームページを参照されたし。 


参考文献
「メディカル朝日」94年7月号
New England Journal of Medicine 1993年328巻246頁
Annals of Internal Medicine 1997年127巻61頁
NCAHF Home Page
JAMA 1998年280巻1553頁、1569頁
New England Journal of Medicine 1998年339巻839頁

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