漢方薬の副作用 (00.7.7)


漢方薬は保険診療の範囲内で処方されるほか、薬局にて販売されたり、インターネットなどを通じて個人輸入されたりしています。漢方薬は通常の医薬品と違って副作用がないと考えられがちですが、小柴胡湯による間質性肺炎など、最近いろいろな副作用が報告されています。「漢方薬は安全」という先入観をなくし、注意深く利用することが必要です。

ここでは、最近発表された漢方薬の副作用についてリストアップしてみました。

漢方薬による肝臓、腎臓障害
最近、海外では漢方薬による肝臓や腎臓の障害が相次いで報告されています。それらはいずれも漢方薬に混入した他の植物に由来するもののようです。以下の論文では、しばしば漢方薬に間違った植物が利用された結果、副作用が出てしまったのではないかと推測しており、十分な規制が必要である指摘しています。
Herbal Toxicity and fatal hepatic failure
雑誌:Am. J. Med.、106; 267, 1999
Fetal hepatitis after herbal tea
雑誌:Lancet.、340; 674, 1999
解説:前者は漢方薬によって、後者はハーブティーによって、重篤な肝障害をきたし死亡した例が報告されています。ハーブに含まれるpyrrolizidine alkaliodsやgermanderは肝障害を起こすとすでに報告されているといいます。前者の場合、skullcapと間違われてgermanderが漢方薬に使われていたために肝障害が起こったのではないかと著者は推測しています。後者の場合も、Tealineと呼ばれるダイエットハーブにwild germanderが入っていたのではないかとコメントしています。

Nephropathy caused by Chinese herbs in the UK
雑誌:Lancet、354; 481, 1999
急速な腎機能低下をきたした民間療法によるChinese herbs nephropathy
雑誌:日腎会誌、39巻794頁、1997年
Urothelical carcinoma associated with the use of a Chinese herb(Aristolichia fangchi)
雑誌:N. Engl. J. Med.、342;1686, 2000
解説:ベルギーのある診療所から処方されたダイエットハーブが原因で腎障害が多発したことがありました。これは、本来Stephania tetrandaが含まれるべきところ、Aristolochia fang chiという植物が利用されてしまったことが原因です。これにはaristolochic acid(アリストロキア酸)という物質が含まれており、これが腎障害の原因になります。このような例がベルギーばかりではなく、イギリスや日本でも報告されているのです。田中敬雄氏らは関西地方でのChinese herb nephropathyが多発したことを報告し、それはこのアリストロキア酸が含まれていることを指摘、それ以後アリストロキア酸が含まれる漢方薬は回収され、現在日本の製薬会社が作る漢方薬にはアリストロキア酸は含まれていないようです。しかし、まだ個人輸入されている漢方薬にはこれが含まれている可能性があり、上記の日本の論文は輸入漢方薬による腎障害の例です。このように毒性のある植物が混入する理由として、田中敬雄氏らは、漢方薬に含まれる「木通」は日本ではAkebia Stemを指すが、中国産の「木通」はAristolochium Rootであり、これが成分の間違いを起こすのではないかと指摘しています。N. Engl. J. Med.に掲載された論文では、Chinese herb nephropathyとなり腎移植を受けた患者さんの取り出された腎臓を調べた結果、39例中18例(46%)と高率に尿路系のガンが発生していたと報告しています。漢方薬といえども十分な成分の検査が必要であることを示しています。

漢方薬服用による血小板減少症
雑誌:Lancet, 354; 304, 1999
解説:漢方薬により血小板減少をきたした日本人女性の例が報告されています。彼女は以前より糖尿病がると健診で指摘されていましたが、医療機関での治療を受けず、血糖を下げる目的で漢方薬(Jui)を服用していました。血小板減少に伴う出血傾向があったため、病院に受診し、原因がこの漢方薬によるものであると判明しました。

漢方薬摂取によってTorsades de pointesを引き起こしたLong QT syndromeの1例
雑誌:心臓、29巻Suppl. 113頁1997年
解説:Torsades de pointesは危険な不整脈の一つです。この例では、もともとQT syndromeという不整脈を起こしやすい患者さんが、漢方薬を服用し、その成分である甘草のため、低カリウム血症をきたし、その結果この不整脈をきたしたものでした。

市販薬剤「金鵄丸」による肝障害
雑誌:medicina、32巻590頁1995年
解説:最近は漢方薬の副作用もいくつか報告されていますが、市販の漢方薬でも、改源、正露丸、恵命我神散などで肝障害が報告されているそうです。中でも金鵄丸による肝障害はすでに11例も報告されているそうです。服用開始後、1ヶ月半から8ヶ月の間に黄疸、食欲不振、全身倦怠感などが生じ、血液検査により肝障害が発見されます。多くは服用を中断することで1〜3ヶ月で肝障害は回復しますが、死亡例もあるとのことですので注意が必要です。

通信販売で購入した漢方薬治療により増悪し、重篤な伝染性膿痂疹の合併をみたアトピー性皮膚炎女児例
雑誌:皮膚臨床、40巻6号1998年
解説:アトピー性皮膚炎に対し、ステロイド外用薬を使用していたが、知人にイオン化粧品を勧められ、これを使用したところ皮疹が悪化。その後、通信販売で購入した漢方薬を内服したところ、足と体が広範にただれ、発熱とかゆみが生じました。これは、皮膚炎が悪化し、感染を起こしたためです。しかし、このとき母親が漢方薬局に問い合わせたところ、「ステロイド外用薬のリバウンド」と説明され、医療機関への受診が遅れ、重症化してしまいました。しばしば、民間療法によりアトピー性皮膚炎が悪化した場合、「過去に使用したステロイド外用薬のため」とされてしまい、重症化する例があると、著者は警告しています。

インスリン非依存型糖尿病に発症した漢方薬(珍ぎ降糖)による鉛中毒
雑誌:糖尿病 41巻、933頁、1998年
解説:ここでは中国から個人輸入された漢方薬で鉛中毒を起こした2例が報告されています。二人とも腹痛のため医療機関を受診し、その原因が鉛中毒であることが判明しました。二人が飲んでいた漢方薬を調べたところ鉛が検出され、鉛中毒はこの漢方薬であると考えられました。海外でも漢方薬による鉛中毒が報告されています。また、アメリカでの調査では輸入漢方薬の中には鉛ばかりでなく、砒素や水銀が検出されたということですので、漢方薬の個人輸入や輸入漢方薬を利用すべきではないと思います。

漢方薬による肝障害にて死亡した例
雑誌:Am.J.Med 106;267-8
解説:米国では漢方薬は健康食品の一つで、医薬品のような効果や安全性のチェックは必要なく、製造者がその成分の内容や量が性格であるかを保証する必要もありません。(日本の場合、一部は医薬品として扱われています。)すでに、この報告の前に漢方薬で肝障害をきたした例が4例報告されていまが、この報告ではこれらはほんの氷山の一角であるといっています。また、この報告では今回漢方薬で引き起こされた肝障害の原因は、漢方薬に混入していた毒性のある植物であるとしています。米国での調査では輸入漢方薬にはいろいろなものが混入していると報告されています。日本で認可されたもの意外は使用すべきでないと思います。

輸入漢方薬中の不純物調査
雑誌:N.Engl.J.Med 339;847,1998
解説:すでに輸入漢方薬には、表示されているかいないかにかかわらず、認可されていない成分が含まれているほか、砒素や水銀などの有毒な成分や重金属が混入していることがすでに報告されています。このことから、カリフォルニアの保健局(Department Health Service)では輸入漢方薬の混入不純物を調査しました。260銘柄を調べた結果は以下の通りです。
医薬品を含んでいる表示があった 14銘柄
表示されていない医薬品が含まれていた 17銘柄
(主なものはフェナセチン、クロロフェニラミン、メチルテストステロン、フェナセチンなど)
以下の毒物が混入していた。
10 ppm以上の鉛 24銘柄、砒素 36銘柄、水銀 35銘柄
260銘柄のうち表示されていない医薬品や重金属の検出されたものは83銘柄(32%)にものぼりました。
輸入漢方薬には十分注意が必要です。

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