クロレラの副作用と薬剤との相互作用(00.12.28)



クロレラを売り出しているある会社に資料請求をしたところ、パンフレットの中の「医薬品による副作用との違い」という項に気になる記述を見つけました。

クロレラを服用していると、次のような兆候が出ることがあるそうです。
(1)ガスが出る。
(2)ニキビ、吹き出物、湿疹が出ることがあり、人によっては痒みを伴う。
(3)吐き気、下痢、便秘、微熱などが出ることがある。

これらのことについて、このパンフレットでは
「これらの兆候は良く医薬品の副作用と混同されますが全く異質のものです。医薬品の副作用の場合、サリドマイド、ストマイ、キノホルムなどの例をひくまでもなく、100人が100人とも同じ様な症状を呈しますし、多くの場合その副作用は明らかに新たなかつ重大な疾病でありその医薬品の服用を中止しても完治する類のものではありません。」
と説明しています。

しかし、この記述は明らかに間違っています。サリドマイド、ストマイ、キノホルムなどのマスコミで騒がれた重大な副作用を引き合いに出していますが、薬の副作用は軽いものから重症のものまでいろいろあり、これらマスコミで取り上げられるようなものばかりが副作用ではありません。上記の症状(1)、(2)、(3)は、明らかにクロレラの副作用といえます。ある種の糖尿病治療薬の副作用の主なものは「ガスが多く出る」というものですし、湿疹、吐き気などの症状は、多くの医薬品の副作用として報告されています。これらの医薬品の多くの副作用は、原因となる医薬品を中止することによって完治します。「医薬品の服用を中止しても完治しない」場合のみが副作用、というのは誤った認識ですし、医薬品の副作用とて「100人が100人とも同じ様な症状を呈する」とは限りません。むしろそういった場合のほうが少ないのです。 

その後、2000年11月にある別のクロレラの販売会社よりお手紙をもらいました。この会社は良心的な会社で顧客サービス担当の方からのお手紙でした。その手紙では、次のような質問や意見が述べられていました。

1)人によっては牛乳などで下痢をすることがある。この場合は牛乳の副作用とは呼ばない。従って、クロレラを食べたことで発疹や下痢を来したからといって、これを副作用と呼んでよいのか?また、クロレラの副作用が多いとしているが、これは考え方の問題であり、必ずしもそうとはいえないのではないか?

2)クロレラ摂取による光過敏症は、その生成過程で生じるフェオホルバイトによるものと考えられ、これはすでに昭和56年に厚生省により規制されている。従って、最近は光過敏症の副作用はないのではないか?

3)クロレラとワルファリンとの相互作用については、会社では注意を喚起している。ワルファリンはきちんとした医師の指導や検査結果をもとに調節されているはずであり、その問題をクロレラの責任だけに転嫁することはよくないのではないか?また、相互作用は副作用と呼ぶべきではないのではないか?

私としてはこれらの意見に対し、以下のように考えます。(これは、お手紙を頂いた会社の方にもお送りしました。)

クロレラの副作用についての見解
クロレラは健康食品のひとつであり、これは現在食品として扱われています。したがって、その摂取により下痢や発疹が出たとしても、これを副作用と呼ばないという考え方も確かに成り立ちます。しかし、通常の食品を食べるときは、「おいしそうだから食べてみたい。」「興味あるので食べてみたい。」と感じて食べます。それに対して、クロレラの場合、多くの方はクロレラに健康に対して何らかの好ましい作用を期待して摂取するのではないかと思います。ですから、健康に対して好ましい作用を期待して摂取したにもかかわらず、好ましからざる作用が現れてしまった場合、これを副作用と呼んでよいのではないかと思います。つまり、もしクロレラにより便秘や下痢、胃部不快感、かゆみ、発疹などが現れたことがはっきりしていれば、これらは副作用であると考えてよいと思います。
これらを副作用と呼ぶか呼ばないかにより副作用が多いかどうかについての見解が分かれると思います。しかし、1992年(少し古いですが)での国民生活センターに寄せられた危害報告でもクロレラは1番多く、国民生活センターでもたびたびクロレラを取り上げています。国民生活平成8年3月号によれば、PIO-NETに寄せられた3万件あまりの健康食品の苦情の25%がクロレラに関するものです。86年より95年までの苦情の内クロレラにより体調を崩したり、下痢をしたりするなど身体的被害が発生したというものが724件あります。これは消費者からの報告であるため、必ずしも因果関係がはっきりしているとは言えません。しかし、すべての人がPIO-NET に苦情を訴えるわけではありありませんので、その背景にはより多くの被害があるものと推測されます。これは他の健康食品と比較しても多いと思います。また、プロポリスは別としても医学雑誌に掲載されるクロレラによる副作用報告も他の健康食品に比べても多いようです。利用者が多いということもあるのでしょうが、やはり注意を喚起すべきであると思います。
光過敏症について最近の報告では、静岡県での光過敏症のアンケート調査があります(1995年)。この中では、クロレラが原因と考えられる光過敏症の例が7件あったと報告されています(臨皮50巻、493頁、1996年)。また、クロレラによる肝障害を報告した論文(医学のあゆみ 183巻、295頁、1997年)の中で、クロレラによる光過敏症の報告例(皮膚科診療16巻、617頁、1994年)が紹介されています。これらがフェオホルバイトによるものかどうかは明らかではありませんが、厚生省の規制後も光過敏症の例があることは確かであると考えます。

クロレラとワルファリンについて
医師の中にはビタミンKとワルファリンとの関係について充分説明をしていないものもいるかもしれません。確かにそのような場合は医師に問題があると考えられます。しかし、患者さんは必ずしも医師に健康食品を摂取していることを伝えているとは限りません。また、クロレラを販売する会社によっては、クロレラとワルファリンとの関係についてちゃんと消費者に伝えていないケースもあるかもしれません。したがって、クロレラとワルファリンとの関係について情報提供をすることは重要であると考えます。
また、薬との相互作用を副作用と考えるかどうかについてですが、これはあくまでも相互作用と表現すべきで、私としても相互作用を副作用のひとつとしてとらえているわけではありません。健康食品等のマイナス面を一まとめにして読者に分かりやすくするため同じ頁に書いています。
ワルファリンを服用している患者さんがクロレラを服用したことにより、病状が悪化したとする報告はないと思います。しかし、医師がきちんと凝固能をチェックしない、医師がクロレラとワルファリンとの関係を教えていない、患者が医師にクロレラを摂取していることを告げない、患者がワルファリンを服用していながら都合により医療機関を受診しない、クロレラを販売する会社がワルファリンとの相互作用について説明しない、等々いろいろなことが起こり得ます。クロレラだけが原因でなくてもいろいろな原因が重なることにより問題が起こる可能性はあります。消費者にクロレラとワルファリンとの関係について情報提供をすることで、少しでもこのようなリスクの軽減を図ることができるのではないかと考えています。

以上が私の意見です。

今までに報告されたクロレラの副作用についてまとめてみました。

クロレラによるリンパ球刺激試験の反応
雑誌:医学のあゆみ、183巻295頁1997年
解説:この論文ではクロレラによる薬剤性肝炎、肝不全を来した9歳の男児例を報告しています。このとき風邪薬などを服用していたため、原因薬剤を調べるためリンパ球刺激試験をしたところ、クロレラのみで強陽性が出ました。しかし、クロレラは非特異的にリンパ球幼若化反応を起こすので注意が必要であると言っています。

静岡県における医薬品の関連した光過敏症についてのアンケート調査
雑誌:臨床皮膚科、50巻493頁1996年
解説:この論文は、静岡県で行った医薬品による光過敏症の実態調査の結果を報告したものです。医薬品に混じって、クロレラによると思われた光過敏症の例が7例報告されています。

クロレラによる扁平苔せんの1例
雑誌:臨床皮膚科、52巻1084頁1998年
解説:67歳の女性がクロレラを食べたところ、前腕、下肢に発疹ができ、扁平苔せんと診断されました。クロレラを中止したところ、この発疹は改善しました。

薬疹1994アトピー性皮膚炎患者にみられたクロレラによる光線性白斑黒皮症
雑誌:皮膚病診療、16巻617頁1994年

クロレラ錠による中毒疹で紅皮症となった成人アトピー皮膚炎の1例
雑誌:日本皮膚科学会雑誌、103巻419頁1993年

クロレラによる播種状紅斑丘疹型薬疹の1例
雑誌:広島医学、51巻818頁1998年

健康食品産クロレラの服用により薬剤性肝障害を呈した一例
雑誌:肝臓、31巻(suppl.3)87頁1990年

市販健康食品の金属元素含有量 セレン錠剤中セレンの存在形態
雑誌:Biomedical Research on Trace Elements、9巻63頁1998年
解説:この研究ではクロレラおよびスルピリナを主成分とする健康食品の一部に鉛が検出されたと報告しています。また、他の健康食品にカドミウムやアルミニウムが検出されています。量的には微量であり、この量では直接健康を害することはないとしていますが、長期にわたって摂取した場合、有害作用を引き起こす可能性もあると警告しています。

クロレラが原因と考えられた急性肝不全の1例
雑誌:Minophagen Medical Review、42巻333頁1997年

クロレラによる中毒疹の2例
雑誌:臨床皮膚科、51巻1109頁1997年
解説:ここでは、クロレラにより皮疹が出た二人の例を報告しています。再投与試験、パッチテストなどにより、クロレラが原因であることが明らかとなりました。

以下はクロレラの副作用というわけではありませんが、クロレラと医薬品の相互作用についての情報提供も重要であると思い、付け加えました。

ワルファリン療法と健康食品クロレラ
雑誌:臨床神経学、35巻806頁1995年
解説:ワルファリンは血栓が形成されることを予防する薬で、脳血栓を起しやすい人や心臓の手術をした人が服用します。この薬の効果はビタミンKを摂取することによって減弱するため、ビタミンKを多く含む納豆やプロッコリーを食べないように指導されます。この論文はクロレラもこのワルファリンの効果を減弱させる可能性があることを指摘しています。実は、クロレラにはある程度、ビタミンKが含まれているようです。したがって、ワルファリンを服用している方はクロレラを摂取しない方が良いと思います。

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