私の健康食品に対する考え方(00.12.28)

最近はいろいろなところで健康食品が取り上げられるようになりました。私のもとにくる質問メールの中で最も多いのは健康食品に関するものです。これは、病気の中心が肺炎などの急性疾患から糖尿病、高血圧などの生活習慣病に移り、皆さんが健康について自己管理の重要性に気が付いてきたからだと思います。健康の維持、増進に役立つ食品、健康食品をとって、病気を予防したりしたいと考えているのではないでしょうか?しかし、私のHPでも示したとおり健康食品といえども必ずしも安全とは言えず、その摂取には十分注意したほうがよいと考えています。
現時点では健康食品という言葉にははっきりした定義はありません。財団法人日本健康・栄養食品協会では「保健、健康維持の目的で用いられ、通常の食品とは異なる形態の粒状、カプセル状などの食品」と定義しています。これに対し米国ではdietary supplement(栄養補助食品)というカテゴリーがあり、医薬品などを管理するFDAに申請することなく、その表示にある程度の効能などを表示してよいことになっています。このため、医療費の高い米国では健康食品産業は飛躍的に売上を伸ばしています。1999年には3兆円の売上があるといわれています。このような大きな産業がターゲットにしているのが日本の市場です。そのため、米国の圧力もあり、また日本での健康食品の問題(たとえば効果がないのに法外な値段をつける、規格が統一されていない、薬でないのに病気に効くと売りつけるなど)もあってか、厚生省は保健機能食品というカテゴリーを作るようです。(これについては正式に発表されたら、このホームページでも紹介したいと思います。)

多くの人たちは健康食品に何らかの効果を求めています。コレステロールを下げたい、血糖を下げたい、やせたい、癌を治したい、等々。しかし、このような作用がはっきり証明されているものは極めて少ないといわざるを得ません。しばしば、他のところでも指摘したように最近は基礎実験がいくつも発表されるようになりました。しかし、きちんとした臨床試験はまだまだ少ないのです。臨床効果が認められた健康食品については徐々にこのホームページでも紹介したいと思いますが、現実的には日本のものはほとんどありません。たとえば、イチョウ葉エキスという健康食品があります。最近、痴呆の進行を遅らせると注目されている健康食品です。(決して痴呆を改善するわけではありません。)しかし、この効果が証明されているのはドイツ製あるいはフランス製のイチョウ葉エキスです。これらは、イチョウ葉からアセトン抽出という方法で有効成分を取り出しています。しかし、日本製のイチョウ葉エキスは水抽出かアルコール抽出です。これは日本では食品としてはこの2つの抽出方法しか認められていないからです。(医薬品としてならアセトン抽出は認められます。)抽出方法が違えばその成分も変わってしまう可能性があります。つまり、日本で売られているものではその効果が証明されていないということです。しかも、同じイチョウ葉エキスといっても規格基準がないため、その成分組成は皆違います。このように臨床研究があったとしても直ちに信用するわけには行きません。今後、日本の特定の商品で臨床研究がなされ、その効果が証明される必要があります。

他で述べたとおり、健康食品には副作用のあるものがあります。健康食品を選択する場合には十分注意する必要があります。

健康食品を利用する際に考えることは、
どの程度の効果を期待するか?
どの程度の副作用なら許されるか?
どの程度の金額ならその効果に見合うか?
の3点です。
人によってはたとえ効果があまりなくても、副作用がなければよいという人もいるでしょうし、たとえ副作用があったり、高額であってもそれなりの効果があればよいと考える人もいるでしょう。したがって、これらの基準は各自それぞれが考えるしかありません。

いずれ、厚生省が保険機能食品についての基準や食薬区分の見直し(一部の健康食品では病気に対する効果が臨床研究でも証明されているものもあり、これを食品ではなく、医薬品として扱うべきだという意見があります。)を行うでしょうが、皆さんが健康食品を考える上で参考となる分類を考えてみました。

私は、健康食品を「健康に対する特定の効果を期待して、一般の食品とは別に摂取するもの」と広く定義し、それを次の三つに分類するとその役割がはっきりするのではないかと考えています。

1)栄養補填型健康食品

2)食品成分型健康食品

3)薬効成分型健康食品

栄養補填型健康食品

これはビタミン、ミネラルの類を主成分とした健康食品をさしています。栄養学的な位置付けが比較的確立しており、どれくらいとったらよいか厚生省の発表する栄養所要量にも示されている。また、欠乏症、過剰症などのデータも豊富にあります。この型の健康食品はあくまで食事だけでは足らない栄養素を補給するのが目的ですので、食事の内容と見合わせて摂取する必要があります。多くは余分に摂取しても意味はあまりありません。

食品成分型健康食品

これは、昔から人間が食べていた食品に含まれる機能的成分を主成分とした健康食品です。たとえば、大豆に含まれるイソフラボン、緑茶のカテキン、魚の油のEPAやDHA、ブルーベリーに含まれるアントシアニンなどがあります。これからも、いろいろな食品成分の効果が研究され、市場に出てくるでしょう。人間が以前より食べているものですので、ほぼ安全だと考えられます。一部の成分の役割、たとえばイソフラボンの骨粗鬆症に対する効果などはかなり分かっているものの、大部分の機能については現在研究途上ですので、過大な期待は禁物ですが、病気の一次予防などに利用できるかもしれません。ただし注意しなければならないこともあります。人間の永い歴史の中ではこのような一部の成分だけを大量にしかも長期に摂取した経験はないので、長期摂取の安全性は確立しているとはいえないということです。今後の研究やいろいろな副作用情報に注意する必要があります。

薬効成分型健康食品

最近最も注目されている健康食品です。これは、日常的にたべていないものに含まれる成分を元にした健康食品をさしています。たとえば、プロポリス、イチョウ葉エキス、セント・ジョーンズ・ワートなどのほか、風邪の治療などに使われるエキナシアなどがあげられます。これらは私たちの食卓には上らないものです。なぜこのようなものを健康食品としてとるかといえば、もちろん何らかの薬効を期待してのものです。しかし、一部のこのタイプの健康食品ではその効果が認められていますが、大部分は基礎研究どまりか、わずかな症例報告に基づいたものです。しかも、もともと人間が食べていたものではありませんので、摂取して安全かどうかは未知です。このような健康食品を考えている方は、まずその安全性に注目すべきでしょう。重大な副作用が報告されていないかどうか、どの程度で副作用がみられるかどうかのデータを探す必要があります。その上でその効果が人間を対象とした試験で証明されているかどうかを調べる必要があります。できればランダム化比較試験にてその効果が証明されていることがベストです。
ただし、癌の患者さんなどではわらをもすがる思いの方もいらっしゃるでしょう。そのような方にとってはたとえきちんとした臨床研究がなくても、基礎研究である程度の抗腫瘍効果が認められていさえすればよいといえる場合もあるかと思います。そのような場合でもきちんとした基礎研究があるかどうかは最低限必要です。何の根拠もなく癌に効くという話にはのらないほうが無難です。しかも、癌に対する健康食品の場合は、足元を見られ、高くふっかけられる可能性もあります。期待される効果にその金額が見合っているかどうか、冷静に考える必要があります。過大な期待は禁物ですし、まずきちんとした医療を受けた上で考慮すべきであると思います。

参考資料

厚生省「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会報告書概要」
http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/1203/h0327-3_13.html

財団法人日本健康・栄養食品協会
http://www.health-station.com/jhnfa/

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