雑誌の健康情報の読み方(2000.1.30)

 

I. タイトル

タイトルにだまされない

II. 構成

1)冒頭の体験談


2)科学論文との違いを知る


III. 内容

1)表現に注意する-誇張された言葉、極端な表現、流行語の利用


2)論理の展開に注意する

ステレオタイプ的な考え方
ほめるより非難する
解釈、引用の問題
場違いの引用、こじつけはないか
論理の展開の仕方

3)データの解釈

学会発表と論文掲載の違い
情報源の信頼性
データの示し方

 


I. タイトル

タイトルにダマされない

電車の中吊り広告でもわかるとおり,雑誌のタイトルは人目を引くように作られています。このことは必ずしもタイトルが内容の要約となっていないことを示しています。極論すれば,内容がおもしろくなくても,タイトルで雑誌を買ってもらえればよいわけです。たとえば,ダイエットに関連した記事などをみればわかります。如何にダイエットに良さそうな雰囲気のタイトルであっても,実際内容をみると結局ダイエットには役に立たないことがかかれていたりします。例えば、このホームページでも紹介した「俗説くつがえすビールダイエット!?アルコールだけでは太らない(週間朝日99年6月4日号)」をみて下さい。タイトルにはビールダイエットという言葉がありますが、内容をみるとあくまでも「ビールは額面ほどのカロリーとしては蓄積されない」とうことであって、ビールを飲むと痩せられるわけではありません。同じようなことが「評判の「豚肉ダイエット」理由と実行マニュアル(週刊ポスト99年7月16日号)」でもいえます。その他、癌の治療についての記事には誇大なタイトルが目につきます。「ガンが治った!」というタイトルを付けながら、きちんと科学的検証がなされていない例がめだちます。「続東洋医学大研究1 「気功で「がん」が消えた!」(サンデー毎日 97年9月28日号、10月5日号、10月12日号)」「驚異 免疫療法で末期がん7割が生還(週刊読売99年7月18日号)」「科学的に立証!カレーライスが癌に効く!(週刊現代99年6月26日号)」など、私の解説と比較していただければ、その内容との違いがわかると思います。

II. 構成

1)冒頭の体験談は無視せよ

雑誌の記事では,しばしば冒頭にどこにでもいるような人の体験談などを引用します。これで,読者に親近感を抱かせ,記事を読ませようとします。確かにこの方法は読みやすさを演出します。しかし,こと医学的な問題になると,このような個別的な事例は,あまり意味がありません。隣のおじさんに当てはまったことが,あなたにも当てはまるとはいえないからです。医学的には多くの人たちにもそのことが当てはまることを紹介しなければ意味がないのです。そのおじさんの話は特別な事例なのかもしれませんから。医学的な内容をあつかった記事の場合,個別的な事例は無視して読んだ方がよいと思います。ある気功が癌に効果があったという記事の冒頭では、気功で乳癌がよくなった患者さんの例をそのページ半分を使って詳細に記載しています。その他、ビールダイエットの記事では、最初にビールでダイエットに成功した人の話がでています。これらが、読者みんなに当てはまるわけではありません。

2)マスコミ記事と科学論文の書き方の違いを知る

マスコミ記事には最初に結論があります。その結論にあうように情報をあつめ、都合の悪い情報は抹殺されるか、何らかの難癖を付けて否定的な書き方をされます。例えば、ある治療法がガンに効くという記事があったとします。週刊誌の記者は、ガンがよくなった患者さんを一生懸命さがし出し、それを記事にします。ところが、ガンがよくならなかったり、かえって悪くなってしまったようなケースは都合が悪いので載せません。その結果、どんな人にもその治療法が効くかのような印象を与えてしまいます。これに対し、科学論文の場合、都合の良いデータばかりを載せたりすると,論文審査の際にそれに反するデータや過去の論文について言及するように要求されます。また、重要な研究ならば追試がなされ、その情報が検証されます。しかし、雑誌の記事の場合、あらかじめ第三者のチェックはありませんし、あとで誤りが判明したとしても、一度流れた情報はなかなか修正がききません。内容の正確さよりインパクトを重要視したり、スポンサーにきがねしたり、一般の読者の感情を逆撫でするような内容については避ける傾向があるため、内容がゆがめられる可能性もあります。うそは言っていないけれども,真実も述べていない、ということもありえます。

III. 内容

1)表現に注意する-誇張された言葉、極端な表現、流行語の利用

誇張表現に注意

雑誌の目的は多くの人に読んでもらうことです。そのため,針小棒大な書き方をして,大したことでもないのに重大な情報であるかのように書くこともあります。よく読んで冷静に判断することが重要です。ある記事には「悪性の乳癌」という言葉が使われていました。(悪性度が高いという記述が医学でも使われますが。)ガンはみな悪性です。あえてこのような言葉を使う必要はないのです。いかにも効果があったかを印象づけることが目的であったと考えられます。

極端な表現に注意せよ

えてして、大したこのない情報にかぎって過剰な形容詞が使われることがあります。重要な情報なら誰がみてもわかるもので、大げさな形容詞は不要です。大げさな表現がある場合は、疑ってかかる方がよいかもしれません。

流行の言葉の誤用、不理解を見つける

環境ホルモン、化学物質過敏症、など、最近は新しい言葉が多く出回っています。しばしばこれらの言葉は多くの人たちの興味を引き、記事として取り上げやすくなります。しかし、新しい概念だけに、記者がその内容を熟知しているとは限りません。

2)論理の展開に注意する

マスコミ特有のステレオタイプを見抜く(世論に迎合した論理展開)

西洋医学は病気を診て人を診ないが東洋医学は人を診る
確かに,西洋医学は分析的であり,客観的なデータを重視します。そのため検査結果、治療手技などにとらわれやすく,患者さんの状態や心情に対する配慮が欠けることがあります。しかし,これらは医師の心構え次第で改善することであり,きちんと患者さんを診ている医師は大勢います。西洋医学そのものの問題ではありません。医師はこうあるべきであるという一般的な理想像があるため,これにはずれた医師はおのずとクローズアップされます。あたかも,それが大部分の医師であるかのように。一方、東洋医学を採用している医師はまだ少なく,彼らは注目されます。彼らは注目されることを承知してますから,よいところを見せるようにするでしょう。「西洋医学は病気を診て人を診ないが東洋医学は人を診る」東洋医学について扱った記事には、このようなステレオタイプ的な書き方がみられます。例えば、驚異 免疫療法で末期がん7割が生還(週刊読売99年7月18日号)ではある病院で行われている温熱療法の他、東洋医学的な治療をもちあげていましたが、その後「週刊読売」トップ記事が絶賛した統一教会系病院の「カネと評判」(週刊朝日99年99年7月23日号)にてその病院の問題点を指摘されています。

カロリーが少なければダイエットに使える
摂取カロリーを減らせば,やせることができることは事実です。しかし,カロリーの少ないものを摂ればやせられるかと言えば,そうとは限りません。カロリーが少ないからといっても食べすぎればかえって太ってしまうことさえあります。アメリカでの報告では、たとえlow fat dietをとっていても結局食べる量が増えてしまい、痩せることができない人が多かったと報告されています。カロリーの少ないもののメリットは,見た目は同じでも摂取カロリーを減らせるということだけです。「俗説くつがえすビールダイエット!?アルコールだけでは太らない(週間朝日99年6月4日号)」「評判の「豚肉ダイエット」理由と実行マニュアル(週刊ポスト99年7月16日号)」などはその例です。確かに豚肉は牛肉に比べればカロリーが少ないかもしれませんが,食べすぎれば太ってしまうことについては他の食べ物と同じこと。豚肉を食べたからといってやせられるわけではありません。食べたいけれどやせたいという人の弱みにつけこんだ記事といえます。

自然、天然は安全だが、化学合成は危険
雑誌ばかりではなく,いろいろなものの広告で使用されるフレーズです。この根底には、西洋医学=化学合成品、東洋医学=天然成分、という図式があります。しかし,ご存じの通り,漢方薬でも副作用があるように、天然,自然のものでも体に悪いものははたくさんあります。逆に、化学合成品でも安全性の高いものもたくさんあります。多くの雑誌の中のちょっとした表現にこのような誤解を見て取ることができます。詳しくは”天然、自然”は安全?をごらん下さい。

ほめるより非難する

健康関係の記事に限らず、週刊誌の目次を見てみると、どちらかというと否定的に書かれた記事の方が目につきます。どうもほめる記事より、非難する記事の方が一般受けするようです。まれではありますが、「買ってはいけない」にみられるように、ある相手を攻撃するためにありとあらゆる情報を動員する場合もあります。批判的な記事の場合、どこまでが真実なのか、注意して読む必要があります。

解釈、引用の問題。非科学的解釈はないか

記事を書く記者らは必ずしも科学的な素養があるとは限りません。したがって,彼らの論理展開は問題のあることがあります。動物実験の結果があたかも人にも当てはまるかのように書いたり,食生活の異なる日本人と欧米人を同等に扱ったり,個別的な事例を一般化してしまったり,いろいろあります。雑誌ではありませんが、”健康教祖”みのもんたにブーイング(週刊文春98年12月3日号)にマスコミでしばしばみられる科学的データの解釈の問題点について書いてありますので、参照して下さい。

場違いの引用、こじつけはないか

記事の中では自説を裏付けるため,いろいろな内容を付け加えます。そのため,知ってか知らずか中には関連のない問題を引用していることがあります。ある治療法の効果を証明するのに全く他のデータを引用したりします。たとえば、驚異 免疫療法で末期がん7割が生還(週刊読売99年7月18日号)では、ガンの治療に対する心理的な効果について海外のデータを示しています。ガンの治療効果に心理的な影響があることはわかりますが、この記事で取り上げた病院での治療法とは全く異なるものであり、海外のデータを引用することは不適切であると思います。

論理の展開の仕方

誤った論理展開はないか
記事の中には時に疑問を感じる論理の展開が見られます。 たとえば、中国人は中華料理を食べているのに肥満が少ない。などということを耳にします。ダイエットのための中国茶の宣伝などにみられます。しかし、本当に中国人は日本で食べているような中華料理を毎日食べているのか(実際はもっと質素な食生活であると思います。)。本当に肥満者は少ないのか(最近増えてきているとのことです。)。といった問題をしっかりふまえた上で議論すべきなのです。単なる印象だけで、ある結論を引き出すことは危険です。同じような論理に、「あるものを食べている人に病気が少ない=あるものは病気に効く」というものがあります。これだけでは因果関係を論ずるわけにはいきません。

3)データの解釈

学会発表と論文掲載の違い

学会発表だけでは不十分
しばしば学会発表で話題性のあるものが記事となります。例えば、癌学会で食事とガンの関係についての発表があるとそれが記事に載ったり、肥満学会でトピックがでると記事で取り上げられたりします。確かに、学会で注目すべき発表は多く行われます。しかし、一方では大した研究でもないのに学会で仰々しく発表されるケースもあるのです。学会発表の審査は雑誌の論文審査より甘いケースが多く、その実験デザイン、結論の解釈に疑問のある研究も少なくありません。重要な研究はあとで必ず論文として発表されます。それに対し、学会発表のみで論文とならないものも数多くあり、これらは打ち上げ花火のようなもので、時間がたてば忘れ去られます。

情報源の信頼性

データの示し方

人柄とその人の出したデータは別である
記事の中には、ある情報を提供した人の肩書きや人柄から、その情報がいかにも重要であるかのようにみせる場合があります。確かに、情報を提供した人が信頼できればその人の提供した情報も信頼できるかもしれません。しかし、著名人が述べたからといっても専門外のこともありますし、単なる思いこみにすぎないこともあります。まず、情報の発信者と情報そのものを区別して評価することも必要です。

客観的なデータを示しているか?
雑誌記事が科学情報を載せる場合、実際のデータを掲載することはあまり多くありません。結論のみを載せたり、専門家の解説を載せたりするケースが多いようです。この場合、どこまで記者や解説者の意見が入っているかを見極める必要があります。あるいは、実際のデータを載せている場合でも、グラフのスケールの取り方、統計学的な評価がきちんとなされているかに気を配る必要があります。

[ 「メインページ」へもどる ]