BeeSpiを使った実験例

1.はじめに

今まで物体の速さを測定する道具として記録タイマーが一般的であった。 これは高校だけでなく,中学校にもある器具で物理の教科書にも登場する。 この記録タイマーの良い点は,単位時間当たりの移動距離という「速さ」の 意味を教えるために,非常に役に立つ測定器である。 しかし,この測定器は紙テープにカーボン紙を用いて打点を残すという スタイルをとっているため,どうしても抵抗というものがついて回るため, 運動を完全に記録できるわけではない。また,理由がよくわからない打点 が打たれることもあって,説明に困ることが多い。
さて,昨年NIFTY-SERVE教育実践フォーラム専門館【理科の部屋】で,この 記録タイマーにとって変わるかもしれない新しい実験器具が紹介された。 それは「BeeSpi」と呼ばれるもので,もともとはミニ4駆などの速さを測る 道具であるが,非常に安い値段で簡単に速さが測れるという点が魅力的で あった。その後この記事を読んだ全国の理科教師達が,この機械の性能を 調べたり,これを使っての実験を考案したりした。私自身もこの記事を読んで すぐに探したのだが,近辺で販売している店がなかったりしたせいもあって, なかなか実験することができなかった。
最近になって,ようやく手に入れることができたので,遅蒔きながら基礎的な 実験をいくつか行うことによって,この計測器が生徒実験に使えるかどうかを 確認してみた。ここにその結果を報告する。

2.BeeSpiの基礎データ

BeeSpiを用いて測定できる物理量は,速さ(km/h),ラップタイム(1/100秒) ,積算時間(99.99秒まで)である。詳細なデータはおもちゃなのでわからない が,時間についての精度はどうやら10^-5秒程度らしい。この部分はこれから 発売元のハドソンなどに聞いてみる以外は解決方法はなさそうだ。ただ,表示 される時速から推定すると,このあたりに落ち着く。
基本的には機械の2点に赤外線センサーが付いていて,この2点間を物体が 通過するときの平均の速さを測定している。センサーの間隔は約4cmである。 外観は下の写真を参照。

3.重力加速度の測定(ボールの自由落下)

このBeeSpiを2台用いて重力加速度の値を測定する実験を行ってみた。 装置の外観は次の通りである。
2台のBeeSpiの間隔はいくつかのパターンで試してみた。なお,計算式には V^2-V0^2=2axの式を用いた。
間隔15cm
No.1台目の表示(Km/h)2台目の表示(Km/h) 計算した加速度(m/s^2)
1.8.079.998.91
2.8.079.928.56
3.8.079.938.61
4.8.0710.029.07
5.8.0810.029.03
6.8.0810.089.34
7.7.999.918.83
8.8.0810.018.97
9.8.0710.059.22
10.7.9810.049.54
平均9.01


間隔50cm
No.1台目の表示(Km/h)2台目の表示(Km/h) 計算した加速度(m/s^2)
1.3.2511.489.35
2.3.2011.709.77
3.3.2011.689.73
4.3.2111.689.73
5.3.2411.689.71
6.3.2511.689.71
7.3.2511.539.44
8.3.2011.569.52
9.3.2511.579.51
10.3.2011.719.79
平均9.62


球を落下させる距離45cm
No.1台目の表示(Km/h)2台目の表示(Km/h) 計算した加速度(m/s^2)
1.4.569.899.90
2.4.579.899.89
3.4.509.9110.00
4.4.579.879.84
5.4.529.879.90
6.4.579.819.69
7.4.579.849.76
8.4.529.9410.00
平均9.83
これらの結果からわかるように,同じ条件で試しても少しではあるが誤差が 生じている。これは装置の傾きや,落下させる球の状態によるものと考え られる。今回の実験では電磁石を用いて球を落下させているが,それでも 誤差が出ている。このあたりは生徒実験を考える上で,落下装置を考える 必要がありそうだ。なお,3つ目のデータだけは,2つの間隔は30cm にして,球を落とす位置を45cmの高さにセットした。結果的にはこれが 一番良い結果を表している。なお,この実験データから見ると,2つのBeeSpi の間隔が大きい方が重力加速度の精度が良いという結果が出ている。

この基礎実験から,生徒実験を行う上での課題がいくつか見つかっている。 一つは2台のBeeSpiを正確にまっすぐ並べる点である。これがうまく行かないと 正確な自由落下の速さを測っていることにならないからである。これには 2台のBeeSpiを並べるための枠のようなものを事前に作っておけば良さそうだ。 また,できるだけ誤差が少なくなるように落下させる球の種類なども考える 必要がある。これはこれからいろいろな球を使って確かめる以外にはない。

4.振り子を使った重力加速度の測定

次に同じ重力加速度を振り子の周期から求める方法で測定してみた。 装置は次のとおり。

実験には,BeeSpiのセンサーを通過する部分を細工した鉄球を用いてある。 BeeSpiのほうは速さを測るモードではなく,センサー部分を最初に通過してからの 積算時間が測定できるモードを利用して,振り子が9回振動する時間を計測した。 BeeSpiの2つあるセンサーのうち,このモードに利用されるセンサーは1つだけ なので,そちらが振り子の最下点になるようにセットしてある(これはあまり精度に は関係ない)。結果は次の表にまとめてみた。 重力加速度(m/s^2)
振り子の周期
試行回周期(秒)
1.1.4579.72
2.1.4569.73
3.1.4579.72
4.1.4569.73
5.1.4569.73
平均9.724
重力加速度の値はいわゆる理論値である9.8m/s^2に近い値となっている。 ちなみにこの装置を用いて(振り子の長さ0.523m)理論値を得るために 振り子の周期は何秒である必要があるか、というと周期は1.452秒となる。 測定値とは0.005秒程度異なるが、振り子の長さの精度などを考慮に入れると 仕方ないものだと考えられる。

5.最後に

BeeSpiという新しいものを利用しての、重力加速度測定実験を幾つかの方法 で行ってきたが、自由落下に関してはまだやり方などに改善の余地があるものと 思われる。振り子に関しても同様で、装置がかなりシビアに計測してしまう ために、装置をいかに正確に動作させるかが測定値に大きく影響しているようだ。 今後はこの点について研究を重ねて、生徒実験にどんどん応用できるように したいと思っている。
Created on July 11,1999
Shin'ichi TAKAGI