古今東西、屋根裏部屋は人を惹きつける

イギリスの地理学者であるアップルトン(J. Appleton)によると、ひとや動物が一番落ち着ける場所の基本条件は、「隠棲(いんせい)と探索」 (あるいは「隠れと眺望」)という両義的条件を備えているところだという。また、安らぎを感じるだけでなく、そのような条件を備えているよ うな景観に美的満足感をも得るそうだ。自分は敵から隠れ、それでいて敵の行動をつぶさに観察できるところが一番安心して落ち着けることは理 解できるし、「種の保存」という意味から、そのようなところに美的魅力を感じさせ、安全な場所へ引き寄せられるように遺伝子が命令している と考えれば、それも納得できる。さて、ここで住宅に目を転じてみよう。そもそも住宅とは生き物の棲息地、あるいは棲処である。その中で、複 数のひとが四六時中行動を共にし、お互いを見ていれば、やがてうっとうしく感じるし、なによりストレスがたまるであろう。そこで一時的に個 室へ身を潜めることになる。この場合、個室といっても自分専用の部屋だけを指すのではない。トイレや風呂が一番落ち着ける、というひとが多 いように、要はひと目から逃れ、不意にだれかが浸入してくるリスクが小さければよいのである。しかし、このような場所に何時間も潜んでいる わけにはいかない。なぜか自分が家人に置き去りにされたような不安も沸き起こってくる。これは、アップルトンのいう「隠棲」はできているの だけれど、「探索(あるいは眺望)」がまったく閉ざされているからに違いない。では、この両義的条件を満足している場所は住宅にあるのだろ うか。実は屋根裏部屋、いわゆる「ロフト」がそれに当てはまる。敵(家人)から逃れ、それでいて敵(家人)の行動をつぶさに観察できる、こ れぞまさしく「隠棲と探索」を兼ね備えた、ひとが一番落ち着ける場所なのだ。(?) 住宅を設計する際、施主から屋根裏の利用を要求される ことが多い。しかしその多くは、収納スペースとして空間を少しでも有効に使いたい、との理由だけれど、住宅の構造からみれば、高いところに 重たいものを置くことはあまり好ましくない。それよりか、あほ(バカ)と煙は高いところが好き、と揶揄されても、是非とも「隠棲と探索」の スペースとして利用して頂きたい、とわたしは思うのである。