多様な形を積み上げていく

幼児が遊ぶいろいろな形をした積木は、わたしたちに多くの示唆を与えてくれる。積木を平面的に床に並べて図形として遊ぶ 段階が終われば、幼児は重力に逆らってそれらを積み上げようとする。この場合、いろんな形の積木があるより、立方体と直 方体がたくさんあるほど遊びに展開が生まれるという。円柱や三角柱は形態的には面白いけれど、他の積木との関連で、それ らを組み合わせて積んでいくのは、幼児には少し難しいらしい。だからそれらは最後に飾るために用いられることが多いそう だ。また、積木の基尺がそろっていることも重要だという。バランスをとりながら積み上げていくには、面と面がうまく重な って、その長さも同じであるほうがいい。積み木は、位置、配列、比較などのセンスが必要で、物事の特性や本質をどれだけ 正確に理解し、使いこなせるかが問われるのである。さて建築において、西洋で発達した組積造はさながら積木である。組積 造の大型建築は、古代エジプトに始まり、中世のゴシック建築で大きく技術が飛躍した後も19世紀に至るまで主流であった。 20世紀にはいるとまもなく、鉄骨構造とエレベーターの技術向上で、New York の摩天楼に代表される超高層建築が出現するこ とになる。しかし、デザイン面では旧態依然とした積木建築であった。ゴシック建築を上下二分したような重厚な基壇部と頂 部、その間に挟まれた数十層のオフィス・フロアーからなるけれど、積木でいえば、直方体や三角柱を組み合わせて基壇部を つくり、その上に平たい四角柱を何枚も重ね、頭に三角柱を立てる、といった具合である。頭の三角柱を尖塔にしても大きな 違いはない。しかし、頭の三角柱や尖塔を無くしてしまうと、間抜けで単純な形態になった分、建築のプロポーションに力を 注がざるをえなくなった。デザインにおける積木からの開放。直方体を一本立てただけの建築。良かれ悪しかれ、これが建築 のモダニズムの始まり、ということになるのかもしれない。(2,001年9月11日のテロで破壊された世界貿易センタービルは直 方体を2本立てただけの建築といえる)