重要無形民族文化財
住吉の御田植神事
毎年6月14日に、大阪市住吉区の住吉大社で行われている「御田植神事」、通称「御田(おんだ)」をご紹介します。
(このページの作成には、住吉大社「御田植神事」略記、及び、住吉大社のホームページより多数引用しています。)

通っているうちに、現在は大阪供奴保存会の一員として祭りに御奉仕させていただいております。
写真も撮っております。

【由緒】

社伝によれば、千七百六十余年の昔、神功皇后が大社を御鎮祭の後、長門国から植女を召して御供田を植えさせられたに始まるという。植女は、旧社領の堺乳守に落ちついて代々奉仕した。植女は、後に乳守の遊女になったので、昔は、御田植の際には、遊女たちも実際には田にも入ったが、何時の頃からか替植女に苗を渡すに留まり、代りに田に入るのは、実際の農家の婦人等となった。また、長門の国司から綿を奉った故事にちなんで、この御田植神事では。いたるところに草綿の造花を見ることが出来ます。この草綿の造花をいただくと「雷よけ」「魔よけ」になるといわれています。

住吉大社「御田植神事」は
昭和46年11月11日に、国の無形文化財に選定され、更に昭和54年2月3日に国の重要無形民族文化財に選定されました。
(住吉大社「御田植神事」略記より引用)

◆奴(Yakko)

第一本殿から御田への行列の先導をする。行列は、「奴(やっこ)等、風流武者、伶人、宮司以下神職、八乙女、稚児、植女、御稔女、替植女、奉耕者、住吉踊」の順に続きます。奴(やっこ)等はその中でも、唯一といっていい男くさい行列です(笑)。
「ひぃ さぁ いぃ(お久しぶりです) 」「ひゃ たまえ  (ひゃーめでたい) 」「ひゅう とぉー (お国入り) 」の掛け声が境内・御神田に響き渡ります。

  

◆伶人【Reijin】

歌方2人、笛方2人、鼓方1人の5人。


◆大田主【Ootanushi】

奉耕者の長として、御神前よりいただいた御神水を神田に持参し、御田の中央に建てられた舞台より、四方に注ぎます。気をつけて見ていないと、あっという間に終わってしまいます。


◆八乙女【Yaotome】

住吉大社の神楽女八人で、御田植神事特有の昔から伝わる田舞を、御田の中央に建てられた舞台上、風流花傘を囲むようにして舞います。菖蒲の花飾りを頭の上につけた巫女姿をしており、行列も田舞も見事なまでにそろい、動きの美と、神聖さを感じさせてくれます。


  

【田舞の歌】

八乙女の舞う田舞は、住吉大社の伝わる巫女のひとつで、奈良・平安時代の古い手振りをみることができる貴重な文化財です。
また、住吉大社に代々唄い継がれてきたこの田舞の歌ですが、本歌の後半は偶然にも、平安時代中期に清少納言によって残された「枕草子」に記載されており、その伝承の深さを知るとともに、今日まで絶えることなく唄い継がれてきたことに伝統の深さも感じるものです。



本歌

みましもしげや わかなへとるてやは しらたまとるてこそ しらたまなゆらや ほととぎす おれよかやつよ おれなきてぞ われはよたにたつ われはよたにたつ


四季の歌
【春】

はるのたを あらすきかへせば なはしろみずに はなのなみたつ
ヤーヨ アーリヤ ソーヤ ソーヤ ソーヤ ソー アーリヤ ソー

【夏】

このあさけ あをくもいでぬ さみだれはれぬ なへういこども
ヤーヨ アーリヤ ソーヤ ソーヤ ソーヤ ソー アーリヤ ソー

【秋】

あきのたを かりわけゆけば いなばのつゆに すそぬれぬれぬ
ヤーヨ アーリヤ ソーヤ ソーヤ ソーヤ ソー アーリヤ ソー

【冬】

ふゆのたを いなくきかへせ こほらぬさきに むぎまけこども
ヤーヨ アーリヤ ソーヤ ソーヤ ソーヤ ソー アーリヤ ソー


(住吉大社「御田植神事」略記より引用)
◆植女【Ueme】

人数は、八乙女と同じく8人。かつては、自らも御田にはいって田植えをしていたようですが、今は、神前よりいただいた早苗を御田中央の舞台で、替植女に渡す役割をしているようです。明治維新の際、御田が中絶した時、新町廓が御供田を奉納した縁により、明治維新以来、植女は新町廓の芸妓が奉仕するようになりました。大阪花街連盟の審査に選ばれたものがこれにあたり、当日の粉黛式・戴盃式を行って、神事に奉仕する資格を得ます。花笠で顔を隠されておりますが、みなさんとってもおきれいで、また早苗色の衣装が、早苗の精霊のごとく、目に鮮やかです。


   
◆稚児【Thigo】

植女に随伴する少女で、植女と同じく8人。新町廓において、大阪花街連盟の審査に選ばれたものがこれにあたり、当日の粉黛式・戴盃式を行って、神事に奉仕する資格を得ます。伝統的な神事にあって、こどもらしいしぐさに笑みがこぼれます。


  
◆替植女【Kaeueme】

御田中央において、植女より早苗を受け、実際に御田におりて植えつけをする女性総勢30名。数人の男性奉耕者と共に、手際良く御田に早苗を植えつけていきます。華やかな舞踊奉納のしたで行われる地道な作業ですが、実際に土にさわって、田を植える彼女たちこそ、基本ですよね。素敵です。


  
◆牛さん【Ushisan】

奉耕者に連れられて御田を鋤く神牛。替植女さんは、赤色のたすきをかけているので、牛に突進されないか心配です(笑)。


 
◆御稔女【Mitoshime】

植女、稚児とともに新町廓から参入します。大阪花街連盟により、品性容貌技芸等について厳正なる審査をうけ、大社に申し出たあと、神事の当日の粉黛式・戴盃式を行って、神事に奉仕する資格を得ます。廓で一番の踊り手が、これにあたるということです。御稔女が舞う「神田代舞(みとしろまい)」は、御田植神事の芸能として最も新しいもので、能の手振りをとり入れた、雨乞を祈願する龍神の舞だそうです。後見のひとが舞台のそでに控えており、舞の途中で大きく衣装がえを行います。その際に、竜神をかたどった冠をかぶり、神懸りになったように、激しく舞います。能から動きをとり入れているからでしょうか、見るものを一種独特の現実と、幻想の狭間にいざないます。


  

【神田代舞】
安江 不空 作詞  杵屋 佐吉 作曲
【前歌】

住吉の とほつ松原 みいたしの 千年のかげは あかぬものかも あかずもあるかな

【本歌】

あらありがたや よろこばしや 水無月の 水もたらひて 時じくに 降るや小雨の しくしくと
天の水分(みくまり) 国の水分 みづはのめの これぞ神慮(みこころ) うけもちて いざやかなでむ 神楽歌

【後歌】

早乙女が 下りたつ御田の さいさいと ささら波よる 水のゆたけさ

【後詞】

あなたふと 神代のつたへ いままさに 若宇賀神の 神業と 天の御梯(みはし)を 昇り降り 天の依しと 天津斎種を 播き生ふせし 真名井の原の そのままに 見るやもろ人 祝ぐや諸人

(住吉大社「御田植神事」略記より引用)
◆風流武者【Huuryuumusya】

武者行事保存会の青年が奉仕する甲冑武者・雑兵を統率する総大将です。黒い高下駄を履き、本殿祭の儀、御田式場の儀で薙刀・軍扇を使った、威厳のある武者行事を奉納します。


◆甲冑武者・雑兵【Kaccyumusya・zouhyou】

武者行事保存会の青年で、甲冑武者は中学生、雑兵は小学生の少年が奉仕します。御田式場の儀において、赤白、源平にわかれ、六尺棒をつかった棒打合戦を行います。御田の周囲を列をくんで行うのですが、後列にいくほど、低学年の少年兵になります。高学年の兵士に遅れをとらないように必死になってついていくその様子はかわいらしく、御田植神事のみどころのひとつかもしれません。


  
◆田植踊【Taueodori】

太鼓の拍子で替植女たちが謡う田植歌に合わせて、地元の小学生たちが踊ります。白に赤の帯が美しく、田植え姿をかたどった踊りに、乙女らしいしぐさがとてもかわいらしいです。


  

【田植歌】

神の田植に 目に立つものは 並ぶ乙女の 赤だすき
出船入船 日に千艘の 船も詣づる 四社の前
松の間に 淡路の見えて 沖に三つ四つ 真帆片帆
田植しまうて 笠とり見れば 淡路島根に 陽の落ちる


(かつては、住吉大社の前まで海辺が来ていたそうですが、そのためでしょうか?)

(住吉大社「御田植神事」略記より引用)
◆住吉踊【Sumiyoshiodori】

住吉踊保存後援会により地元の少女等、約150人により奉納されます。
飛び跳ねるように踊るのですが、その度に団扇につけられた鈴が「シャン♪」と鳴り響き、とても華やかで、そして勢いがあります。
「心」の字をかたどった独特の踊りです。


  

【住吉踊】

第四本宮にお祀りされている息長足姫命(神功皇后)様が、無事に堺の浜に上陸されたのを、土地の人々が浜辺において祝福歓迎の踊を行ったのが起源であると伝えられ、中世以降は神宮寺の社僧が天下泰平・五穀豊穣を祈って諸国を遍歴し、また住吉大社の諸祭礼に奉仕いたしました。

♪エー 住吉さまの イヤホエ

摂津浪速の 一ノ宮  その名も高き 住吉の
神の御前の 神踊り  天長く 地久し
天下泰平 国土安全  五穀豊穣 民栄え
治まる御代の しるしとて  心一ツに 働けば
末は住吉 平楽や  かねてぞ植し 住吉の
岸の姫松 目出度さよ

エー 住吉さまの イヤホエ

住吉大社ホームページより引用)
◆式事の流れ

【粉黛式・戴盃式】10:00〜
新町廓から参入する、植女・稚児・御稔女らが神館で神事奉仕の資格を得る。

【本殿祭の儀】13:00〜
宮司以下神職、八乙女、植女、稚児、御稔女、風流武者、住吉踊、替植女、奉耕者たちが、石舞台で修祓の後、第一本堂に参進、神前に供えられた早苗が、植女に渡される。

【御田式場の儀】
第一本堂から御田に参入してきた行列が、御田の周囲を一周した後、御田式場の儀がはじまる。その流れは以下のとおり。
・修祓
・早苗授与
・田舞
・神田代舞
・風流武者行事
・棒打合戦
・田植踊
・住吉踊



※全体を通して、華やかさや、威厳、かわいらしさ、いろいろな面を見せてくれつつ、自然への尊敬と崇拝の気持ちを感じさせてくれる、地元と歴史に根付いたすばらしい神事です。

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