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こち亀今昔

  「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(こち亀)はもう15年以上私の愛読書である。しかし最新刊を買い続けるのは117巻でやめてしまい、現在のジャンプも全然読んでいない。かつては50~70巻ごろを本当に素晴らしい巻だと思っていたが、最近はそのあたりには目もくれず、1~10巻あたりを繰り返し読んでいる。麗子がまだ登場しない巻である。この初期の話は長い「こち亀」史の中では異質な部類に入る。両津をはじめとした男性警察官ばかりが登場し、ハチャメチャな日常を繰り広げる。初期の中川は世間知らずのボンボンで、拳銃を平気でぶっ放す。寺井は後にはマジメ人間になるが、初期は勤務中に酒を飲んで昼寝したりする。戸塚は両津と一緒になって悪さをする。初期の雰囲気が一変したのはやはり11巻の「麗子巡査登場」によってであり、男性巡査はどんどん影が薄くなっていく。巨乳で露出度の高い麗子巡査の登場は読者にとって歓迎すべきだったかもしれないが、私としては、麗子が登場しない、初期のままの雰囲気の「こち亀」を読み続けたかった気もする。


意外な楽しみ方

 さて、初期の巻を読む楽しみとしては、古い版と新しい版を参照する面白さがある。なぜ古いのと新しいのがあるのかというと、かつては問題のなかった表現が、時代を経るにつれて、警察官のイメージを損なうとかの理由で別の表現に修正されたからである。この修正は平成2年ごろに既刊全体に対して行われたようだ。私が最初に買い揃えたのは新しい版であったが、古本屋でなんとなく古そうな「こち亀」コミックスを買って読んでみると、セリフの違いがあることが分かった。数をまだ正確に数えたわけではないが、1巻の修正が一番多いであろう。中でも投稿作の「始末書の両さん」は不適切表現の嵐である。



過激なセリフたち

(古)「競馬でスッてイライラしてる時にガタガタぬかすと本当にぶっ殺すぞ! だてに拳銃をぶら下げてるわけじゃねえんだぞ!」

(新)「競馬でスッてイライラしてる時にガタガタぬかすと本当におこるぞ! 早くどこかへ行ってしまえ!」


(古)「東京はてめえみたいな百姓が来るところじゃねえ!」

(新)「東京はてめえみたいなやつが来るところじゃねえ!」


(古)「ふん! 新潟で米でも作ってろ!}

(新)「ふん! まったくもう!」

 このように、道を聞きにきた男性への対応はすさまじいものだった。
 他には、10巻の「愛があれば…」の巻が印象に残っている。チャーリー小林が、自分のレコードを投げ捨てた子供に向かって吐いたセリフである。


(古)「てめえっぶち殺す! そんなガキ八つざきにしろ」

(新)「とんでもないやつだ! たいほしろ!」

古い巻を集める楽しさ

 出現頻度の高い不適切語を挙げてみると、「ぶち殺す」「死ね」「キチガイ」などが多い。特に「ぶち殺す」は作者のクセのようなもので、古い版では頻繁に使われている。新しい版ではもっと穏やかな言葉に直っている。
 古い版と新しい版で違うのは、セリフだけではない。「こち亀」ではコマの空いたスペースに作者の短いコメントや日記のようなもの、アイドルに対する想いなどがつづられている。それらが新しい版ではほとんど白く塗りつぶされており、それだけ見た人は、不自然なスペースがあるな、と思うかもしれない。しかし古い版を入手してみると、消される前の落書きが残っており、製作当時のライブ感が伝わってきて面白い。
 その中で特筆してみると、14巻の「ファイター!!」という話がある。ここでは冒頭から、作者がバイクで一時停止違反をして罰金四千円をとられたという書き込みがある。取締りの警察官の名前まで書いてある。「まずしいボクから四千円とるなんてオニのようだ!」など、恨み節が繰り返される。ついには背景の建物にも「四千屋」「四千円病院」とかが出てくる始末である。ファンの方にはぜひ見てほしい。
 現在でも「こち亀」コミックスの過去の巻は版を重ねているのだろう。機会があったら、最近印刷された1巻を見て、セリフが変わったりしていないか調べたいものである。



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