名盤紀行 (交響曲)

ブルックナー 交響曲第9番  シューベルト 交響曲第8番
ギュンターヴァント指揮 北ドイツ放送交響楽団

最近ブルックナーの人気が高い。30年前にはまだレコードも少なく、作品そのものの賛否両論が唱えられていた時代からすると随分な違いである。レコード雑誌で絶賛する評論家のせいか、それともレコード会社の売込みのせいか、ブルックナーの作品や演奏家の評価が画一的で時に神聖化されていることを危惧する。ヴァントの演奏は明快、緻密、謙虚、素朴、豊かな人間性、真のドイツ音楽、正統派、等という言葉で多くの人に称えられているが、ごく普通のあまり目立たない演奏が、かくも賑々しく取り沙汰される事の方が寧ろ異常とは言えないだろうか。ブルックナーもヴァントもきっとそう思っているに違いない。私はもう少し強い個性のある演奏の方が好きだが、ライブ録音とは思えないヴァントの緻密で謙虚な自制は見事である。

マーラー 交響曲第3番
レナード バーンスタイン指揮 ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団

1965年頃生協のダンボール箱に入っていた絶版レコードを購入したものである。ジャケットの右上に小さいパンチングホールが開いている唯一無二のレコード。そのとき初めてマーラーの音楽に触れたが、このレコードがマーラー3番の最高傑作とは不思議な縁である。バーンスタインはマーラーの耽美的な美しさをもっとも自然に引き出している。静まりかえった月の夜を思わせる終楽章のアダージョはこの曲の全体を支配しており、バーンスタインはその雰囲気を繊細に丁寧に細やかに、時として荘厳に上手くまとめている。録音はややダイナミックレンジに欠けるが聞き易い。誇張の無い正に自然体の美しいレコードである。

ショスタコービッチ 交響曲第5番
ロジンスキー指揮 ロンドンフィルハーモニー交響楽団

ロジンスキーは1894年ポーランド人を両親にユーゴスラヴィアに生れた。30歳のときストコフスキーに見出されアメリカに渡った。フィラデルフィア、クリーブランド、ニューヨークフィルの正指揮者として活躍したが、トスカニーニとNBC交響楽団編成時にトレーナーとしても活躍している。これは晩年ヨーロッパで活躍中の1枚で、ダイナミックで客観的に曲を分析しつつ、それを有機的に再編成して行くところはトスカニーニと相通ずるところがある。毅然とした第2楽章、速目の統率されたテンポで一気に締めくくる終楽章は実に見事である。

チャイコフスキー 交響曲第6番 悲愴(SP盤)
メンゲルベルク指揮 アムステルダム コンセルトヘボウ管弦楽団

5枚組の12インチSP盤で確か京都北野天満宮のがらくた市で購入したものである。片面5分足らずでひっくり返し、取り替え聴くのが大変で、時にはとんでもない所で一瞬音が止まる。蓄音機の鉄針でかなり擦り減ってはいるが、当時の面影を目の当たりにする事が出来る。
テンポがやたらと揺れ動く大袈裟な演奏は当時の一つの典型的なスタイルだ。今聞くと違和感が大きいが悲愴の名盤として名を轟かせていた逸品である。ビクトローラなどの大型蓄音機で当時を再現すれば感激もひとしおであろう。

ブルックナー 交響曲第7、8番
フルトヴェングラー指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団                    

1919年ベルリンにおける放送テープよりレコード化されたもので、発売当初は放送局で眠っていたフルトヴェングラーの奇跡的な名演奏が発見されたと話題を呼んだ。エンジェルの第20回芸術祭参加作品ともなっている。非常に古い録音で音質は決して良くない。いろいろ技術的な手を加え擬似ステレオ盤になっているが、純粋なモノーラル盤に比べ賛否両論あろう。
スケールの大きい堂々たる演奏。今聴いてみると奇跡的名演奏と言うよりは結構バランスのとれた、正統派の演奏だ。むしろシューリヒトやクナの方がはるかに個性的だ。

ブルックナー 交響曲弟8番
ハンス クナッパーツブッシュ指揮 ミュンヘン フィルハーモニー管弦楽団

'98/12 岐阜の中古レコードショップで2枚組1800円で購入した掘出し物!こんなレコードがこんな所に良くぞ売っているものと思い我家の一員に仲間入りさせた。ウエストミンスターのLPで盤質も良かった。クナの評価はどの雑誌を読んでも神懸かり付きの絶賛評ばかりだが、確かにそれだけの事はある。「クナは神であり、至上、超越、究極」といくつも絶賛詞を並べて、ひたすら浸って聴くのがいい。そうする事によって感激が増し心も浄化される。神になったクナに文句を付ける人はもはや居ない? 
それはともかく、ティンパニーの使い方や音のバランスに独特の工夫が凝らされ知らぬ間にクナの世界に引き込まれて行く。不思議な説得力のある演奏だ。

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