
諸要素の向上を図り、わが国の秋田犬による文化の発展に寄与するとともに
世界の犬種として海外に発展せしむるをもって目的とする。
<社団法人秋田犬保存会の事業>
(1) 秋田犬に関する犬籍、犬舎号の登録及び血統書の発行。
(2) 秋田犬に関する展覧会、鑑賞会の開催及び研究会、
座談会等、の指導育成。
(3) 秋田犬の固定化、保護、繁殖及び普及を図る。
(4) 会報「秋田犬」及びその他刊行物の発行。
(5) その他本会の目的を達成するために必要な一切の事業。
秋田犬標準
1.本質とその表現
沈毅にして威厳を備え悍威に富み、忠順にして素朴の感あり、
地味な中に品位を持ち、感覚鋭敏にして、挙措重厚敏活共に備う。
(解 説)
本質の表現解釈は、沈毅(沈着剛毅)も悍威(精悍威勢)も威厳の具備すべき
要件である。また、性格的には素直で主人主家に対して忠実であり、飾り気のない
品位は素朴感に集約され、いずれも必要不可欠条件である。
さらに、知覚・聴覚・嗅覚等の感覚は敏感で、堂々とした体格は何事にも動じない
という秋田犬本来の風貌を表現しものである。
1.外貌
体躯均斉を得、骨格頑丈緊密にして筋、腱、靭共に発達し、皮膚弛緩なく
牡牝の表示判然とし、牡は体高体長の比100対110に対して牝は牡より
体高に比して体長稍長し、体高 牡66.7糎(2尺2寸)、牝60.6糎(2尺)とし
上下各3.03糎(1寸)迄を可とす。体高胸深の比を略2対1とす。
(解 説)
外貌とは、うわべの顔かたちや犬体の姿形である。犬体の各部が正確に構成
されて均衡を保ち、骨格は強健でゆるぎなく、筋肉や血管等の組織は鍛錬によって
発達し、皮膚は弛みなく引き締まり、牡には牡らしい風貌と牝には牝らしい容姿が
望まれる。
すなわち、秋田犬としての均斉美と錬成による力強い健康美が要求されるのである。
また、体躯の構成として、体高に対する比率を条文で示しているが、これは全体の
均斉と重要なつながりがある。なお、牝の体長が牡よりやや長めであることは生理的
な理由によるもので、性徴感を表現している。体高と胸深との比率はほぼ二対一で
ある。
1.頭
頭骨大にして頭蓋の頂き稍平、額広く、皺なく、明らかなる縦溝と適度の
落ちみあり頬部良く発達し張る。
(解 説)
秋田犬の頭部は大きく、頭蓋の頂き、すなわち耳間はややなだらかで、
尖ったり丸く盛り上がった形状ではいけない。また、額は広く潤沢で明確
な縦構が通り、額から鼻梁に移行する接点には適度の落ち込みがあって頬
は充分に張り出す。そして、額や目尻には雛があってはならないのである。
額は前額骨を基盤とし、広澗にして極くわずかに隆起するのが理想とされ
ている。なお、学説的には野生のものほど落ち込みは浅く、人工的に飼育
されたものの方が深くなると言われているが、秋田犬の場合は適度にして
明確であるものが望ましい。また、頬張りは口吻との関連が深く、その咬
力によって発達した頬部の筋肉が豊かな頬張りを形成し、広く潤沢な額と
の調和により秋田犬独特の顔貌を形成するのである。皺はだいたい皮膚の
弛緩であり、品位や悍威を尊ぶ秋田犬には好ましくない。
1.頸
頸部太く逞しく、皮膚弛緩なく適度に起立す。
(解 説)
秋田犬の首は、特に大きい頭部を保持することはもとより、時代の推移
から獲物を捕らえるにも闘争時に相手を咥えてうちふるにも、太く逞しい
頸部でなければならない。したがって、首はあくまで太く逞しく張りがな
ければならないのである。細く長く見えるものや、喉皮の弛んだ頸部では
いけない。また、起立角度は犬が正常な立ち込み姿勢をとった時の首の上
がり具合をいい、おおむね四十五度ぐらいが理想とされる。
1.耳
稍小さく厚く三角形にして適度に前傾し、耳線直にして緊乎として立ち、
耳の間隔は適当なる広さを有す。
(解 説)
耳はいくら縦に長い不等辺三角形であり、鈍重な感じを与えない限り
厚い方が他部との均衡が保てる。前傾とは一般に言われる耳差しのことで、
その語源からして物を突き刺したように鋭く立つ意味合いであり、もちろ
ん耳線は直で勢いがなくてはならない。なお、適度に前傾した角度とは、
頸礎から至る延長線上よりごくわずかに前傾するものが理想とされる。適
当な耳間の広さとは、尖端より直線を下ろして大体に耳根幅の中心に至る
ものである。いずれ、秋田犬の耳は外貌的な美観はもちろん、その形状は
本質の良否や精神面の強弱まで感得されるのである。
1.眼
稍三角形にして深く、外眦上り虹彩濃茶褐色を呈し、眼は適度の間隔を
有す。
(解 説)
眼は心の窓とか口ほどにものを言うと例えられるように、眼の表現によ
つて犬の精神状態が感知されるばかりでなく、その形状や位置によって犬
自体の品位にまで左右される大事な要素である。内眦より外眦に至る下瞼
線がわずか斜めに上がり、なおかつ奥眼で大らかなものが望まれる。虹彩
とは眼球の色合いのことであり、濃い茶褐色が理想とされる。また、眼の
位置は顔面との均合が大切であり、あくまでも品位が尊ばれる。
1.口吻、鼻
鼻梁直にして吻充実し、基は太く先は細く尖らず、鼻鏡緊り、唇良く引緊る。
(解 説)
鼻梁直とは、落ち込みから鼻鏡の先端に至る線が側望して直線的でなけ
ればならない。この鼻梁の線と、頭頂より前額部までの線を延長した時に
並行となり、頬部から口吻の先端までが豊かに引き締まるものが望ましい。
要は、広い額や豊かな頬張りに対する口吻の構成であり、顔面に調和した
形態でなければならない。また、鼻鏡の状態で犬の体調が判断できるが、
上下の口唇や口角が垂れたり緩んだりせず、黒色の色調が艶やかに潤い、
生気に満ちたものが望ましい。ただし、白には赤鼻が許容されている。な
お、その形状は丸型の口吻が理想とされる。
1.歯牙
歯牙強靱にして、咬み合わせ正しい。
(解 説)
歯牙の役割は食物摂取のためのみならず、種族としての唯一の武器でも
あるため鋭く頑強で、しかも咬み合わせは正確でなければならない。なお、
歯の数は四十二本である。
1.胸腹
胸深くして肋骨良く張り、前胸発達し、腹部適度に引緊る。
(解 説)
胸が深くとは側望しての胸探であり、前胸発達とは前望しての胸幅である。
胸部は、全体躯の主要臓器を集中抱合する重要な部位で、この形態に
よって体質はもちろんのこと、動作の機能等も察知される。胸深は体高の
おおむね二分の一が理想的で、その探さは肘までである。肋骨良く張りと
は、季肋部から前が強く張ることで、断面の想像図はおよそ卵形を成して
いる。また、腹部は切れ上がり、側望して胸部との関連性が深い。いずれ、
秋田犬は体躯の構成上、前胸の発達と腹部の切れ上がりによって、全体の
逞しさや迫力感を大きく左右するものである。
1.背腰
背線直にして、腰強靱なり。
(解 説)
背部と腰部は連結しており、後肢の推進力を前肢に伝動する極めて重要
な部位である。したがって、背線が盛り上がったり弛んでいては俊敏な動
作の妨げとなり、必然的に敏活さを失うことになる。また、腰は腰椎骨に
接合する骨盤等を強靱な筋肉で抱合し、力強く幅広い造形でなければなら
ない。
1.前肢
前肢は肩胛上膊適度なる角度を持ち良く発達し、肘付良く、前膊直にして
太く強く、繋少しく傾斜し、趾円く大きく、厚味を有し緊握す。
(解 説)
前肢は、壮大な頭部や太い頚部及び逞しい胸部を支え、かつ敏活な動作
にも対応する機能を備えていなければならない。その骨格構成は、上部か
ら肩胛骨、上腕骨、前腕骨、手根骨、中手骨、指骨からなり、各部は関節
で接合されているが、いずれの部分も連繋角度が重要であり、その造形に
よって前躯の良否が決定される。しかし、外観上はほとんど上膊部と前膊
部、それに繋と址になるが、肩胛骨と上腕骨の接合角度の不正確なものは
前寄肩に、上腕骨の接合角度の不正確なものは肘付きが甘くなる。また、
前膊直とは、前肢を前望した場合、外側に湾曲したり下部が外に開いては
いけないのである。繋は、骨格では中手骨に当たるところで、体重と地面
の衝撃を調節する部位であり、弾力性とともに適度の傾斜が必要とされる。
趾は握りと呼んでいる部位で、その形は丸く大きく、厚味があって強く締
まり、弾力のあるものが理想である。したがって、指間が開いたり兎足の
ように流れた趾は好ましくない。
1.後肢
後肢は良く発達し、強靱にして力強く踏張り、飛節適度の角度を持ち、
弾捷力に富み趾厚味を有し緊握す。
(解 説)
後肢は、大の推進活動の始動源である。その骨格構成は、坐骨に固く接
合する大腿骨、股骨、脚骨、附前骨からなる。これらも前肢同様に、各部
の連繋角度は正確でなければならない。外見的には、鍛錬による強靱さと
力強く豊かな張りが望まれる。飛節部は膝関節との連繋で始動する重要部
であるため、しっかりとした角度に加え強靱性と弾捷性がなければならな
い。後趾も前趾同様に、太さと厚味があり握力のある趾が理想的である。
いずれ、後肢は後躯に占める比重が多く、その良否は全体の構成に大きく
関連する。また、後肢の踏み幅は腰幅に相応して前肢の踏み幅と平行し、
側望すれば力強い踏張りとともに全体の迫力感を増長するものである。
1.尾
太く力強く巻き、長さは略飛節迄とし、巻型は左巻、右巻、太鼓巻、二重巻
とす。
(解 説)
大の尾は、機能的に方向舵としての役目を持つものである。雄大に力強く
巻き、内面の表示とともに美観を端的に表現するもので、長さは飛節までな
ければ充分な巻き込みが出来ないことになる。巻型は条文のとおりで、同じ
巻型でも一様ではないが、やや高めに楕円形を描き、頸部の起立角度に平行
するものが理想的である。要は全体の均衡はもちろんのこと、美しさや逞し
さを表現する力強い尾が好ましく、立ち耳と並んで種族の象徴でもある。
1.被毛
毛剛直にして、下に綿毛密生し、キ甲部、臀部称長く、尾毛他部より長し。
(解 説)
秋田犬の被毛は剛く真っ直ぐであり、針毛と称する上毛の下に綿毛と称す
る下毛が密度良く生え、キ甲部と臀部の毛はやや長めで、尾の毛はそれらよ
りさらに長いものである。毛質の良いものは被毛の生成が明らかで、毛吹き
の良いものは綿毛の密生により全体を起立させ、針毛が開立するのである。
いずれ、秋田犬の被毛は各部位の機能と役割が明確でなければならず、寒冷
地の厳冬期に耐えて棲息または飼育された伝承に由来するものである
1.毛色
赤、虎、白、胡麻。
(解 説)
赤の下毛は灰白と白色等で、上毛はやや濃い赤色が望ましい。腹部、四
肢及び尾下の裏側は白いものである。虎毛は黒、白、赤色で構成され、黒
毛の多いものを黒虎と称し、赤毛の多いものを赤虎というが、いずれも縞
目は判然とし左右対象の模様を理想とする。腹部、四肢及び尾毛の裏側は
白いものである。白はあくまで澄んだ純白を理想とするが、先端に少々の
淡い赤が帯びたものがあり、耳、背部、後躯等の一部にこうした現象が見
られる。胡麻毛は地が白色または灰色で、先端で薄黒色を帯びているもの
である。
(減点)
1.後天的損傷及び著しく栄養管理不良のもの。
1.秋田犬として好ましからざる毛色。
1.体色に副わぬ虹彩著しく淡きもの。
1.欠歯、乱歯及び切端咬合。
1.舌斑。
1.特に性質軟弱なもの(臆病、軽佻等)及び凶暴性のもの。
1.その他秋田犬として特徴乏しきもの。
(失格)
1.先天的に耳立たざるもの。
1.先天的に尾巻かざるもの。
1.先天的に著しく短毛及び長毛。
1.著しく下顎突出及び下顎後退し、噛み合せ不正なもの。
1.体色に副わざる鼻色(白は赤鼻を許容す)
1.陰睾。
1.その他秋田犬の特徴を欠くもの。