"おりこうな"ワンちゃんの起源?

私たちのベスト・フレンドと呼ばれているワンちゃんの起源を突き止めた研究が2002年3月に超一流科学雑誌Scienceに発表されました (Savolainen et al., 2002;Leonard et al., 2002)。ワンちゃんが人といっしょに生活を始めた起源をたどると、そこは東アジアの地域になるという研究論文です。

世界の654頭のワンちゃんの細胞内にあるミトコンドリアという所のDNAを調査すると、5つに系統分岐していることが分かりました(Savolainen et al., 2002)。これは、少なくともオオカミ5頭の母親から、ワンちゃんの進化が始まったことを示しています。

しかし、オオカミの生活では、移動範囲が広いことから、これらの5頭のオオカミがどこにいたかを特定することはできませんから、世界中のワンちゃんのデータを集めなければ、その起源を突き止めることはできないわけです。Savolainenらが見つけたことは、南西アジアやヨーロッパに比較して、東アジアの犬では、ミトコンドリアDNAの変異が大変高いこと、そして、多くのハプロタイプがあることを発見しました。遺伝子は、染色体上に1対の対立遺伝子として存在していますが、そのいずれか片方の遺伝子群のことをハプロタイプといいます。

東アジアの犬ではは、かなりユニークなハプロタイプと特異的な点変異を1つ以上持ったハプロタイプをより多く持っていることなどから、犬の起源は、東アジアと結論付けました。さらに、一番大きな犬の分岐群は、ヨーロッパ全体にわたって一様に広がっていることから、その起源は単一の集団から発生したものと考えられます。

単一のオオカミの集団が、人といっしょに生活を始めたことは、3つの主要な分岐群の変異によっても説明できます。犬の人口の広がりを暗示している星型の系統発生樹は、いくつかのオオカミのハプロタイプからもっと大きな分岐群が分かれ、1つのハプロタイプから他の2つの集団分かれていることを確認しました。 それは、約15,000年前のことです。

Leonardらの別の研究では、東アジアから新世界へ連れてきたということを証明しています。植民地化以前のアメリカの犬は、氷河期にアジアからベーリング海を渡って連れて来られたもので、アメリカのオオカミが人といっしょに生活し始めたものでないようです。 LeonardらのミトコンドリアDNAの研究で、古代アメリカの犬のミトコンドリアのハプロタイプが、近代のアメリカの犬には、ないことから、ヨーロッパ人の植民地開拓者(入植者)が自分達の犬を大切にしていたということが考えられます。

以上をまとめると、人間は、”おりこうな”ワンちゃんを大切に育てようという傾向があります。ミトコンドリアDNAは、母親から子どもに遺伝しますから、”おりこうな”ワンちゃんの起源は、母親に影響されることだと分かりました。さて、「父親に関してはどうか?」というと、核内にあるDNAを確認しないとわかりません。
今後の研究に期待します。父親は関係ないということになりませんように・・・・・。

引用文献
Leonard, J. et al. (2002) Ancient DNA evidence for Old World origin of New World dogs. Science 298,1613-1616.

Savolainen, P. et al. (2002) Genetic evidence for an East Asia origin of domestic dogs. Science 298, 1610-1613.(Nature Genetics Vol. Jan, 2003, pg 3参照)

以上は、2002年の時点でのお話で、2010年にこれに関連する改訂版が発表されました。

タカサクラガーヤ動物病院 
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