世界のニュースあれこれ
2009年3月入手情報
たれ耳で長い尾のドーベルマン・ピンシャーとかボクサーはお嫌いですか?
断耳と断尾に対する賛否両論
アメリカ獣医師会の理事会が断耳と断尾に対して反対するという正式報告を
しました(文献1)。 以前からイギリスでは断尾が禁止され、オーストラリアや
多くのヨーロッパの国々では断耳や断尾ともに禁止されています。そして
アメリカではメイン州のみで断耳が禁止されていました(文献1)。
伝統的に行われている断耳や断尾は、獣医学のきちんとした手技で痛みを
伴わないように行われているので、アメリカ獣医師会は中立の立場をとるべきだ
という意見が出されました(文献2 Letters to the Editor)。
アメリカ獣医師会雑誌にこの意見が掲載されるくらいですから、獣医師だけでなく
ケンネルクラブ関係者からも多くの反対意見がでていると思います。
理事会メンバーのLarry Dee先生と動物愛護委員会の委員長James
Reynolds先生が、反対意見に対する説明をしています(文献3,4)。
委員会では、断耳や断尾の出来ばえとか技術とか、痛みのコントロールなどに
関して考慮したのではなく、断耳と断尾の行為の科学的正当性を考えた
ものだと二人とも説明しています。
アメリカ獣医師会の専門委員会のReynolds先生たちが、断耳とか断尾に
関して考慮した点は以下のようなことです:
● 断耳で外耳炎を予防できるという証拠はない。 耳の形、水平耳道の形や
長さ、耳の中の状態などにより外耳炎を起こしやすくなります。コッカー・
スパニエルやラブラドール・レトリーバーのように外耳炎を起こしやすい
犬種の耳を断耳することはありません。
● 断耳をすることで耳が良く聞こえるという科学的根拠はない。
● 断耳をすることで、保守、警備や軍事目的に使われるワンちゃんとしての
警戒してもらえるようになる。しかし、そのような目的で使われている多くの
ワンちゃんでは断耳や断尾をしていません(ベルジアン・マリノア、ジャーマン・
シェパード・ドッグ、ゴールデン・レトリーバー、チェサピック・ベイ・レトリーバー、
ビーグルなど)
● ワンちゃんの尾のゲガの発生頻度に関する情報はあまりありません。しかし、
特にペットとして生活しているワンちゃんでは頻度は低いものです。
● 断尾は、狩猟の時に険しく木々などに接触してすれることによって起こる
外傷を防ぐ目的と言われてきましたが、伝統的に狩猟に使われる多くの犬種は
断尾されていません。
アメリカのすばらしいところは、断耳や断尾のようなことでも、「おかしいな」と
思ったら、または、皆がどのように判断したらよいか迷っている事に関してと、
ある専門職を代表する会(集団)が、その会(集団)の立場をはっきり国民に
説明し、賛成または反対の態度を明らかにするところです。日本にも
いろいろな各専門を代表する会(集団)がありますが、その会(集団)の考えを
もっと国民に説明する努力が必要ではないでしょうか。特に科学の分野では
重要です。
今回は、断耳、断尾には反対という内容でした。
用語説明
● 断耳 (だんじ、 ear chopping) 耳を立たせ、形を整えるために耳の一部
切り落とすこと。ドーベルマン、ボクサー、グレートデンや他の犬種でも行われます。
● 断尾 (だんび、 tail docking) 姿を整えるためとか仕事上必要とされると
いうことで、尾を生後すぐに切り落とすこと。犬種によりその長さは異なります。
プードル、ヨーキー、シュナウザー、ジャックラッセル・テリア、ミニチュア・ピンシャー
などを含む多くの子が断尾されるています。
● Letters to the Editor (編集者への意見) 一部の専門雑誌では
意見交換のスペースを設けています。アメリカ獣医師会雑誌でも、Letters to the
Editorのコーナーでいろいろな論議が交わされています。残念ながら、最初に
問題提起したり異議を申し出た人(今回はGussett先生)からの質問に答える
形式になるため、答える側(今回はアメリカ獣医師会の理事会または専門委員会の
メンバー)が常に有利になります。普通は、質問者が再度登場するということは
ありません。
出典
文献1) Nolen RS (2008) AVMA opposes cosmetic ear cropping,
tail docking of dogs. J Am Vet Med Assoc 233 (12), 1811.
文献2) Gussett R (2009) Arguments for continuation fo ear
cropping and tail docking. J Am Vet Med Assoc 234 (5), 598.
文献3) Lee GD (2009) Dr. Dee responds. J Am Vet Med Assoc 234
(5), 598.
文献4) Reynolds JP(2009) Dr. Dee responds. J Am Vet Med Assoc 234
(5), 599.
[人と動物との絆のホームページ]へ戻る
タカサクラガーヤ動物病院
(東京都世田谷区世田谷4−18−7)