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  2009年6月入手情報


 病気の治療の手助けとしてワンちゃんなどに参加してもらう動物介在療法というものがあります。動物との相互作用を利用することで、体の機能回復とか健康状態を良くしようというものです。英語では、以前からanimal-assisted therapy (AAT、動物介在療法)と呼ばれていましたが、、薬物処方などの治療というより、面接などによる精神的なサポートを重視する療法という考えからanimal-assisted intervention (AAI、動物介在療法)という的確な言葉が使われています(interventionは日本語で関与とか介入という意味です)。

さてこのAAI(またはAAT)ですが、歴史的に、ワンちゃんがヒトの病院へ出入りするわけですから、衛生面でワンちゃんから人への感染(たとえば回虫症、ノミ・ダニ症など)が心配されていました。すでにAAIを行っているところでは、この点は当然配慮され、AAIに参加するワンちゃんの健康検査がしっかり行われています。今回紹介する研究は、これとは逆に、病気で入院されている患者さんから、AAIに参加すワンちゃんへの感染を心配するというものです。

Lefbvreらの研究(文献1)によると、AAIで病院を訪問して患者さんをペロペロ舐めり、患者さんからトリーツをいただいたワンちゃんが、MRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と Clostridium difficileの細菌感染のリスクがあるという結果を示しました。 MRSAもClostridium difficileも共に人の健康に関連する病原菌で、これらの感染によって重症なったり死亡することがあります。人からワンちゃんへの感染もありますが、当然、ワンちゃんから人への感染もあります。人からワンちゃんへ感染したMRSAとClostridium difficileが、ワンちゃんの体内に入った場合どのような問題が起こるかはまだはっきりしていません。(補足: ネコちゃんのMRSAが人へ感染して問題になった症例は昨年のこのコーナーでお伝えいたしました)

AAI(またはAAT)を実施するにあたって、人にもワンちゃんにも安全な体制を整えるのは重要なことです。 AAI(またはAAT)の基準を作ったアメリカのDelta Societyなどではワンちゃんから人への感染を防ぐためのしっかりした基準を決めています(文献2)。今後、人からワンちゃんへの感染に関連した基準作りも進められるものと思います。

参考文献
1) Lefbvre, S.L., Reid-Smith, R.J., Waltner-Toews, D. and Weese, J.S. (2009) Incidence of acquisition of methicillin-resistant Staphylococcus aureus, Clostridium difficile, and other health-care-associated pathogens by dogs that participate in animal-assisted interventions. J.Am.Vet.Med.Associ. 234, 1404-1417.

2) Delta Society (2003) Standards of practice for animal-assisted activities and animal-assisted therapy. Renton, Wash: Delta Society.

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