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  2010年4月入手情報


クリップ不動化法(紙を留めるクリップでネコちゃんを動かなくする方法)

今回は書類を留める普通のクリップによるネコちゃんをおとなしくさせる方法の論文の紹介です(文献1)。ご家庭のネコちゃんで、爪切りやちょっと体に触ってお腹とか手足の先端を触ろうとすると嫌がる子はいませんか。 動物病院の診察などで、ネコちゃんに動いてほしくないときがあります。しかし、どうしても補助する人が必要で、簡単に診察させてもらえないことがしばしばです。

文献1で紹介している方法は、紙クリップを使って軽く不動化を行えるというものです。今まで、このコーナーで「ワンちゃんの尻尾・・・」、「ウシさんの牧草を食べる方向・・・」など。本当かなというような論文や報告を紹介してきましたが、今回の論文は猫の内科と外科学の専門誌に掲載されているもので、少し信用できようです。試してみてください。それ専用のクリップが特許を取られ、販売されているようです(文献2、3)。

今回の報告は、オハイオ州立大学獣医学部とフランスのSainte-Foy-Les-Lyonの動物病院の共同研究です。 、昔から猫の首筋を持つと猫が動けないことは良く知られています(猫ちゃん自身がこの体勢が好きかどうかは不明です)。 2インチ(約5cm)幅の標準的なバインダークリップ(紙を留めるクリップ)で、耳の後ろの首の部分の皮膚をはさんで圧迫することにより、ある程度の不動化に成功したというものです。

この研究では、13匹の健康なネコちゃんと18匹の特発性膀胱炎のネコちゃんで研究を行いました(特発性=原因がよくわからない)。クリップを装着したネコちゃんの収縮期血圧は140-160 mmHgでした。クリップをしてその反応を観察するのですが、行動が抑制されたレベルをPIBI(pinch-induced behavioral inhibition)ということにしました。 別名は、clipnosis(clipクリップとosisギリシャ語の状態を表す接尾辞の造語)です。

最初の実験から1、2、3ヵ月後にも同じようにクリップをして、精神状態、威嚇反応、顔面の知覚反応、足を支える能力検査などを神経学の専門医が検査しました。 陽性の反応は、母ネコが子猫の首筋をつかんで持ち上げられる状態に似ているものでした。一部のネコは、ゴロゴロのどを鳴らすほどです。92%の健康なネコちゃん、そして特発性膀胱炎のすべてのネコちゃんが陽性の反応を表しました。最初にPIBIの反応が良いネコちゃんではその後も良い反応を得ることができ、反応は大きく変化しないことも分かりました。

クリップをしたネコちゃんでは精神機能の安定が見られ、すべてのネコちゃんで瞳孔が小さくなりました(興奮していない証拠です)。呼吸が早い、脈が早くなる、瞳孔が広がるなどの痛みのサインはありませんでした。さらに心拍数、血圧、体温などに変化はありませんでした。このことからクリップをつけるPIBIは、恐怖によって起こる反応ではないと考えています。

クリップの装着で穏やかで、満足し、恐ろしさがないネコちゃんに変身したという驚きの報告になっています。ただし、いったん、興奮したり怖がっているネコちゃんではこの方法は使えないようです。ですから、おとなしいときにクリップを装着して、血圧測定、爪きり、そして身体一般検査を行うことが可能なようです。この方法をしっかり試してみる必要がありそうです(文献2)。

参考文献 
1: Pozza, M.E., Stell, J.L, Chappuis-Gagnon, A. et al. (2008) Pinch-induced behavioral inhibition('clipnosis') in domestic cats. J. Feline Med. Surg. 10, 82-87.
2: Hot literature. Can "clipnosis" calm cats in the clinic? Veterinary Medicine (2010) February, Veterinary Medicine, pg. 50.
3: OurPet's Co www.ourpets.com

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