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  2010年5月入手情報


ノミ対策をしてひっかき病を予防しましょう!

さて今回は、ノミとネコひっかき病についてのお話です(文献1)
ネコひっかき病(Cat Scratch Disease)は、ネコにひっかかれたり、咬まれたりした後に起こる病気です。バルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)の感染によって起こりますが、人が感染した場合は、数日から2週間ほどしてから、ひっかかれた部分が腫れたり、熱をもったり、痛みなどがあります。

バルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)の感染によるネコひっかき病とその感染を媒介するノミに関しての研究はそれぞれ行われてきました(解説1& 2 を参照)。今回紹介する研究では、ネコでノミからのバルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)感染を、毎月のノミ予防薬を使うことで少なくすることがきるかどうか検討しました。

実験では、まず、18匹のSPFネコを3つのグループに分けました〈解説3を参照)。 実験に使用した部屋は3つに仕切られ、ノミは自由に行き来できるものにしました。まず、一つのグループの血液中に直接バルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)を注射して、実験的に感染症を起しました。そして、そのグループを真ん中の部屋に入れ、その両隣に、ノミ予防薬をつけたグループと何もしていないグループを入れました。そこまで用意をしてから、ノミをバルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)を感染させたグループにつけました。その後、血液検査をして、細菌の感染を確認しました。

さて、結果はバルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)の感染は、バルトネラを感染させていたグループとノミ予防をしていなかったネコのすべてで確認しました。ノミ予防をしていたグループ全員、まったく感染していませんでした。ということで、この研究では、定期的なノミ予防をすることによって、ヒトのバルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)によるネコひっかき病が少なくなる可能性を示唆しました。

今回の実験は、自然な環境で行われたものではなく、人工的に感染実験を行ったものでノミとバルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)との関係を示していない可能性もありますが、ノミ予防の重要性を再考する機会を与えていただきました。

参考文献:
1) Bradurry, C.A. and Lappin, M.R. (2010) Evaluation of topicalapplication of 10% imidacloprid-1% moxidectin to preventBartonell henselae transmission from cat fleas. J.Am.Vet.Med.Accoc.236, 869-873.

解説:
バルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae, B henselae)は、細胞内に寄生する、偏好性(複雑な栄養要求性を持つ)、グラム陰性好気性の桿菌で、いろいろなヒトの病気に関係しています。そして、ネコの病気にも関連していることが分かってきました。普通の免疫力を持った人では、バルトネラ・ヘンセラ菌感染で、ネコひっかき病がよく起こります。また、免疫力が低下した人で、バルトネラ・ヘンセラ菌感染が起こった場合、桿菌にょる血管腫症や紫斑病のような血管の病気がよく起こります。 心内膜炎もバルトネラ・ヘンセラ菌感染によっておこる病気で、この病気はネコでも感染との関係が分かっています。ネコの自然な感染でも実験的な感染でも、発熱、ブドウ膜炎、リンパ節腫脹などの症状が表れます(参考文献1)。

ノミ (Ctenocephalides felis)はバルトネラ・ヘンセラ菌の媒介体で、ネコはノミの自然宿主です。バルトネラ・ヘンセラ菌はノミの体の中で9日間は生き延びることができ、この期間にノミの中で増殖しているようです。ネコは体についているノミの約50%を舌でぺろぺろするグルーミングで落とすことができます。このため、ネコにバルトネラ・ヘンセラ菌が感染する経路は、ノミに刺されること、感染したノミやノミの糞を飲み込むこと、ケンカの傷によることです。バルトネラ・ヘンセラ菌に感染しているネコから採取したノミは、他の感染していないネコに細菌感染を起すことが分かっていますが、ノミがいない環境ではバルトネラ・ヘンセラ菌感染症のネコちゃんから他のネコちゃんへの感染は確認されていません。経口感染については賛否両論ありますが、ノミの排泄物による経皮感染は確認されています(参考文献1)。

SPF (Specific pathogen-free) ある特定の病原体を保有していないことが分かっている状態のことで、今回の研究では、バルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)に感染していないネコのことです。

ノミ予防に関する記事: タカサクラガーヤ動物病院 「人と動物との絆」連絡帳 No.39

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