世界のニュースあれこれ
  2011年9月入手情報


文学で獣医学に貢献したジェームズ・ワイト先生

さて過去のこのシリーズで紹介してきた獣医師の方々とは違い、小説で獣医学へ貢献した先生の紹介です(参考文献1)。

ジェームズ・ワイト先生は、イギリスのヨークシャ地方の田舎の獣医師の生活をペンネーム「ジェームズ・ヘリオット」で“All Creatures Great and Small”を出版しました。その他の3冊の本と共に、ヘリオット・シリーズの本のタイトルは、19世紀のセシル・アレクサンダー(Cecil Frances Alexander)の賛美歌に由来しています。

“All things bright and beautiful,
 All creatures great and small,
 All things wise and wonderful,
 The Lord God made them all.”

ヘリオット・シリーズは、世界中で6,000万冊以上売れ、20以上の言語に翻訳されました。その中でも”All Creatures Great and Small”は、BBC放送のテレビドラマでも有名です(補足1)。ご存知の方も多いと思いますが、日本語に翻訳されているものもあります(補足2)。

ワイト先生の作家としての活動は遅く、50歳になるまで作品を発表していません。処女作”If Only They Could Talk”は出版社によって何回も拒否されました。獣医師のワイト先生は、広告行為を嫌う立場から、本名で出版することはできないと考えました。ちょうど原稿を書いている時に、放送されていたサッカーのゲームですばらしいプレーをしていたのが、ブリストル市のゴールキーパー、ジェームズ・ヘリオットでした。そして、その名前をペンネームにしたということです。

”If Only They Could Talk”とそれに続く第二作”It Shouldn’t Happen to a Vet”も、ほんの数千冊しか売れませんでした。しかし、ニューヨークの出版社が、この二冊を合体し、さらに加筆することにより、”All Creatures Great and Small”が生まれました。これが、大ヒットとなったわけです(参考文献1)

英語圏の小中学生でヘリオット・シリーズを読んで、獣医師になった人は多く、獣医師に人気の作家です。日本語訳も1975年が最初ですから、ヘリオット物語を読んで、現在、獣医師として働いておられる方も多いと思います。世界中でこれほど
まで多くの獣医師が自分の職業を決めるのに影響を受けた本があったでしょうか。すばらしい。私自身の場合も、黒毛ウシと同じ屋根の下で生活した奈義の生活が、少しばかりワイト先生のヨークシャー地方の田舎の生活とオーバーラップします。ワイト先生が大好きです。


参考文献1: JAVMA News (2011) Modest veterinarian, beloved author: Dr. James A.Wight’s experiences in barns and homes reached millions. J.Am.Vet.Med.Associ. 239,32-33.

補足1: このBBCのドラマは、オーストラリアのABCの協力をもとに作製され、シリーズ1−3が1978年から1980年の間、シリーズ4−7が1988年から1990年の間にBBCで放映された人気のTVドラマでした(jamesherriot.org参照)。以前話題に出た、Commonwealth Countries(旧英連邦の集まり)の多くの国でも放映されたかどうか不明ですが、少なくとも以前私が住んでいたニュー・サウス・ウェールズ州アーミデールや首都キャンベラでは、長い間大変人気のドラマで、よく再放送もされていました(1980年代から1990年代にかけて)。気候はまったく違うものの、ドラマの舞台となるイングランドのヨークシャ地方の田舎とオーストラリアののんびりした生活は微妙に似ているところがあります。この辺がオーストラリアでの人気を支えていたのではないでしょうか。

補足2: 「頑張れヘリオット先生(All Creatures Great and Small)」(後に「ヘリオット先生奮戦記」大橋吉之輔訳、「ヘリオット先生の動物家族」中川志郎監訳、「Dr.ヘリオットのおかしな体験」池沢夏樹訳など日本語にも翻訳されています(ウィキペディア参照)

 [人と動物との絆のホームページ]へ戻る


 タカサクラガーヤ動物病院 
 
東京都世田谷区世田谷4−18−7