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  2011年12月入手情報


ゴーシェ病の専門医、ジムラン教授来日

先日、イスラエルからゴーシェ病専門医のアリ・ジムラン教授(Professor Ari Zimran)が来日され、いろいろお話をお伺いすることができました。ゴーシェ病(補足1)といっても、ご存知ない方が多いのではないでしょうか。この病気は、医学の教科書や細胞学、組織学の教科書でも必ず記載されていますが、日本では患者さんが大変少ないまれな病気の一つです。動物にはこれに相当する病気がありません。

ジムラン先生は、イスラエルの首都エルサレムにあるヘブライ大学医学部シャーレ・ゼック医療センターのゴーシェ病専門のクリニックの院長です。このクリニックのゴーシェ病の患者数は、800人以上で世界一といわれています。今回は、幕張で行われた日本・アジア先天性代謝学会での講演があり来日されました。ジムラン先生とは、スクリップス研究所のボイトラー研究室で一緒に過ごしたことがあり、事前に来日されることが分かっていたので15年ぶりにお会いすることができました。午前10時から午後6時まで、幕張から近いディズニーランドをぶらぶらして、ゴーシェ関連のお話をお伺いすることができました。なぜ世界一のゴーシェ病専門クリニックになったか? ゴーシェ病の診断と治療について、ゴーシェ病と他の病気について、ゴーシェ病の第一人者になったいきさつなどなど、話は尽きることなく延々と続きました。ディズニーランドを楽しむというより、ゴーシェ病の話題だけで、あっという間に時間が過ぎました(当初、どのように時間を過ごすか心配していたのですが・・・)。ディズニーランドの蒸気船の上では、乗船前から始まり一周してもまだ、ジムラン先生の新しい仮説の説明が続いていました。お見事です。ジョークもどんどん出てくるので、一日中笑って過ごすことができました。私の方は、まったく専門外の話でしたが、すばらしいゴーシェ病の短期集中講義をしていただきました(事前に論文を読んで復習をしました。参考文献1、2)。ジムラン先生かゴーシェ病の教育用スライドをいただいたので、来年の講義で使用させていただく予定です。

さてイスラエルから来日されたジムラン教授から教えられたことは何か?
1)どんな分野でもどんな小さなことでも世界一になることは大切。
2)何かで世界のトップの人は、とにかくおもしろい。
3)一つのことをこつこつ続けることで世界一が近づく
4)力を抜くことは必要

楽しいひとときを過ごすことができました。

補足1:リソソーム病(ゴーシェ病を含む): 哺乳動物の細胞の中には、細胞小器官と呼ばれる構造物があります。その一つにリソソームと呼ばれる細胞内のゴミ処理を一手に引き受ける場所があり、大きな分子や食作用を受けた微生物、細胞片、細胞、細胞内小器官などの過剰になったものや古くなったものを消化する働きをしています。取り込まれた物質は、いろいろな酵素によって小さい水溶性の最終産物に消化されるため、細胞内をきれいにすることができます(参考文献3)。

リソソームに関連する病気は昔から報告されています。生まれつきリソソーム内の酵素の異常で、大きな分子が可溶性物質に分解できないため、不溶性の中間産物が細胞のリソソームの中に蓄積するので、リソソームが大きくなり、細胞の機能が発揮できなくなります。このような病気でよく知られているのがゴーシェ病です。グルコセレブロシダーゼという酵素の異常で起こり、正常ではリソソーム内には代謝されないグルコシルセラミドという物質が蓄積します。リソソーム内にグルコシルセラミドというゴミがたまるため、いろいろな不都合なことが体の各所で起こります。一遺伝子・一酵素(タンパク質)・一疾患を関係は明確ですが、症状はさまざまで、無症状の人から、脾臓や肝臓が大きくなる病気、骨の病気、神経の病気などです。現在の治療は、遺伝子工学の技術で酵素を大量に作り、精製して、静脈注射によって酵素を補う療法が行われています(参考文献1)。この治療法も今後遺伝子治療に置き換わると思いますが、まだまだ時間がかかりそうです。

参考文献
1)Zimran, A. (2011) How I treat Gaucher disease. Blood 118, 1463-1471.
2)Zimran, A. & Elstein, D. (2010) Lipid storage diseases. In: Lichtman, M.A., Kipps, T.,
   Sligsohn, U., Kaushansky, K.,Prchal, J.T. ed. “Williams Hematology, 8th ed; New York, NY,
   McGraw-Hill, 1065-1071.

3)「組織学」 L.P.ガートナー、J.L.ハイアット著、石村和敬、井上貴央監訳

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