上が新しい記事です
内胸動脈の静脈付のsemiskeletonizationと動脈だけつるつるに採る完全skeletonizaztionを比べてみました。今の所のデータでは意外にも静脈を外しても内胸動脈はほんの一寸しか伸びません。もちろん筋膜付の伝統的な取り方に比べると驚くほど伸びますが。(01.3.18)
針は何を使ってますか?
吻合針の切れ味は患者さんの命運を左右することもあるので良く切れる適当なサイズの物が欲しい。今の所、モノにばらつきが少なくて良いと思うのはプロリンの175-6と言う針の付いた8-0、45cm。糸のコーティングも以前より良くなったのか結紮の時の引っかかりも無く使いやすい。 国産のネスピレン8-0は良い針と切れない針の品質のばらつきがあってもう一つの様に思う。まあ、各人好みとこだわりがある所でしょうが、このプロリンの針はけっこう評判良いようです。(01.3.18)
OPCABで使うシャントチューブ
H12年夏、東京女子医科大学で行われた冠動脈外科学会(参加費がちょっと高かった)では当然OPCABが大きなテーマの一つでした。吻合中のシャントを使う先生が以前より多くなっていて単純に糸でスネアして血流遮断下に行う先生は減っているようでした。 シャントにはintra luminalのものと大腿動脈等から血流を取るものがありますが恐らく手間等の点で前者が主流になりそうに感じました。intra luminalでは普通のCABGと同じく冠動脈切開部分のみ剥離すれば良いのに対し、後者では結局中枢、末梢のスネアが必要になり、周辺の損傷や冠動脈へのダメージを考えると得策では無いと思われます。(00.8.8)
私は胃大網動脈を第二または第三の動脈グラフトとして使いますが、学会や研究会でかつて良く出てきた意見に「日本人には胃ガンが多いから懸念がある」「GEA使用後胃ガンの手術をすることになり難渋した症例を経験した」というものがあります。たまたま一回経験したことを逸話的に大きく取り上げ、あたかもこのような危険が極めて高いかのようにとらえるのはどうかと思います。 実際に胃ガンの問題によってGEAを使用したほうがSVG等を使用した場合より生存曲線が悪化するなら話は別ですが、それよりもメリットの方が多いと考えています。 具体的な対策としてはグラフト温存で手術をしてもらうか、PTCAで対処する、潅流域の広さによっては割り切ってグラフトを犠牲にする等が考えられますが、何とか対応できる問題に過ぎないと考えています。 (00.4.19)
この間某メーカーのフッ化ビニリデンという新しい材質の糸を試供品として使って、えらいめにあいました。 ポリプロピレンと比べて滑りやすいため吻合の時にかなり意識的に締めていっても1周連続縫合を終わってみるとゆるんでいて締め直したり追加縫合したり手間がかかりました。 わたしはいつも吻合の時助手に糸を引っ張らせませんが、このようなスタイルだと糸のゆるみに相当気を付ける必要がありそうです。 術後造影で異常がなかったのでほっとしましたが、当分今まで通りポリプロピレン糸を使うつもりです。(00.3.10)
CABGの何パーセント位が体外循環非使用になっていくと思われますか? 先日あるメーカーさんからのアンケートにあった項目です。30%位と答えました。体外循環非使用CABGについての考え方は、体外循環を出来るだけ避けるべきものと考えてtechnicalに可能ならすべてOPCABとするものから高度動脈硬化など体外循環禁忌例に限定するものまであり、どのようなスタンスを取るかによりこの割合は変わってくるでしょう。前者の考えを採るなら8割はOPCABとなるでしょうし後者なら5%程度でしょう。
まずOPCABは技術的にはどうでしょうか? 吻合操作自体に困難はありませんがそれ以前の操作の段階でまだ問題があると感じています。例えば基本のLADを例にとっても筋層内走行、脂肪に深く埋まっているものが約10%に見られ、このような方に高度動脈硬化のためやむを得ずOPCABで行った時はかなり冠動脈剥離に難渋しました。またOMの筋層内走行も良く見られOPCABではかなり困難で私の感想ではまだなかなかOPCABは普遍性が無いように思います。
一方,体外循環の最悪の合併症である脳梗塞はCABGの約2から3%に生じるとされていますが、脳梗塞リスクの低い若年者の多枝CABGでは体外循環心停止下に行う方がはるかにリーズナブルと思います。
効果も最高で、合併症リスクも最低となる万能の画一的な治療法は一般的には無いのが常識ですから、トータルとしてのリスクが確立論的に最小になるバランスポイントとを個々の患者さん応じて選択していくことになるでしょう。conventionalCABGが最適な人からOPCAB+PTCAが最適な人もあれあれば、もちろんOPCABに好適な場合もあると思います。
ところで現在スタビライザーは保険請求できませんがこれはおかしな事と思います。要はグラフトが冠動脈に綺麗に繋がれば良いわけで、体外循環をその補助手段とするかスタビライザー等を補助手段とするかの違いに過ぎないのですから。最初の質問の答えは意外と今後の保険制度等、経済的条件が左右していくのかもしれません。(00年2月3日)
急性期の血流量だけ考えるとグラフトはできるだけ短く、冠動脈の太い部分に繋ぐ方がよく流れるのが流体力学上も明らかだが遠隔を考えると少々疑問だ。 LADの#6〜#7や右冠動脈の4AV、4PD分岐部等は動脈硬化病変の好発部位で、グラフトは病変好発部位を越えた先に繋いでおく方がそもそもの血管バイパス手術の原則に沿っていると考えている。ASOに対するYグラフト手術の末梢吻合部位として腸骨動脈と大腿動脈の優劣を比べたスタディで、前者は新規病変のため遠隔期症状再発、グラフト閉塞の率が後者よりも高かったとされている。 (00.2.27)
あちらじゃレジデントの手術?
日本人と比べて北米では冠動脈疾患が多く、CABG手術も人口あたりで4倍位あるらしい。 したがって最もありふれた心臓外科手術であり、レジデントでも平気でやっている手術だと聞かされていた。 実際に見学した感想は確かにレジデントも上手くやっている者もいるが、助手として入る指導医がとにかくうまくおだてながら「ここ掘れワンワン」状態でやらせているのが実状と感じた。 手術数の多い施設では一旦システムとして安定して機能し始めると、それに乗っている限り誰でもそこそこ出来るという事の様だ。 日本の外科医は手術数が比較的少ない割によくやっているとも感じた。(00.2.27)
別項でビデオ編集の事を書いておいてこういうのも何だが、編集せずにそのままリアルタイムの手技をプレゼンテーションして見るに耐えるものならそれに越したことはない。 またこれも昔話だが、関東地方で開かれたある全国学会で冠動脈のビデオセッションがあった。 GEAで有名なS先生がGEAの吻合手技を5分間程のビデオでプレゼンテーションされていたが、そのビデオは撮ったままで全く編集がされていなかった。にも関わらずまるでマシーンのようによどみなく一定のリズムで吻合が進行していき、同時にプレゼンされていた他の先生方には失礼だがまるっきりテクニックのレベルが違うと感じた。 自分の手術のビデオを後で見ると、スムーズにできたと感じた場面でも何かしら意味不明の無駄な時間が、それもかなりあるものだ。 S先生のプレゼンは非常に鼻につくものととらえる向きもあったようだが、わたしは先生のオペに対する美意識を強く感じた。(00.2.7)
ITA剥離は今でこそ研修中の先生も何でもない操作のように行っているが10年ちょっと前はそうではなかった。 これは偉い先生が周りからは良く見えない骨の裏側で行う秘技とも言うべき技術であった。 私が心臓外科研修を始めたばかりでASDを2例位やって、まだ内胸動脈にさわったことも無かったころ札幌である全国学会が開かれた。ITAの剥離法はそこで立派なビデオシンポジウムのテーマだった。 今でも思い出すのはある先生が、私はクリップをほとんど使いませんと言いながら電気メスだけでITA(当時はIMAと言うのが主流だったが)を見る間に採るビデオをプレゼンしていて、これでも血は出ませんと胸をはっていらっしゃった。わたしは驚嘆の眼差しでそれを眺めていた。 フロアの先生が「先生のところの電気メスは何か特殊な電メスですか?」といった質問をされたのを覚えている。当時は何かこの操作をオートマチックに楽にこなせる方法は無いかと多くの外科医が考えていたように思うが、他の外科手技と同様そんな方法はもちろん無い。
ITA剥離において意外と成書に強調されていないポイントを上げるとすれば、ITAの枝は必ず肋骨上縁と下縁の部位において分岐し、肋軟骨下や、肋間の真ん中の部分では分岐しないという解剖学を頭に置きながら行う事だろうか。(00.2.3)