天かける復讐者たち(週刊読書人94年11月11日)
グレッグ・ベア『天界の殺戮』


 グレッグ・ベア『天界の殺戮』(岡部宏之訳、早川書房・上下各六六〇円)は、前作『天空の劫火』(一九八七)で、異星人の惑星破壊兵器に地球が滅ぼされてから八年後、生き残った人類から八五名の子供が選抜され、銀河法典にしたがって復讐の旅に出るという続篇である。前作は破滅もの、パニックものといった中身だった。本書は、一転、深宇宙に潜む敵の探索と、非人類との交流、文明と文明との軋轢などをからめた復讐譚となる。ベアの描くユーモラスな組みひも型異星人や、主人公たちの、どこか忠臣蔵を思わせる偏執狂的な目的意識と葛藤が読みどころ。ただ、一つの世界を法の名のもとに破壊してしまうのだから、相当に乱暴な設定ではある。

 半村良『虚空王の秘宝』(徳間書店・上下各一六〇〇円)は、社会からドロップアウトした人々が、地中に埋もれていた巨大宇宙船に乗って地球を脱出、宇宙のさまざまな星の意味を探るという壮大な宇宙ものである。本書はもともと雑誌連載されており、当初は『妖星伝』を意図した作品ではなかったかと思われる。しかし、途中に長期の休載があったため、一五年前に書かれていた上巻部分と、最近の下巻途中以降にはかなりの落差が感じられる。後半では、非常に静的に、異星文明の考察が書かれているのである。そういったSF独特のテーマへの取り組みが、従来の半村SFと異なった印象を与えてくれて興味深い。

 その他では『ヴァーチャル・ガール』(田中一江訳、早川書房・六八〇円)が、完全無欠の人造女性を創造するお話で、『未来のイヴ』以来、中身が歯車とぜんまいからLSIに替わっただけで、えんえん繰り返されてきたテーマである。大人の知性を持ちながら、感性は赤ん坊という女性がいかに成長して行くか。現在のコンピュータ知識をもとにしているものの、(ロボットの)実現性や(物語の)独創性で、残念ながらあまりみるべき点はない。

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