97/4/6

大原まり子・岬兄悟編『SFバカ本』(ジャストシステム)
今回は前作(タワシ編)よりも、(通常SFファンが言うところの)バカSFらしくなっている。作品の質も向上している。ただ、ちょっと気になるのはSFの楽屋落ちネタが目立つ点。同人誌ネタに近いのか。

マージ・ピアシー『時を飛翔する女』(學藝書林)
フェミニズムでも有名なピアシーの長編。この次の作品(続篇)がクラーク賞をとっている。フェミニズムとSFとがよく結び付いていることは、昔からル・グインやラスなどでよく知られている。そのあたりは、例えば小谷真理の著作を見れば分かるはず(『女性状無意識』)。本書では精神病院に入れられた主人公が、精神感応で未来人と接触するという設定で、さまざまなかたちでマイノリティ(メキシカン、インディアン、女性)対自然を浪費する機械文明が描かれる。そういったプロパガンタが、物語の構造から浮き上がってみえない点がよい。

朝松健『肝盗村鬼譚』(角川書店)
出たのは去年。ホラー関係の整理をするために読む(こう書くと義務的に読んでいるようですが、そうでもありません)。既に多くのレビューで指摘されているように、(炎症を起こした脳、頭蓋骨の切除、リハビリという)作者自身の体験が話題となった作品。北海道のとある寒村から、しがない大学教授である主人公に帰郷の要請が送られてくる。主人公は、故郷の寺の跡取りなのだが、住職である父親とは反目していた。その父が危篤なのだという・・・。本書は、作者が病床で見た夢が=幻視体験となって顕れている。それだけに悪夢が人工的ではない。いわゆる伝奇ホラー・クトゥルー風の類型に堕していない。何の結論もないこの破滅的な結末も、(普通なら失敗作と思われるのだが)夢そのものの多重性を暗示した複雑な構造を見せている。

鮎川哲也・芦辺拓編『妖異百物語(第一夜、第二夜)』(出版芸術社)
主に昭和20年代後半を中心とした、ホラー短篇集。ホラーといってもSFネタ(秘境物、マッドサイエンティスト物、パルプ風エログロ物)も多く、原点としてのSFを髣髴とさせる。こうして見ると、日本にもSFマガジン以前のパルプ時代が確実にあったのだ。古色蒼然と感じるか、新鮮と感じるかは人によって異なるだろう。若手には新鮮かもしれない。

97/4/13

今週は娘の入学式などがある。どこでもそうだろうが、学級数は少なく2クラス。1クラスは25人しかない。学校は町立とは思えぬ広大さ。まー我々は、団塊直後の世代なので比較にはならぬ(1クラスが45人で6クラスはありましたね)。

97/4/19

アーシュラ・K・ル=グイン『オールウェイズ・カミングホーム』(平凡社)
本書は80年代の著者を代表する作品である。物語というのは「石が語る」という、少女の半生を描いた中篇があるほかは、2万年後のカリフォルニアの大谷に点在するケシュ人の習俗や民話、特に詩が豊富に収められている。このスタイルから分かるように、本書は民族学のレポート風に構成されている。さて、「石が語る」であるが、これは母系社会であるケシュから、旧来の父系独裁国家コンドルの民の国へと移り住む少女の体験記。といっても、本書を統べるのはフェミニズムではなく、例えば宮崎駿的な(『ナウシカ』と極めて似通った)主張である。自然の征服者たるのか、共生者たるのか。ただし、『世界の果てでダンス』(白水社)のエッセイなどを読むと、本書の主たる部分は、実は物語ではなく、むしろ詩=言葉にあることも分かる。

97/4/20

デジカメを買ったので写して見る。
QV30というアウトレット機種で、25万画素は既に2年前のスペック。今ようやく36万画素が終わって、40万画素以上へと移行しつつある。今年の暮れにかけては、一挙に100万画素から140万画素で10万以下が主流となるはず。でもまあ、これも2万円の処分値ですから。これ以上の絵が必要な場合は、銀塩フィルム、印画紙からスキャナが適当。ネットにphotoCDは必要ありません。(なお、左記画像は256色減色後のアニメーションGIFのため、本来の画質より悪くなっております)。
例のディ・キャンプの『(なんとかかんとか)丁稚』を買おうとするも、
あとがきを見てちょっと躊躇。この書き方では、本書を誉めようが、けなそうが関係ないわけで、読むだけむなしいともいえる。

97/4/23

ナンシー・スプリンガー『炎の天使』(早川書房)
自らの意志で地上に降り、ロックスターとなった天使の物語。ファンタジイでしかありえぬ設定を、リアルなアメリカ社会で描こうとすることの無理については、さすがにスプリンガーほどの作家ではほとんど問題がない。ただ、天を見捨てた反逆の天使なのに、突然現れる「救いの天使」(いわゆる機械仕掛けの神ですね)という物語上の安易さが、どうにも説明がつかず気になる。なぜいるの?、あるいはなぜ助けるの?

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